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  • コラム
  • NPO法人アンリーシュ
  • 2020年6月1日

新型コロナウイルスについて知ろう!新型コロナウイルスの治療薬について 〜正しく知って正しく恐れよう〜

日本では5月25日に全国で緊急事態宣言が解除されたものの、未だ事態の収束が不透明な新型コロナウイルス COVID-19 (以降、新型コロナウイルス)の影響で、多くの方が健康面や経済面で困難に直面しているかと思います。

世界中で新型コロナウイルスに対する薬やワクチンの開発・認可が急がれている中、富士フィルムの傘下会社と富山大学が共同開発したアビガンが世界中で注目されています。アビガンに注目が集まる一方で、新型コロナウイルスに恐怖感を覚えるあまり、大人がBCGワクチンを消費してしまい新生児用のワクチンが不足することが懸念される事態も発生しています。

これは、BCGワクチン投与を行っている日本は諸外国と比較して重傷者数が少ないというニュースが一時的に報道され、BCGワクチンに希望を抱いた方が多く発生した結果でしょう。しかし、BCGワクチンが新型コロナウイルスの重篤化を防ぐ可能性があるというこのニュースは科学的根拠も乏しいために、盲目的に信頼するにはあまりにも危険だと筆者は考えています。

それには、ワクチンが何なのかということを正しく知る必要があります。そこで本記事では、病気に対して処方される抗生物質抗ウイルス薬ワクチン3つの違いを解説し、これらの薬剤の性質を知った後に、どのような行動をすれば良いか考えていきたいと思います。

(ちなみに筆者は以前、キクエストにてPCR検査についての記事を執筆した、アメリカ中西部の大学にて遺伝子研究を行う研究員です。アメリカでも少しずつ状況に希望が見えてきています!)

抗生物質とは何か

ジメジメした場所には所狭しとカビや菌が生えてしまいますね。ひしめき合って一見仲が良さそうに見える菌たちですが、実は自分の生存スペースを確保するために常に他の菌たちと戦っているのです。

たとえば青カビは、ペニシリンを合成・分泌することによって周囲の菌を殺菌し自分のスペースを拡大しています。ペニシリンは細菌が細胞壁を合成できないようにすることで他の菌を殺します。ヒトの細胞は細胞壁を持たないため、ペニシリンを体内に取り込んでも影響はありません。

2009年に放送され、先月再放送された漫画原作の人気テレビドラマ「JIN-」において、江戸時代にタイムスリップした脳外科医である主人公がペニシリンを開発し数々の患者を救ったストーリーに感動した方も多いかと思います。)

このように、抗生物質は菌だけがもつ生物機能を停止することによって殺菌します。

(引用元:AMR臨床リファレンスセンター

ちょっと話が逸れてしまいますが、良い機会なので抗生物質に関して少々書きます。「抗生物質の使用に関しては服用の仕方に注意が必要である」という話です。

読者の皆様も高熱が出て病院に行ったら抗生物質を処方されたことがあると思います。その時に、抗生物質は熱が下がっても必ず飲み切ってくださいと言われ、チェックシートなどと一緒に処方されているはずです。覚えていますでしょうか?

これは個人の判断で中途半端に抗生物質の服用をやめてしまうと、抗生物質の機能を無効化する菌 (薬剤耐性菌)が出現してしまうためなのです。これに対抗するために新たな薬剤の開発と細菌の変異とのイタチごっこが続けられています。新たな薬剤耐性菌を生み出さないためにも、症状が治ったからといって個人の判断で抗生物質の服用をやめないようにしましょう。

抗ウイルス薬とは何か

先ほど、抗生物質は菌の生物機能を停止させて殺菌すると書きました。

しかし、ウイルスは菌がもつ生物機能を持たないため抗生物質が効かず、ウイルスがもつ生物機能を止める薬剤を服用する必要があります。それが抗ウイルス薬です。

インフルエンザのときに処方されるタミフル、そして現在注目されているアビガンは抗ウイルス薬の一種です。専門的に言うと、アビガンはウイルスがもつRNA転写ポリメラーゼという物質の機能を抑制します。

しかしここで注意しなくてはならないことが一つあります。

ウイルスと同じく、ヒトもRNA転写ポリメラーゼを体内に持っているのです。そのため、アビガンを服用するとヒトが本来持つRNA転写ポリメラーゼも停止され、その結果として、副作用が生じてしまう可能性があります。

アビガンは約10日で体内から排出されると言われていますが、その期間に性行為によって妊娠してしまった場合、奇形児が生まれてしまう可能性もあります。

実際にアビガンを処方された芸能人も事前に催奇形性に関する同意書にサインを求められたと話しています。(参考:https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202005060000538.html

今の段階では、アビガンの影響が懸念されるのは未成熟な胎児の段階に対してのみで、子供や大人への影響はないと言われていますが、それにはまだ科学的な立証が必要です。現在アビガンを臨床応用するために、本来は1年以上かかる薬剤の承認を数ヶ月で終わらせるように関係者並びに政府が頑張ってくれています。

しかし、あまりにも承認を急かしすぎると、このような副作用を見逃す可能性もあります。

SNS上などで、アビガンの承認を急げという声をよく見かけます。国民が声をあげることはとても大切ですが、副作用の見逃しがないようにしっかりと検査の時間をとれるよう、見守ることも同じく重要だと思います。

ワクチンとは何か

ここまでで、抗生物質と抗ウイルス薬について書きました。今度はワクチンについて説明していきたいと思います。

ワクチンとは無毒化 (弱毒化)した菌やウイルスのことです。ワクチンをあらかじめ投与することで人体に抗体を作らせ、後に感染した場合にはその抗体を使って迅速に対応できるように体に準備させています。

つまり、ワクチンは事前療法なのです。

もし今病気を罹患している患者にワクチンを投与したとしても、体内の免疫の仕事を無駄に増やすだけの結果となってしまいます。現在、世界中の人々がすでに新型コロナウイルスに罹患している可能性もある中で、罹患患者の特定方法は結果が不明瞭なPCRのみです。そのため、ワクチンが開発されたからといって、今、国民全員にワクチンを投与することは現実的ではないと思います。

ただ、少し時間が経過し、この新型コロナウイルスの最初の波がおさまるまでにはワクチンが開発されているはずです(と希望をもっています・・・)

来年以降の流行は、そのワクチンによる事前療法によって防げるかと思います。それまでは、免疫力を保つために、バランスの良い食事と適度な睡眠、そして屋内でも可能なエクササイズなどをしてウイルスに対抗しましょう。

また、BCGは結核菌に対するワクチンで、特に結核患者が多い日本ではBCGの開発以来常に投与され続けてきました。BCGを投与している地域では新型コロナウイルスが重篤化しないという情報がありますが、BCGは結核菌に対するワクチンのため、新型コロナウイルスへの直接的な影響はありません。

ただBCGを投与することで免疫が強化されることは確かです。この免疫強化によって新型コロナウイルスに対抗出来ている可能性はありますが、この効果に頼るのはとても危険なことだと思います。

何より、新生児に投与するはずのBCGを大人が奪うことによって新生児にBCGを投与出来ず、結核を罹って死亡してしまう可能性を大きく上げる要因になります。体力のある大人は免疫力を保ち、現在開発されている抗ウイルス薬とワクチンの完成を待ちましょう。

まとめ

最後までお読みくださりありがとうございました!内容をまとめます。

  • 抗生物質は菌の生物機能を停止させる。そのため、ヒトとウイルスには効かない
  • 抗ウイルス薬はウイルスの生物活性を停止させるが、ヒトへの副作用がある
  • ワクチンは事前療法であり、現在の状況では多用できない
  • 来年以降にワクチンは活躍する

という様に筆者は考えています。(図にするとこんな感じでしょうか)

例えばインフルエンザの場合は、

. 予防接種 (ワクチン)2. 診察 (抗体検査、PCR)3. 処方 (抗ウイルス薬)

という流れとなります。しかし、前回の記事にも書きましたが 、現在は3の“処方”が出来ない状況です。

PCRの検査を実施して陽性患者を見つけ、自宅で安静に過ごしてもらい、呼吸困難になったら入院して人工呼吸機を使うということしかできません。国民全員に結果が不確実なPCRを行うことは、逆に新たなクラスターと医療崩壊を招く原因ともなりえます。

もちろん楽観視するのは良くありません。しかし、まずは食事、運動、睡眠の質を上げて免疫力を強化し、不特定多数の人間との接触を避けることで新型コロナウイルスに対抗していきましょう。

そうしている間に、私のような多くの生命科学系研究者が抗ウイルス薬とワクチンの開発を行っています。皆で協力してこの世界的な危機に立ち向かいましょう。

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