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SDGsに取り組むU-30の人たち
嬉しいことにSDGs連載について、多方面から好評をいただきました。皆様、ありがとうございます。しかし、中にはこんな感想もありました。「なんとなくSDGsについてはわかった。だけど、どうしても自分事に落とし込めない」
グサッ。率直な感想をありがとうございます。読んだ人が自分事に落とし込むには何が足りないのだろう。「もしかしたら、ヒトの顔が見えてこないからなのかな?」そんな思いから新たな企画が誕生。その名も
「企業内で活躍する若手SDGs担当者を突撃取材!」です。
この企画では、U-30 (30歳以下)の若手会社員でSDGsに取り組んでいる方たちを取材、紹介していきます。
地元への貢献と外国人労働問題に取り組む27歳
第一弾は株式会社タシロで働く27歳 田城功揮さんに密着します。
株式会社タシロは機械加工を得意とするメーカーです。ある機械加工展示会で自社ブースの運営を担当した田城さん。出展申込時に「貴社のSDGsの取り組みについて教えてください」という項目があり、びっくり。環境に配慮した取り組みをしていたが、SDGsと繋げられていなかったと言います。それ以来、田城さんが社内のSDGs担当となり、2020年2月末までに会社のSDGs経営指針を決めることになりました。
SDGsを自社の取組みに落とし込む
大森 今SDGs担当として、どんなことをされてますか?
田城さん 2020年始まって動き始めたばかりで、17のゴールを調べていたところです。ただ、どのゴールも対象が大きすぎる気がしてます。自社の取り組みと関連づけていくのが難しいなあと。
大森 なるほどです。いきなり全部考えだすと難しいので、5つ選んでみましょうか。
田城さん はい。ゴール4、5、7、8、9かな。
大森 承知しました。では、ゴール4から見ていきましょう!
ゴール4:すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
大森 ゴール4に近い取り組み、何か思い浮かびました?
田城さん 社内教育かな。タシロでは自社オリジナル教材を作ったりして、力をいれてますよ。外国人技能実習生には挨拶の仕方から指導しています。外国人からシニアまで様々なバックグラウンドの方がいるから、一人一人にあった教育を心がけています。
大森 とても良い取り組みですね!まさにゴール4の中に含まれるターゲット4.4。[2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。]に沿ってますね。SDGsのアピールポイントになりますね」
少し視点を替えて質問です。一般の方向けに教育機会の提供とかやっていませんか?というのも、過去の記事で取り上げた魚町商店街がゴール4を掲げているんです。商店街のお店ひとつひとつが住民向けに学びの場を作っているんです。」
田城さん あー!それなら、弊社は見える工場というのをやっています。一般の方や小学生向けの工場見学です。ウチは製造業の中でも部品を作ったりするBtoB企業なので、どういうことやっているか知ってもらいにくい。それを知ってもらいたいと思って始めました。
大森 めっちゃSDGsじゃないですか!その工場見学の内容詳しく知りたいです。
田城さん ウチには世界最新のレーザー加工機があるんです。それの実働を見てもらいます。スピード感と迫力がすごいんです。レーザー加工で作った恐竜プレートをお土産でプレゼントしてます。見学の最後には、小学生たちが将来の夢を紙に書いてくれるんです。毎年何人か「将来タシロで働きたい!」と書いてくれるんです。逆にこっちが元気をもらっちゃいますね。
大森 めっちゃ良い話ですね。このストーリーそのものがSDGsって感じがします。
田城さん ありがとうございます。少し明確になりましたよ。ゴール4はここを押し出していける実感が湧いてきましたし、リニューアル予定のチラシ、ホームページにも載せるイメージができましたよ。
大森 あと、さらにゴール4を深掘りするならば、見学から体験にまで落とし込めると良いですよね。
田城さん そういえば、溶接の体験してみたいって言われたことがありました。そっか、体験ですね。実現できるか検討してみます!
ゴール5:ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
田城さん ゴール5に関しては、育休産休を取得しやすい文化を目指しています。女性従業員は3人いて、その内1人は育休取得中です。あとはお手洗いを2個増設しました。
大森 素晴らしい取り組みですね!採用向けパンフレットに載せると良さそうです。ただ、SDGsとして押し出していくにはパンチは弱いかなと感じました。
田城さん 了解です!改善していきます!!
ゴール7:すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネ ルギーへのアクセスを確保する
田城さん ゴール7は自信あるんです。このあいだ社内の電気を全てLEDに替えたんですよ。そしたら月の消費電力が半分になりました。
大森 それはまさにSDGsですね!
田城さん あとは、長年使っていた機械加工機からレーザー加工機に移行したんです。これによるエネルギー削減がすごかった。電力は2割減少。液体酸素は6割も減らすことができたんです。大規模な設備投資なので判断は難しかったけれど、エネルギー視点が導入を後押ししてくれたと思ってます。
大森 おお!すごい。恐らく製造業で設備投資迷っている会社は多いと思います。タシロの好例が広まることで、彼らを後押しできますね。
田城さん はい!こういった大規模設備投資などの取り組みは、やはり評価してもらっています。2去年の神奈川がんばる企業エースに選出してもらえました。
大森 アピールポイントいっぱい持ってるじゃないですか!
ゴール8:すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する
田城さん ゴール8でいうと、従業員の半数11名が外国籍の方なことかな。弊社は必ず同一労働同一賃金をしています。あとは月の残業時間は多い人でも20時間以下。ほとんどの人が月の半分は定時で帰れるくらい生産性が良いですよ。まあこれは最新の自動化された機械たちのおかげでもありますね。
大森 レーザー加工機すごい・・・外国人採用について詳しく聞きたいです。
田城さん 外国人技能実習生9人、特定技能外国人2人がいます。特定技能制度は去年はじまったばかりなんだけど、神奈川県ではじめて中国籍の方を受け入れたのがウチなんです。
大森 おお!またアピールポイント。どんどん出てきますね。
田城さん 代表を務める協同組合FURUSATOでは、外国人技能実習生の監理認可を取得しました。外国人労働問題の改善は以前から取り組みたかったことです。
ゴール9:強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る
田城さん ゴール9はやっぱり設備投資かな。
大森 それこそゴール9で外国人技能実習生について取り上げるのはどうですか?
田城さん なるほど。外国人技能実習制度は、そもそも国際協力の取り組みの一つですもんね!
“外国人技能実習制度とは『我が国で開発され培われた技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、その開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とする制度』と定義されています。 つまり、開発途上国等の人に日本の技術や知識を習得して母国に帰ってから役立ててもらう趣旨の制度です。”(Webサイト:外国人雇用の教科書)
大森 はい!ゴール9では技術開発や設備投資が取り上げられることが多いです。でもそれだけではないと思うんです。株式会社タシロが実施している外国人技能実習生の積極受け入れは、まさにヒトの産業貢献と言えるのではないでしょうか?
田城さん いいね!それ使います。
大森 気づいたらもう3時間たってました!すみません。長々と。
田城さん 自分たちの日々の仕事が社会全体に影響を与えてるんだと実感を持てましたよ。SDGs担当者としても良い指針が作れそうです!
大森 僕も沢山勉強になりました。ありがとうございました!
まとめ
皆さんの中にもSDGs担当者という役職を与えられ、社内のSDGs指針作りに励んでいる方もいるのではないでしょうか。ぜひ参考になれれば嬉しいです。そしてSDGs担当でない方もよりSDGsを身近に欲しいなと思っています。それではまた!