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  • コラム
  • 姫野桂
  • 2020年5月24日

貧困は自己責任?外部の人の介入で抜け出せた

先日、『年収100万円で生きる 格差都市・東京の肉声? (SPA!BOOKS)』を上梓したジャーナリストの吉川ばんびさん。彼女自身、貧困家庭出身であり、貧困生活を体験した吉川さんだから書けた1冊となっています。

そして本の中で吉川さんは、「貧困は自己責任なのか?」と問いかけています。今回は吉川さんに過去、どんな生活を送っていたのか、なぜ人は貧困に陥ってしまうのか、そしてどうすれば「貧困は自己責任」という考えを柔軟化できるのかを聞きました。

貧困な上、機能不全家族で育つ

———吉川さん自身、貧困家庭であり機能不全家族だったとのことですが、具体的にどのような家庭環境だったのでしょうか?

吉川ばんびさん(以下、吉川):私は関西出身なのですが、4歳の頃に阪神淡路大震災が起こり、家がほぼ全壊してしまいました。それで一文無しになってしまい、「貧すれば鈍する」という言葉通り、家庭内がおかしくなっていきました。

父はアルコール依存症で、母は少し精神が危ういし、兄も暴力を振るう。中学生くらいになると兄の体が大きくなってきてコントロールがきかなくなっていきました。母は兄とつかみ合いになり、兄に馬乗りになってベルトで叩く光景も見ました。でも、家庭内で暴力があることは外では言うなと言われていました。

そして中学くらいのとき、うちは他の家庭とは違うことに気付きました。それまでは家庭内で暴力があることが普通だと思っていたんです。また、もともと父方も母方も家族を知らない人だったので、機能不全家族の連鎖が起こってしまったようです。

———吉川さんは大学に進学するのを親に猛反対されたとのことですが、今は大学を出ている方が給与の高い職につけますよね。ご両親はそれを知らなかったのでしょうか?

吉川父は中卒ですし母は高卒です。大学を出ていないと働けない企業も多いですが、親はそれを理解していませんでした。「何のために大学に行くんだ」と言っていたし、親戚にも大学に進学した人がいませんでした。文化的資本がない中で育ったんです。

普通は高校を出たらすぐ働くものだと思い込んでいたので、高校3年生の進路の時期、大学進学を希望していないのが学年で私だけで先生に呼び出されました。そこで、あれっ? みんな大学に行くの? と思い親の反対を押し切って受験勉強を始めました。

大学は就職に有利になるためや、例えば教師になりたい人とか法律家になりたい人とか、お金に余裕がある人が選べる場所だと思っていました。でも、受験勉強を始めたのが遅かったため、学費の安い国公立は5教科あるのであきらめ、私立の大学を受験しました。在学中は奨学金を借り、アルバイト三昧でした。つい先日、奨学金を繰り上げで返し終えたところです。

———それは良かったです。本の中でもありましたが、就活の際は百円均一の襟元が痛くなるワイシャツを着て乗り切ったとあって驚きました。量販店に行けば100円でなくても2900円くらいで質が良く長く使えるワイシャツがあると思うのですが……。

吉川:そうなんです。うちの母が百円均一でばかり買い物をしていたので、そういう発想に至らなかったのだと思います。服もいつも、古着屋の300円ほどのものを着ていました。

母は情報を取りに行けないというか、知っている範囲でしか何かをやりたくない、新しいことに挑戦することにリスクを感じていたようです。能動的に何かを調べないんです。

テレビを家で流しっぱなしの家庭もあると思うのですが、ワイドショーなどで流れている情報は入ってきます。でも、自分でネットで調べようとすると活字がたくさん入ってきてしまい、読めなくなってしまう感じでした。

新しい価値観を植え付けてくれる人と出会えた

———そんな家庭で育った吉川さんがなぜ、貧困から抜け出せたのでしょうか?

吉川:昔交際していたパートナーは比較的裕福な家庭で育った人で、価値観が私と正反対でした。

私が百円均一で買った毛玉取り機を使っていたらびっくりされ、長い目で見たらこっちのほうがいいと、3,000円ほどする毛玉取り機をネットで注文してくれました。私は信じられなかったのですが、使ってみるときれいに毛玉が取れました。それに、百均で買った毛玉取り機は私の使い方が悪かったのか、もともと不良品だったのか、すぐに壊れてしまったんです。

他にも、虫歯を10年以上放置していたら『なぜ自分の体を大事にしないの?』と怒られました。こっちとしては「お金がないから治療に行けないし、貧困家庭で育ってきているので価値観を押し付けないで!」と彼と衝突してしまったのですが、彼のおかげで「自分が生きてきた世界は普通じゃなかったんだ」とわかり、徐々に視野が広がっていきました。

これで私の反発が原因で彼が離れてしまったらそのままの私だったと思うのですが、辛抱強く私に向き合ってくれました。貧困から抜け出すためには外部の人の介入が必要だと思っています。

貧困は個人ではなく社会構造の問題

———貧困問題が叫ばれると「自己責任だ」と言われたり、生活保護のことを「ナマポ」というスラングを使って揶揄する光景もネット上で見受けられます。これらの問題について、私達はどう取り組んでいくべきだと思いますか?

吉川:貧困問題って個人の問題ではなく社会構造的な問題なのに、ネット上ですごい叩く人がいますよね。

私もとある対談記事で私の写真が掲載された際、記事も読んでないであろう人からコメント欄で容姿を叩かれました。そういうものを見ていると、とにかく人を馬鹿にしたかったり、自分より下の人を見下したかったり、同じ環境なのにお前は頑張っていないとか、そういうことを言っていないと自我を保てない人が一定数いるのだと思います。

自己責任論は「お前が悪いだけだよね」と言うだけなのですごく簡単です。

一時期、生活保護の不正受給の問題が報道されましたが、あれって全体の0.45%くらいで本当に一部の人だけなんです。それなのにメディアは生活保護が悪いというイメージを煽って極端な貧困像を作り上げています。

貧困女性を見世物にしているような番組もありますよね。当事者性や想像力が全然足りていないと感じます。

貧困の背景にあるものが何なのかを考えていけば、貧困問題に関する偏見も少なくなっていくのかなと思います。

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