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  • わたほん
  • 2020年3月16日

【SDGs×読書】特殊なお米づくりはご先祖様からのメッセージ

こんにちは、わたほんライターのYurikaです。

日本人の主食であるお米。お米を栽培する稲作は、弥生時代に日本で広まったと言われています。

現代に近づくに連れ、生産方法や農機具、肥料など、その行程は幾度も改良されて来ましたが、数千年に渡りお米が日本人の食を支え、多くの人に愛されてきたことは間違いないでしょう。お米づくりの行程について、社会科でお米づくりの過程を習っただけでよく知らないという方も多いと思います。

今回取り上げたいのは、お米づくりでの中でも特殊なお米づくりです。この特殊なお米作りについて教えてくれるのは、のお米づくりに挑戦する引きこもり青年を描いた小説、生きるぼくら (徳間文庫)です。

『生きるぼくら』のあらすじ

いじめから、ひきこもりとなった二十四歳の麻生人生(あそうじんせい)。
頼りだった母が突然いなくなった。
残されていたのは、年賀状の束。その中に一枚だけ記憶にある名前があった。
「もう一度会えますように。私の命が、あるうちに。」マーサばあちゃんから?
人生は四年ぶりに外へ! 祖母のいる蓼科(たてしな)へ向かうと、予想を覆す状況が待っていた−−−−。人の温もりにふれ、米づくりから、大きく人生が変わっていく。
「徳間書店」HPより

蓼科に着いた人生を待ち受けていたのは、マーサばあちゃんと別れた父親の再婚相手の娘つぼみでした。

つぼみの存在に驚く人生ですが、マーサばあちゃんは軽い認知症を患っていると知り、人生は更に驚きます。悲しいことにマーサばあちゃんは人生のことを忘れてしまっていたのでした。

近所で食堂を営む志乃さんによると、マーサばあちゃんは対人に限った記憶障害で、見当識障害や判断力の低下は見られず普通に生活しているということでした。

マーサばあちゃんは、自分の田んぼと畑を持っていたため、ここ5,6年は近所の人に手伝ってもらいながらも、ほぼ自給自足の生活を送っていたそうです。

自給自足のスローライフを営んでいるマーサばあちゃんですが、一緒に住んでいるはずの二人の孫どころか、近所の人も覚えることが出来ない状態。人生は、孤独感そして大事な田んぼを耕せない寂しさを、マーサばあちゃんから感じ取ります。

マーサばあちゃんの年齢を考えると一緒に過ごせる時間も残り余命わずかだなという思いが頭をよぎり、人生はつぼみと一緒に、特殊なお米づくりに挑戦することを決めます。

特殊なお米づくりとは

マーサばあちゃんが実践していたお米づくり。それは、「田んぼを耕さない、肥料を施さない、農薬を撒かない、そして機械を使わない」というもの。

田んぼは、普通、代かき(しろかき)をして土をとろとろにし、苗を植えやすいようにする。
何千本もの苗を植えるには、まず田んぼを耕さなければ始まらない。
苗を大きく育てるには、肥料を与えることも必要だ。土壌を肥やして苗を植えるのは当然なことだ。
苗を狙ってやってくる害虫を駆除し、雑草を茂らさないためには、最低限の農薬を使う。
広大な稲田を管理し、良質なお米を生産するためには、どれも必要不可欠な作業なのだ。
『生きるぼくら』より引用

マーサばあちゃんのお米づくりは、この必要不可欠と言われる作業を行わないのです。

現代の米作りから見ると特殊に見えますが、マーサばあちゃんが義母から与えられた試練であり、先祖の苦労を知るために実践していた方法なのです。

現代のお米づくりとは

では、マーサばあちゃんのお米づくりが特殊と呼ばれるなら、現代の一般的なお米づくりとはどのような行程で作られるのでしょうか? 

農水省のHPによると、一般的なお米作りは一年を通してこのような流れになっているようです。

米作りは3月から9月にかけて行われ、まず、トラクターを使用して、田んぼを地均しする。

田おこしと代かき選別した籾種(もみだね)を田植機で植え、ビニールハウスの中で苗を育てる
苗つくり田植え機で苗を植える
田植え稲刈りまでの間に出てきた雑草を除去する
雑草取りコンバインを使って稲穂を刈り、実をとる
稲刈りと脱穀脱穀した玄米をカントリーエレベーターの中で行う
乾燥、もみすり、貯蔵の工程を経て、市場へ出荷される。
農林水産省HP

いくつもの工程と時間をかけて、ゆっくりとお米が作られることが分かりますね。

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マーサばあちゃんのお米づくり

マーサばあちゃんのお米づくりは、現代のお米づくりと何が違うのか、マーサばあちゃんのお米づくりの様子を見てみましょう。

マーサばあちゃんのお米づくりは前の年、稲の刈入れが終わったところから始まります。

脱穀後に残った稲わらを田んぼに撒いておくのです。稲わらを田んぼに蒔くことで、枯れていく稲わらは土の養分になります。また、稲わらが土にふたをしている状態になり、土の中で越冬する生き物たちが生き生きと動き、より土壌を良くしてくれるのです。

続いて、3月上旬。苗つくりの前に、燻炭器(くんたんき)で籾殻燻炭(もみがらくんたん)を作ります。これは田んぼに蒔く籾殻と一緒に敷き詰めるものです。いぶした燻炭は熱を持っているため、発芽が促されます。これは蓼科のような寒冷地特有の知恵です。

4月に入ると、1アールごとに田んぼの溝切りを行います。1アールごとに溝切りをするのは、マーサばあちゃんの方法で、田んぼの水はけをより良くするために行います。その後、手作業で田植えを行います。

雨が多くなる6月から7月には、崩れる畦(あぜ)を修復したり、シカよけを作ったりします。そして農薬を使用しないため余計な草が生えるので、3日に一度田んぼの草取りをします。雑草は全て抜くのではなく、稲より強い草だけを引っこ抜きます。弱い草はそのまま枯れさせ、田んぼの養分にするのです。

稲穂になる9月には、鳥よけを周囲に巡らせてかかしを作ります。またイノシシが稲を荒らすため、イノシシ除けとして、村人が寝ずに番を行うのです。

そうして、10月に稲刈りを行い、お米が出来上がります。そして、来る翌年のために稲わらを田んぼに敷き詰めるのです。

命のリサイクルと人々が手を取り合う温かさ

「マーサさんの田んぼは、耕さないし農薬も使わないから、ミミズやカエルやゲンゴロウとか、生き物がたくさん棲息しているの。ちゃーんと食物連鎖が起こって、命のリサイクルがあってね。みんなで手を結び合って生きている感じが、いっそうするのよね。」『生きるぼくら』より引用

マーサばあちゃんの特殊なお米づくりは、現在の米作りの常識を覆すだけあって、作業工程も多く体力や気力が必要になります。その一方で、命が紡がれていく光景や近所の人と一緒に農作業を行う姿に、温かさや優しさが感じられるのではないでしょうか。

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『生きるぼくら』とSDGs

SDGsは日本語に訳すと、「持続可能な開発目標」となります。

今ある科学技術を用いて、より住み心地良い地球にするために、そして限りある海や大地を守りながら、さらに文化を発展させていこうというメッセージを感じ取れます。企業によっては、独自の技術をSDGsに活かしている事例を公表しています。外務省:JAPAN SDGs Action Platform取組事例)

私はSDGsと聞いたとき、真っ先に思い浮かんだ本は『生きるぼくら』でした。

自然に生きる生物たちが食物連鎖を起こす様子は、「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」と「15.陸の豊かさも守ろう」につながり、近所の人たちと行う田植えや、収穫前のイノシシ狩りで農家たちが一緒になって夜を明かす様子は、まさしく「17.パートナーシップで目標を達成しよう」に当てはまると思いました。

また、マーサばあちゃんの特殊なお米づくりをこの本を通して知ったことにより、私たちの先祖が数千年もの長い間続けてきたお米づくりが、より効率的で良質なお米を作るために、知らず知らずのうちに多くの改良を行って来ていたのだということが分かりました。

もしかすると、日本は弥生時代に「9.産業と技術革新の基盤を作ろう」を既に達成していたのかもしれないですね。

まとめ

実は、マーサばあちゃんの特殊なお米づくりは、フィクションではありません。小説の舞台となった蓼科の、とある農家で実際に行われているお米づくりなのです。

その様子は原田マハさんと漫画家みづき水脈さん共著『ラブコメ』に詳しく書かれています。

原田さんやみづきさんも、『生きるぼくら』の人生やつぼみのように、身体を使い、溝切りや田植えを行ったそうです。筋肉痛に悲鳴を上げながらも、作ったお米が実った時の喜びはひとしおだったと言います。

この『生きるぼくら』を読み、特殊なお米づくりを知ることによって、お米づくりには未来目標であるSDGsのヒントが隠れている、そのように思いました。

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