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  • コラム
  • 姫野桂
  • 2020年3月11日

一部の発達障害者を悩ませる感覚過敏とは?配慮と対策について

取材・テキスト
姫野桂姫野桂

感覚過敏とは?

 今まで、生きづらさをメインにしつつも発達障害にまつわるコラムを多く執筆してきました。今回は、発達障害者の一部の人が悩んでいる「感覚過敏」についてご紹介いたします。

感覚過敏には主に以下の5つの種類があります。どれか一つ当てはまる場合もあれば、多岐にわたって複数持ち合わせている人もいます。

  • 視覚過敏
  • 聴覚過敏
  • 嗅覚過敏
  • 味覚・食感過敏
  • 触覚過敏

これは、本来であればその感覚を脳が生活に支障をきたさないようコントロールしているのが、うまくコントロールできない症状です。一部の発達障害の人にはこの感覚過敏の傾向が見られます。

視覚過敏であれば、良い天気の日や家電量販店などの強い光が絶えきれないほど眩しく、目や頭が痛くなったりします。

聴覚過敏は私も傾向があるのですが、小さな音を全部拾ってしまって疲れたり、喫茶店や居酒屋などで相手の話だけでなく周りの声や食器の音などまで聞こえて、誰が何をしゃべっているのかわからなくなることがあります。

嗅覚過敏は柔軟剤や化粧品などのニオイで吐き気を催し苦痛を感じます。仕事の際は化粧がマナーとされている日本で、嗅覚過敏のある女性は化粧品を選ぶのに苦労します。

味覚・食感過敏の人は、独特な食感や舌触りの食べ物が苦手です。これは、ただの好き嫌いの激しいワガママな人や極端な偏食と勘違いされやすいのですが、その人にとって口の中に入れた際の食べ物の感覚が不快なのです。ぬめっとした食感のきのこ類やシャキシャキした感覚の生野菜や果物、チクチク感のある揚げ物、濃い味付けのもの(カレーやファーストフード、濃いお茶)などを受け付けない人が多いようです。

触覚過敏は、何かが体に触れることに異常に敏感です。健常者の中にも、敏感肌で化学繊維の素材の衣類がチクチクして着られない人もいると思います。触覚過敏の人も、チクチクした感覚のセーターや服のタグに不快感を抱きます。また、雨や風に当たることや、突然のボディタッチも苦手なケースがあります。

感覚過敏がつらいときの対策

感覚過敏の人は、健常者よりも多くの情報を脳に仕入れることになるので、ただ普通の生活をしているだけなのに疲れやすいです。そのため、できるだけ情報のシャットダウンをしようと、自分なりに工夫しています。

視覚過敏の人は薄い色の入ったメガネやサングラスをかけたり、大きいつばの帽子を被る、家にいるときは照明を暗くしたりしています。

聴覚過敏には耳栓ノイズキャンセリングイヤフォンイヤーマフが便利です。私はポリエステルの耳栓とノイズキャンセリングイヤフォンを使い分けています。ノイズキャンセリングイヤフォンは不要な音を消して必要な音だけを拾ってくれます。私の場合、エアコンやロボット掃除機の音、電車の中でつけると電車特有の轟音が消えます。ポリエステルの耳栓は、工事現場の鉄と鉄が触れ合うカーンとかキーンといった高音がマシになります(ノイズキャンセリングイヤフォンではなぜか消えませんでした)これらは私にとって、原稿執筆時に欠かせないアイテムとなっています。

臭覚過敏は私も少し傾向があるので、電車内ではマスクをつけることが多いです。できるだけ人の多い場所に行かないようにしている人もいます。

味覚・食感過敏はなかなか周囲の理解を得られず苦しんでいる人もいるかと思います。特に子どもは栄養面でも偏ってしまうので心配ですよね。そんなときはできるだけ食感が分からないよう細かく刻んで調理したり、濃い味付けが苦手な子どもには薄味にしてあげましょう。

実は、93歳の私の祖母も味覚過敏で偏食家です。どろっとした食感のものは全てダメなので、お粥が食べられません。今後施設に入ることを想定すると、施設では誤嚥(ごえん)を防ぐため料理にとろみをつけられることが多いので、そうすると祖母は何も食べられるものがなくなり、悩ましいところです。また祖母は、ペットボトルの緑茶も飲めないため、倍に薄めて飲んでいますし、家でお茶を煎れる際、お茶っ葉はほんの少しです。
食糧不足の戦時下を生き抜いてきた祖母なのに、限られた食べ物の中、当時何を食べていたのか不思議でたまりません……。ちなみにお嬢様家庭で甘く育てられたらしいので、偏食家でも何も言われなかったようです。

触覚過敏の人は、服のタグを切った後、その上からアイロンテープで切り口を閉じたり、化学繊維の服を避けたりすることで苦痛から逃れられます。ただし、制服のある職場や、ストッキングを強要される仕事だと厳しい面があります。体質により、やりたいジャンルの仕事をあきらめねばならないのは悲しいものです。もっと多様性が認められるような社会を目指したいものです。
また、突然のボディタッチが苦手な人には体に触れる前に一声かけたり、むやみやたらにスキンシップを取らない配慮が必要です。

感覚過敏の対策をしている人へ配慮を

駆け足になりましたが、以上が感覚過敏の種類と当事者が取っている対策です。サングラスをかけていても不審者ではありません。耳栓をしているからといって人とコミュニケーションを取りたくないわけではありません。偏食があってもただの好き嫌いではありません。これらのことを知っていれば、「何この変な人……」と思わずに済みますし、当事者も変にコソコソせず堂々としていられます。

また、都会にはいろんな格好の人がいます。女装の人やちょっと変わった過激なファッションの人も見かけますが、誰もジロジロ見ません。忙しい人が多く、良い意味で他人に関心がないのでしょう。その点は、都心で生活している当事者は暮らしやすい面もあるかもしれません。一方、地方だとまだまだ感覚過敏は認知度が低く不審な目で見られることもあります。

この記事によって感覚過敏の認知度が上がることと、当事者への配慮が進むことを願います。

【参考】
LITALICO仕事ナビ
https://snabi.jp/article/236
HugKum
https://hugkum.sho.jp/11677

 

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