読者の皆様こんにちわ。NPO法人アンリーシュ代表の金澤裕香です。
突然ですが「家族との思い出は?」と聞かれると、皆さんどんな事が思い浮かべますか。
私は学生の頃は進路で衝突したり家出したり…でも社会人になって子供を産んでからは、親として想いを語り合えたり助け合えるなど、家族とは切っても切れない縁だと感じています。
私の母は児童養護施設の子供たちを支援する活動に長年携わっています。自分とは少し違った生活環境で育つ子供たちの話を聞くたびに「もっと知らなければ」という想いに駆られます。
この記事では児童養護施設とはどんな場所なのか・私たちがどう関わっていけるのかについて考えていきます。
社会的養護が必要な子供たち
虐待や経済的課題など様々な理由で両親と暮らせない子供達。
そんな子供たちは「社会的養護」と呼ばれる公的責任で保護・擁護を行う仕組みを利用して、生活のサポートが行われます。その社会的養護という枠の中に児童養護施設や里親は位置付けられています。社会的擁護が必要な子供たちは日本に45,000人、そのうち約8割は児童養護施設や乳児院で暮らしています。
児童養護施設ってどんなところ?
社会的擁護が必要な子供達をサポートする場所の一つとして、児童養護施設と呼ばれるものがあります。ここでは主に2歳から18歳までの子供たちが生活をしています。児童養護施設と一言にいっても施設にはさまざまな形があります。
全員が一つの建物のなかで生活を送るスタイルが最も多いですが、定員の少ない施設や一つの建物のなかでも少人数のグループに分かれて生活するなど、より家庭に近いスタイルで生活をする施設が近年増えてきています。児童養護施設は、原則として18歳までしか在籍できませんが、卒業後の進路についてもサポートしたり、自立に必要な知識の提供なども行なっています。
児童養護施設で育つ子どもたちの環境
児童養護施設で育ったと聞くと「可愛そう」などといったイメージがある方もいるかもしれません。しかし詳しく調べたり、実際に関わっている方に話を聞くと違った一面も見えてきます。その一つが施設で育った「経験」が「強み」になるというものです。
例えば、幼少期から様々な生い立ちや年齢の子供たちと関わることで培われるコミュニケーション能力や共感力。
そして18歳の自立に向けて自分で進路を決め、そのために必要な資金を集める力などが挙げられます。これらは貴重な経験となり、その子自身の代え難い強みになっていきます。
以前、退所を控えた児童養護施設の子供達が将来の夢を語るコンテストの映像を見る機会があり、10代の子供たちが進学だけでなくその先の未来を見据えて語る姿に感銘を受けました。施設という複数の大人が介入する場所だからこそ受けられる支援や応援があり、子供たちは逞しく成長していくのだと感じました。
児童養護施設と子供たちが抱える課題
一方でこういった子供たちが快適に生活するためには、よりサポートが必要な面も残っています。
日用品や施設の改修などの資金不足
施設の運営資金は基本的には公費から支出されています。
しかし、「育ち盛りの子どもの食費や洋服代が足りない」「子供の成長のために必要な体験を提供したい(お誕生日や季節の行事など)」「自立後の支援を行いたい」など、公費で賄えきれていない部分がある施設が多いのが現状です。
閉鎖された空間での体罰やいじめ
児童養護施設では児童指導員や保育士・家庭支援専門相談員など多くの職員が子供達を見守っています。しかし、集団生活や様々な生い立ちの中で子供同士のいじめや職員による体罰などが起こるケースがあり社会問題の一つとして取り上げられています。
進学が難しい
施設の子ども達は原則 18 歳で児童養護施設を退所し、自立生活を始めなければいけません。平成 25 年度の厚生労働省の調査では児童養護施設を退所した子どもたちの進学率は 22.6%と一般家庭の子どもたちの進学率である 76.9%を大きく下回っています。
また、無事に奨学金を借りて進学したとしても家賃を含む生活費をアルバイトで賄わければならず、その負担の重さから途中で退学してしまうケースが多くあります。
私たちができるサポート
児童養護施設で生活する子供達は様々な制限やサポート不足を抱えています。施設や子供たちのために私たちができることをまとめました。
寄付・ボランティアで応援する
児童養護施設に暮らす子供達をサポートするため、複数のNPO法人が活動を行なっています。
団体によって施設への資源提供を行なっていたり、卒業後の進学支援を行なっていたりと活動内容は様々です。
ご自身に興味がある分野で寄付やボランティアなどに参加してみてはいかがでしょうか。
児童養護施設の子供たちの社会進出支援を行なっています。
社会的擁護が必要な子供たちに向けて、成長や自立をサポートするための教育支援などを行なっています。
子どもたちへの直接支援と社会への発信を両立させながら、様々なサポートを行なっています。
上記の他にも施設が、直接寄付やボランティアを募っている場合もあります。
里親や養子縁組について知る
社会的養護が必要な子供たちが生活する場所として、児童養護施設の他に里親や養子縁組といったものがあります。
里親とは、虐待や経済的事情などで親と暮らせない子どもを一時的に家庭内で預かる制度です。児童養護施設や乳児院と同じ役割を一般家庭が担っています。
一方養子縁組は、個人同士の合意に基づき親子関係を結ぶもので養親が子の親権者となります。
里親や養子縁組について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。これを機に是非学んでみてください。
児童養護施設で暮らす子供たちについて知ろう
この記事では、児童養護施設の基本的な知識と問題点、私たちにできることを紹介しました。
児童養護施設に入所する理由のトップは両親からの虐待で年々増加傾向にあります。
そして子供たちは無事に保護されて施設に入所できても、18歳で退所を余儀なくされます。18歳という年齢で仕事をし自ら稼いだお金で、住まいや衣服を整え生活することは簡単ではありません。
最後に児童養護施設関連の書籍を2つご紹介いたします。
- 児童養護施設の子どもたち…Amazonで購入する
- 子どもの未来をあきらめない 施設で育った子どもの自立支援…Amazonで購入する
まだまだ彼らのためのサポートは不足しています。私自身もこの記事の執筆をきっかけにできることを考え行動に移していきたいと思います。
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