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  • コラム
  • 姫野桂
  • 2019年12月25日

お金を根こそぎ取られて生活保護に……エセスピリチュアルに騙されないためにできること

取材・テキスト
姫野桂姫野桂

人の心理は日々揺れ動いています。その一瞬のすきを狙って付け込んでくるのがエセ医療やエセスピリチュアル。
前半ではエセ医療を信じてしまった方の体験談をご紹介しましたが、
後編ではエセスピリチュアルに引っかかってしまった方の例と対策をご紹介しようと思います。

基礎講座が10万円×3回 しまいには宝石を売りつけられる

 誰でも一度は恋愛の悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。恋愛に夢中になっているときは周りが見えなくなりがちです。今回お話を聞かせてくれたのは牧野恵実さん(仮名・30代女性)。恋愛に悩んで受けていた恋愛カウンセラーとの食事会で知り合ったのが、ヒーリングができるという自称「不倫専門カウンセラー」でした。

「不倫は人になかなか相談できない悩みなので、不倫の悩みでこのカウンセラーの元へ通っている人が多い印象を受けました」(牧野さん)

 牧野さんに、この自称ヒーリングができるというカウンセラーのブログのURLを教えてもらい拝読したところ、胡散臭いほど豪華な西洋を思わせる部屋で(まるでデヴィ夫人の豪邸のようでした)ワークを行っている写真が掲載されていました。そして、カウンセリングの料金にびっくり。1回120分で6万円近くしました。

 通常、クリニックなどで臨床心理士や国家資格である公認心理師が行うカウンセリングは60分で1万円程度です。保険が効かないので高く感じる方もいるかもしれませんが、このエセカウンセラーと比べると雲泥の差です。

 肝心のヒーリングというと、ヒーラー(ヒーリングを施してくれる人)に手を差し出し、相手も手を差し出してくるというもの。そして「それでは●●(悩みの部分)を抜きますね〜」という言葉がかけられ、深呼吸しておしまい。効果のほどはどうだったのでしょうか。

「途中、ラップ音が聞こえたり、身体に変な感覚が来るのは分かりましたが、ただそれだけです」(牧野さん)

 もしかするとラップ音は何かしらの細工で音が鳴るような仕掛けがあったり、身体への変な感覚というのもプラセボ効果に近いものだったのかもしれません。

 牧野さんはこのヒーリングに2〜3度通いました。しかも、このヒーリングは基礎講座というものを謳っており、これが3回セットで10万円もしたそうです。牧野さんの恋愛の状況は変わらないし、このあたりで彼女はおかしいと感じ始めます。一緒にヒーリングを受けていた友人も効果がなかったそうです。そして、このヒーラーの本来の目的はこれから始まります。ヒーリングは序章に過ぎなかったのです。

「このヒーラーの本職は宝石屋でした。その宝石を買わないかと言われたり、投資の話を持ちかけられてこれは怪しいと思って手を切りました。一緒にヒーリングを受けた人の中には宝石を買わされた人もいました。私はヒーリングを数回だけ受けましたが、途中でバカバカしく感じ始め通うのを辞めました」(牧野さん)

 最初は恋愛という身近な悩みから入り、そこからより高価な宝石を買わせる方向へ誘導させる悪い人、いるんですね……。牧野さんの場合は途中で目が醒め、被害額も最低限で済みました。このエセカウンセラー・ヒーラーは現在も活動中なので、もし人に相談できないような恋愛の悩みのある方、迂闊に高額な恋愛カウンセリングを受けるのはオススメしません……。

「芸能人も通っているエステ」はエセスピ業界の常套句

 続いてごく普通の主婦の三谷桃子さん(仮名・40代女性)。ある日、古くからの知人のM氏から「マルチなアロマとヘッドスパを中心としたエステサロンの経営と技術者育成のビジネスをしてみないか」と話を持ちかけられました。「恥ずかしいことにマルチなアロマには毎月最低1万円以上使い、パワーストーンを買うこともあったので、合計20万くらいつぎ込んだことになります」と、三谷さん。

 この件にはもう一人女性が絡んでいます。M氏の知人だという自称足つぼセラピストのS氏です。彼女は独自で開発したマッサージ法で時おりイベントでマッサージ店を出店したり、パワーストーンを売ったりしていたそうです。このS氏がオーナーとなります。

「S氏はヘッドスパの技術を広めて、仕事がなくて困っているシングルマザーなどへ手に職をつけさせ、生活に困らないようにしたい、と周りに吹聴していました。そしてこのS氏、大のミーハーで、エステサロンを開業した際は『芸能人の●●が来店した』とうれしそうに語っていました。私は芸能人にあまり興味がないので、本当に来店したのかどうか分からないし、そもそもどういうルートで来店したのか謎です」(三谷さん)

 「シングルマザーのために職を作ろう」という活動自体は素晴らしい試みで社会貢献となります。しかし、このサロンを起ち上げるため、三谷さんとM氏は100万円を一括で支払いました。他にも10人ほど分割で払った出資者もいたそうです。

 ところが、このオーナーのS氏、エステサロンの従業員に給与を支払わず、三谷さんたちに出資金を出させるだけ出させて行方をくらませます。そして、知人のM氏や他の出資者たちとも連絡が取れなくなってしまいました。

  その後、M氏から突然「生活が苦しいのでお金を貸してほしい」と連絡が来ます。「今更連絡をしてきた上に金を貸してくれだなんてふざけんな!」と激怒した三谷さんでしたが「古い付き合いだからどうしても」と頼み込まれたため、借用書をきちんと用意し、お金を返済してもらったのを最後にM氏とは縁が切れました。まさに、金の切れ目が縁の切れ目ですね……。

 「エステサロンの出資金はどぶに捨てたと思っています。でも、お金を騙し取られた以上に私たち出資者の気持ちを踏みにじったオーナーS氏には腸が煮えくり返りそうです。のらりくらりと逃亡を続けているため、労基に訴えても厳しく、泣き寝入りするしかありません」(三谷さん)

 起業家というのはときにメディアに取り上げられることもあり、キラキラしたイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、このようなトラブルも起こる可能性があるので、出資する際は「この人を信用して大丈夫なのか? このビジネスは人を傷つけるものではないか?」と一旦立ち止まり、第三者に相談してみると最悪の事態を防げそうです。

意味のわからない「毒親脱出プログラム」に40万

 最近は「毒親」という言葉の認知がだいぶ進みました。どんな家庭にも何かしら小さな問題はありがちです。鈴木梨花さん(仮名・30代女性)は過干渉で暴力的な父親に悩まされていました。もう限界だと思ったときネットで「家族問題 相談」といった単語で検索。60分の電話カウンセリングサービスを8000円で行っている団体を見つけたので受けることに。ちなみに折り返し電話での対応だったので電話代はかからないシステムだったそうです。

 先述したとおり、通常まともな心理カウンセラーが行うカウンセリングは60分で1万円程度。ですからこのカウンセリングは特別高額というわけではありません。ここからさらなる60分の対面面談を1万2000円で受け、「あなたは毒親から脱出するべきだ」と諭されます。

 「その脱出プログラムのトレーングが10回コースで電話とテキスト代込みで25万円もしたんです。トレーニングの内容としては『親に手紙を書いてすぐ脱出』というもので、洗脳に近かったです。手紙を書けずに延長料金が発生したりしました。そして次第に、なぜ手紙を書かなければいけないのか? という疑問と、逃げた後にどうすればいいのかという不安に襲われるようになりました」(鈴木さん)

  自然とこのプログラムのおかしな点に気づいた鈴木さん。気づいたときには既に40万円も支払っていました。結果、このプログラムを辞める決意をしたそうです。

 検索してみたところ、鈴木さんが受けたものと似たような毒親脱出プログラムを行っている団体を見つけました。これで成功して親と絶縁できる方もいるのかもしれませんが、最初のカウンセリング以外は決して安い値段ではありません。他にも手段がないか、信頼できる人に相談したり、毒親からの脱出体験談の本を読んで参考にする方法もあるので、悩んでいる場合、いくつか手段の候補を上げてみるといいのかもしれません。

双極性障害の寛解を目指すはずがエセスピに……

 精神障害を患うと認知能力が低下し、正しい判断ができなくなることがあります。双極性障害のある高野菜々さん(仮名・30代)もそのうちの一人。

「もともとおまじない的なものは好きでした。ある日、書店でおまじないのコーナーを見ていたところ、『レイキーヒーリング』という療法の本を見つけました」(高野さん)

 仕事柄頻繁に書店へ足を運ぶ私ですが、哲学と心理学(精神障害系も含む)、そしてスピリチュアルのジャンルの棚が同じ列や対面になっていることが多く、ちょっとした危機感を抱くことがあります。本来は心理学や精神障害の本を買いに来た人が、スピリチュアルの本が近くにあることから手に取り、エセスピにハマってしまうのではないかと。

「レイキーヒーリングは波動療法の1つなのですが、自分でやるのは難しいため、自称霊感持ちの友人が10万かけて伝授してもらったというのを、本来なら1回5万円かかるところを、特別に無料で受けさせてもらいました。『温かいでしょ?』と声をかけられましたが、正直何も感じませんでした」(高野さん)

 その後も高野さんは双極性障害を治すために、うつ病の人がTwitterでつぶやいていたことから知った「エドガー・ケイシー療法」や、検索をしていて見つけた「ヴァイブレーションメディスン」に夢中になります。しかし、エドガー・ケイシー療法はソフトあんかで身体を温める療法なので「冬場は気持ちが良いな」と感じる程度。

 彼女が最もハマったのがヴァイブレーションメディスンでした。これはフラワーエッセンスを1日4回ほど舌の下に垂らして飲む療法です。「なんとなく良くなっている気がする?」程度のプラセボ効果の域でしたが、このエッセンスにかなりのお金を投じました。

 しかし、次第に貯金が底を尽きてしまいました。これらのエセ療法に総額200万近く使ったと言います。

「一つ一つの療法が高いという意識はありましたが、現代医学ではなかなか治らない病気がこれで治るはず、もっとお金を使えば治るはずという思いがありました。でも、良くなるどころか2度の入院、仕事もクビになり、貯金も底をつきました。根拠のない療法に頼ったことを後悔しています」(高野さん)

 双極性障害で体の調子も良くないので働くこともできず、ついには生活保護を受給することになった高野さん。余計調子が悪くなったことでようやくエセ療法から目が醒め、現在は心療内科に通院して治療中とのことです。まだドクターストップで働けてはいないそうですが、調子は安定はしてきているとのことです。

まるでコント⁉ 白装束をまとった母親に除霊される

 また、同じく精神障害であるパニック障害持ちの矢田由紀さん(仮名・40代女性)も毒親からのエセ療法によって苦しめられた一人。パニック障害の要因は当時、3人の子供をワンオペ育児していたストレスにあったそうですが、とある宗教にのめり込んだ母親曰く、パニック障害の原因は悪いものが取り憑いているからだと、ある日矢田さんの元へ乗り込んできます。その姿が衝撃的だったそうです。

「白装束をまとい、頭に葉っぱのようなものを巻いた母が現れて、発作で調子の悪い私を部屋に寝かせて、葉っぱで私の身体をバシバシ叩き、除霊を始めたんです。まるでコントかと思いましたが、母は真剣でした」(矢田さん)

 もちろん、そんな除霊は意味もなくパニック障害はよくならなかったそうです。現在そんな母親と接触を断っているとのことです。ここまで彼女たちを追い詰めてしまったエセスピリチュアルとエセ療法。根絶を願うばかりです。

2回にわたってエセ医学・エセスピリチュアルについてご紹介してきました。健康やお金を搾取していくエセ医学・エセスピは孤独な人に漬け込む傾向があります。大勢で群れるより一人でいるほうが楽だという方もいるとは思いますが、いざというときに頼れる人とのつながりを作っておきたいものです。そうでないと失ってしまうものが大きすぎます。

 できるだけ自分が納得できる方法で困難を乗り越えたり、時には休んだり人に甘えたりして、生きづらさからの開放につなげていきたいものです。

 

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