パラリンアートホームページはこちらをクリックください。

既存のパラリンアートHPはこちら

column

  • コラム
  • 姫野桂
  • 2019年11月22日

心が弱っているとつけ込まれやすい……?エセ医学にハマって後悔した当事者の声

取材・テキスト
姫野桂姫野桂

精神障害で認知能力が落ちているとエセ医学に引っかかりやすい?

 先日、医学的根拠のない「血液クレンジング」を多くの芸能人やインフルエンサーが受けて勧めるような記事や、SNSの発信を行っていたことが話題となりました。血液クレンジングとは、血液を採取した後医療用オゾンを混ぜ、再び体内に戻すという民間療法です。一旦取り出したどす黒く見える血液にオゾンを加えることで鮮やかな赤色に見えるので、インスタ映えの一種とも取れる投稿をしている著名人もいました。

 しかし、正常に腎臓が働いている人ならば腎臓が血液を綺麗にしてくれる役目を担っているので、受ける意味はありません。血液クレンジングはアンチエイジングや冷え性、がん予防、認知症、脳梗塞や心疾患など、様々な体の不調に効能があると、実施しているクリニックのホームページで紹介されていますが、まともな医師たちはこの血液クレンジングはエセ医学だと指摘しています。

 なぜ人はこのようなエセ医学に引っかかってしまうのでしょうか。国家資格でもある公認心理士の資格を持つ知人とも話したのですが、特にうつ病や精神障害などで心が弱っていると認知能力が落ち、エセ医学やエセスピリチュアルに騙される傾向にありそうです

 そこで今回、医学的根拠のないエセ医学やエセスピリチュアルにハマって後悔した方々に、ハマってしまったきっかけや効果、当時の心情について聞いてみました。

健康的な体を目指すはずが、逆に体を壊し教祖から性被害を受ける子どもも……

 まずは、自然派菜食の民間療法にハマった横山紀彦さん(仮名・30代男性)。幼い頃から胃腸が弱く、疲れやすい体質だったそうです。大人になって出会ったのが、断食、少食、菜食を行う民間療法。教祖の教えの通り、食事は1日1〜2食で玄米かサラダ。肉を摂らない生活をし、風邪をひいたときは「動物のように食べないで寝ていれば治る」を実践していたそうです。そのときはたまたま、自己回復力で治ったため、薬がなくても治ることがうれしく、体調を崩したら断食を繰り返していたといいます。

 「教祖は菜食・断食することで波動が高まり精神も安定し、カルマが解消する、とも言っていました。また教祖は大変聡明な方で、音楽や芸術に関しても詳しい記事を書いていたので、ますます教祖の虜になってしまいました。しかしこれは私の勉強不足で、今思うとその記事の大半は他人の受け売りでした」(横山さん)
断食を繰り返していた横山さんですが、だんだんと風邪の治りが悪くなります。最終的に常に鼻の奥から出血するようになり、これは死ぬのではないかと恐怖に怯えていたそうです。ここでようやく病院に行きますが、原因は不明で、おそらく栄養失調
とのこと。そこからは栄養バランスを考えた普通の食生活を送るようになったら治ったそうです。

 また、この話には恐ろしい続きがあります。その教祖は少年を対象にした同性愛者でもあったそう、横山さんの仲間の息子が被害にあいました。手口は疲弊した母親を洗脳し、合宿と称して子どもを監禁。そこで性的虐待を行っていました。被害を受けた子どもが脱走したことで事件は明るみになり、教祖は一ヶ月留置所に入れられ、結果的に示談となりました。この事件でようやく横山さんの教祖への洗脳は溶けたそうです。

 自然派は入りやすい民間療法で、それが体に合う人もいるかもしれません。しかし、性被害まで襲ってくるとなると大問題です。被害にあった少年の心が1日でも早く癒えることを願うばかりです。

反ワクチンを信じ「水疱瘡パーティー」をやりたいと言われる

 続いても自然派思考の人が陥りやすい、子どもに予防接種を受けさせない反ワクチンを信じてしまった相原玲子さん(仮名・50代女性)の例です。これは10年前の話とのことですが、当時は結婚したばかりで誰も知っている人のいない土地に来て、頼る人のいない中での育児だったそうです。相原さんはその前、流産を2度経験していて「また突然死んでしまうのではないか」と常に不安の中を生きていました。

「当時はまだ今のようにSNSも発達していなかったので情報がなく、たまたまインターネットの掲示板で見かけた『ワクチンや薬は子どもの体に入れてはいけない』という言葉が強く心に刺さり、危機感を煽られてしまったんです」(相原さん)

 予防接種を受けたことによる副反応が起こったというニュースを聞いたことがある方もいるでしょう。しかし、五本木クリニック院長の桑満おさむ著『”意識高い系がハマるニセ医学が危ない!』(扶桑社)では、「接種を受けるかどうか考えているという人は『ワクチンと副反応に因果関係は認められていない』ということを冷静に受け止め、実際にその病気になった場合のリスクと比較をすることが大切です」とあります。そう考えるとワクチンを受けない方のデメリットのほうが遥かに大きいのではないでしょうか。
相原さんは当時、反ワクチンの考えを信仰する人が集まる掲示板によく書き込みをしていたそうです。そこで「子どもが水痘にかかった」と書き込むと「羨ましい! うちの子にもうつしてほしい」「水疱瘡パーティーをやりたい」という返信であふれたとのことです。

 そんな相原さんが反ワクチンという誤った考えから目覚めたのは、信頼できるママ友ができ、頼れる仲間ができたことと、SNSの発展で多くの情報に触れられるようになったことだと言います。「目が醒めてからは自費でワクチンを接種させました。無料で受けられる年齢はとうに過ぎていたので……。今となっては医療虐待に近いことをしてしまったと申し訳なく思っています」(相原さん)

 相談できる人や反ワクチン以外の情報を仕入れやすくなったことで考えを改めることができた相原さん。孤独だと心が弱って誤った選択をしてしまう可能性があります。孤独は最大の病と言えそうです。

 自然派というと、無農薬野菜や無添加の食品を思い浮かべる人も多いでしょう。ですから、自然派が一概にダメとは言い切れませんが、健康のために取り入れたはずが逆に健康被害を招いてしまったら元も子もありません。できるだけ多くの人の意見を聞いて、情報を集め「それだけ」にこだわりすぎないようにしたいものです。また、うますぎる話にはすぐ飛びつかず「本当にそうなのかな?」と一度自分で調べてみると客観的に物事を捉えられ、生きづらさの開放へつながるのではないでしょうか。

 今回取材させてもらったお二人共、精神障害ではありませんが、心身が衰弱している状態では正常な判断ができないことも多いはずです。さて、後半では怪しいエセスピリチュアルにハマってしまった方のエピソードをご紹介していく予定ですので、次回もよろしくお願いいたします。

この記事をいいねと思ったら!

    72+
    いいね!

Related Post

What's New

公式SNS