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  • コラム
  • 姫野桂
  • 2019年10月18日

一長一短? 地方と都会の生きづらさを比べてみた

取材・テキスト
姫野桂姫野桂

私は地方出身者。人口107万2,220人(令和元年8月1日現在・宮崎県ホームページより)の宮崎県で生まれ育ちました。県庁所在地のある宮崎市は39万8841人(平成30年度調べ・宮崎市ホームページより)。一方、現在私が住んで14年目になる東京都は13,885,101人もの人が住んでいます(2019年4月26日現在・東京都ホームページより)。
 
地方での生活と都心での生活、両方経験している筆者。今回のテーマは「地方と都会の生きづらさ」についてです。どちらもメリット/デメリットがあります。

なんといっても地方は家賃が安い!

まずは地方のメリットから説明したいと思います。

これが一番のメリットだと思うのですが、都内と比べると家賃が激安です。月3万5千円も出せば、綺麗なオートロック付きの1DKの部屋に住めます。逆に、今私が都内で住んでいる部屋の家賃を宮崎市と比べると、ファミリー向け物件の価格です。

また、ここからは地方全体のメリットというよりも宮崎の良いところ紹介になってしまうのですが、畜産が盛んなのでとにかく肉(地鶏・宮崎牛)がおいしいです。しかも安い! それに、海がとても綺麗です。サーフィンが趣味の芸能人もお忍びで宮崎にやってくるほど、宮崎の波はハワイよりも最高とのことです。そして、温かい気候のため冬はコートがいりません。老後をのんびり過ごしたい方には良い土地かもしれません。

地方は職が少ない

続いてデメリットです。

私は地方にしては珍しく、かなりリベラルな家庭で育ちました。地元は農家か、父親が会社員で母親は専業主婦という家庭が多い中、うちは共働きで家事のほとんどを在宅仕事で家にいる父親が行っていました。そして、常々「一度は宮崎から出て生活しなさい」と言われていました。また、小さいうちから海外旅行に連れて行かれ、いろんな文化があることを教え込まれていた気がします。

そのせいか、周りの閉鎖的で保守的な価値観を持った家庭の友達と話が合わないことも多々ありました。私が知っていることは当然、周りのみんなも知っていると思い込んでいたのですが、どうやらそうではないことに結構早い時期に気づきました。うちは漫画とゲームが禁止だったものの、活字の本ならいくらでも買ってくれました。読書量が他の同級生とは桁違いだったので、語彙力や知識の量に差が出てしまっていたようでした。

私の周りでは東京の大学に進学した後、Uターン就職をした友達が何人かいました。しかし、地元に戻った後、すぐに就職できた子は誰もいませんでした。地元では偏差値の高い私立大学を出ている人より、商業高校を出て簿記の資格を持っていたり、医療事務や看護師など、手に職系の資格を持っている人材の方がよほど重宝されるのです。Uターンした同級生たちはまず、地元で職業訓練校に通って何らかの資格を取り、その後就職をしていました。ですので、地元に戻ってきてから就職できるまで1年ほどかかっていました。

そして、給与の額もかなりの差があります。東京で会社員経験のある友人は当時手取り18万ほどもらっていたそうなのですが、地元で医療事務として就職した際の手取りは13万円だったそうです。病院によっても給与に違いがあるそうですが、市内だと平均的な給与額だそうです。

数年前、母(公務員・養護教諭)の部下が正式採用されて晴れて臨時職員から公務員になれた給料日、「こんなにもらえるなんて夢みたい!」と喜んでいた額は手取り19万円でした。

しかし、先程も述べた通り、家賃が安いので住む分には困りません。ただ、先日増税もしましたし、全国一律で変わらない料金のものも多いので贅沢はできません。

地方ならではの偏見と情報不足

ラストは、私が最も身近に感じたデメリットです。

私の祖母は生前、精神障害を発症しました。地方は精神疾患に関する偏見が強く、心療内科や精神科に通うことに抵抗を示す人が少なくありません。また、精神疾患に詳しい医師も少ない傾向にあります。

以前、地方に住む発達障害当事者を取材した際、発達障害を診てくれる病院を探すのに一苦労したとのことでした。他にも、わざわざ東北から夜行バスで都内の病院まで通院している当事者もいました。それほど、発達障害や精神疾患を抱える当事者にとって、地方は偏見と情報不足、医師不足により生きづらいと言えそうです。

そして、地方で発達障害傾向を持つ子どもは不登校に陥りがちです。都心には放課後等デイサービスや発達障害の子どもを支援してくれるサービスが多くありますが、地方では限られています。そして、何より偏見と知識不足により、親や教師が子どもの生きづらさの理解に欠けているケースもあります。

今振り返ると、あの同級生は発達障害の傾向や認知機能に問題があったのだろうなと思う子たちは、引きこもりになってしまったり、非行に走ったりしていました。発達障害=非行と安易に結びつけたくないのですが、宮口幸治著『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)には、発達障害や軽度知的障害により非行に走ってしまった子どもたちの例が詳しく記されています。

上京したばかりの頃、夕方だけでなく真っ昼間に高校生たちが街をうろついているのがとても不思議でした。というのも、九州の高校生は朝課外といって0次限授業が朝7:20から行われ、放課後も受験生はセンター試験の対策があり、学校に12時間以上拘束されています。これは九州特有の文化だったのだと最近、この方のツイートで知りました。

 

 

私の母校では土日もセンター試験対策が行われ、月に1度休みがあればいい方でした。しかし、だからといって勉強時間が学力に比例しているわけではないという悲しい現実があります……。今は特にビジネス面において、効率化が叫ばれていますが、地方ではまだ根性論が根強いのかもしれません。こんなに学校に拘束されていては勉強が嫌いになる生徒もいますし、発達障害傾向のある子どもはさらに生きづらくなって不登校の原因につながります。

ところが、都会にはそんなふうにドロップアウトした子どもへ向けたフリースクールや、単位制の学校が数多くあります。私が上京時に驚いたことの一つに、学習の仕方の多様性を認めた高校があることが挙げられます。都会にいれば、少し道を踏み外したとしても、更生のチャンスが身近なところにあるのだと思い知らされました。

都会は人が多い分、メリットもデメリットもある

ここまで、地方のデメリットや生きづらさについて長々と語ってきましたが、都会は都会で生きづらさがあります。まずはメリットから。

ちょっとくらい奇抜なファッションをしていても、誰からも白い目で見られません。これは長い間親からファッションに関して抑圧を受けていた私にとって、大変うれしい面です。人が多い分、埋もれてしまって目立たないのです。今も年齢なんて気にせず金髪で過ごしていますが、地方に行くと、きっとこの髪色をジロジロ見られることでしょう。

そして、娯楽や刺激がいくらでもあります。ライブハウスに行けば何かしらアーティストが毎晩ライブを演っていますし、著名人のイベントも多く開催されています。博物館や美術館も充実していますし、有名ブランドの服や、地方の書店には入荷されていない本など、東京にいれば手に入らないものはないほど、モノにあふれています。

私は東京生活を非常に楽しんでいますが、これは経済的に困らない程度の収入があることと、理解のある友達がいることが大きいと思っています。

冒頭で地元と東京の人口について触れましたが、東京はとにかく人が多いです。特に朝夕のラッシュ時の駅や電車は地獄です。ストレスを抱えた人が多いのか、女性にわざとぶつかってくる迷惑行為を行う男性もいます(私は金髪にしたら迷惑行為が減りました。彼らは見た目がいかつい女性は狙いません。このあたりの男性の心理は精神保健福祉士の斉藤章佳著の『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)に詳しく書いてあります)

そして、一番ショッキングなのは、道端や駅で誰か倒れている人がいてもほとんどの人が素通りしていくことです。そのような光景を何度も見かけたことがあります。

以前、渋谷駅の階段で倒れている男性がいました。一瞬みんな彼に目をやりますが、声をかける人はいません。そのとき私は急いでいるわけではなかったので、声をかけようか迷った挙げ句、駅員さんに知らせに行き、その後は駅員さんに託すことにしました。もし、彼が薬物摂取などで倒れている場合、攻撃される可能性があると恐れたからです。このような保身の意味もあり、助けたくても助けられない人もいるのかもしれませんが、地方だったら人が倒れていたら大騒ぎです。すぐに救急車が到着するでしょう。

実際、私の実家の前にある田んぼにバイクが突っ込んで自損してしまったとき、すぐにうちの親は通報して救急車が来ました。幸い、田んぼの泥がクッション代わりとなり大怪我は免れたようでした。そして後日、そのバイク事故を起こした男性は菓子折りを持ってうちにお礼にやってきました。

他にも都心にはこんなに人がいるのに精神的な孤独に悩む人も多いです。最近は、男性の孤独死の多さが週刊誌やネットの記事などで取り上げられますが、これは人とあまり交流をしていないことから発見が遅れたケースがほとんどです。こんなにも人口が多いのに、人に見つけてもらえるのが遅れてしまうのです。孤独死を防ぐためには、日頃から人との関わりを持っておくことが重要ですが、人口の多い都会で人との関わりが少ないというのはなんだか悲しいですね。

 

単に「生きづらさ」と言っても地方と都心とではその種類が異なります。都会で生まれ育った人が田舎暮らしに憧れて移住するケースもあります。あなたは都会と地方、どちらが生きやすいと思いますか? 

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