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  • コラム
  • 姫野桂
  • 2019年9月4日

女性は快適な期間が10日ほどしかない? 性教育の怠慢が生んだ生きづらさ

取材・テキスト
姫野桂姫野桂

タブー視され続けてきた生理

 なんだか今日は肌の調子が良い! そう思ってウキウキしながらスキンケアをしていたら、ちょうど女性ホルモンの一種である卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が増える卵胞期であることを、生理管理アプリ、『ルナルナ』が教えてくれました。女性には、生理→卵胞期→排卵→黄体期という周期があり、生理中はエストロゲンが減り、生理前は黄体ホルモン(プロゲステロン)が増加します。

 健康な女性なら誰しも月に1度生理がやってきます。生理痛に悩む方がいるのは男性でもご存知でしょう。個人差はありますが、この生理のせいで仕事やプライベートの旅行などに支障をきたす人もいます。生理は長い間タブー視されてきました。どんなに生理痛がつらくでも、少し昔の女性は「生理なんてありません」というすまし顔で過ごしていたのです。

  また、宗教的にも血や女性を「穢れ」として扱う地域があります。私は母から「生理中の女性は神社の鳥居をくぐってはいけない」と教わり、生理中に参拝する際は鳥居の横を通り抜けていました。そして「生理中であることをわざわざ他人に知らせるな」とも教わりました。だから、小学生のとき、ナプキンを変えるためにトイレに行く際、ポーチを持っていく=生理とバレるのが嫌で、ナプキンを入れられるポケット付きのショーツを履いていました。

 そして、当時から生理痛、特に腰痛がひどく、腰をトントンと叩いていたら、クラスの男子から「ババアかよ」とからかわれ、生理痛だと言い返せなかったことも悔しい思い出として残っています。

 昨年ヒットしたインド映画『パッドマン』は、清潔で使いやすいナプキンの開発に奮闘する男性の物語です。その地域では、生理中の女性を家の離れの小屋で1週間隔離して過ごさせる風習のある地域で、清潔なナプキンもありませんでした。愛する妻が生理で苦しんでいる。どうにかできないか試行錯誤してナプキンを作ろうとしますが、主人公の男性は妻の両親や親戚から偏見の目で見られて家を追い出され、妻からも「そんな恥ずかしいことはやめてくれ」と言われながらも快適なナプキン作りに精を出すのです。

生理があるのは非処女と思っている男性がいる!?

 さて、男性や、中には女性自身でも生理の仕組みがよくわかっていないという方もいるかもしれません。おそらく皆さん、性教育で教わったとは思うのですが、ここでもう一度おさらいしてみましょう。

 女性には生まれたときから卵子の素となる原始卵胞を蓄えています。生理が始まると成熟卵胞となり、毎月卵子が飛び出していきます。これが排卵です。排卵後は黄体ホルモン(プロゲステロン)が働き子宮内膜を厚くして、妊娠に適した環境を作ります。小学生の頃の性教育ではこの子宮内膜のことを「赤ちゃんのベッド」と習った方もいると思います。

 ただ、毎月生理が来る年齢に達して思ったことは、「赤ちゃんのベッド」だなんて生易しい表現はやめろ、妊娠を希望しない人にとってこれはただの排泄物だ、です。

 ここで受精しなかった場合、子宮内膜が血液と共に3日〜1週間ほどかけて剥がれ落ちます。この際、子宮内膜を排泄しやすくするよう子宮が収縮します。このときの痛みが生理痛です。痛みは個人差があり、全く痛くないという人もいれば、嘔吐するほどの苦痛に襲われる人もいます。

 以前、某アイドルが部屋で動画配信をした際、誤って生理用ナプキンを写してしまったことがありました。それに対して一部の男性ファンたちが「処女なのに生理があるのか!」とバッシングをしていた光景にドン引きしました。処女信仰が気持ち悪いのはもちろん、処女と生理は全くもって関係ありません。どうやら、セックスを経験したことのある女性にのみ生理が起こると勘違いしている男性がいるようです。

 これは、完全に日本の性教育の怠慢が引き起こしている悲しい現状です。また、災害時に被災地で生理用ナプキンが配布された際、一人1つしか配布されなかったという話も聞いたことがあります。多くの女性が2〜3日目が一番経血の量が多く、1〜2時間に1度はナプキンを交換しないと漏れる可能性があるため、1つで足りるわけがありません。私の場合はたいてい、1週間の生理で生理用ナプキン(20個程度入)を2パック使い切ります。

  さらには性欲と生理をイコールとして考えている男性がいることも、性教育の失敗と言えるでしょう。つい最近、コンビニからエロ本が撤退しました。このエロ本がなくなる動きが出てきたとき、「生理用品は置いてあるんだからエロ本も置いていないとおかしい」と主張する男性がいてめまいがしました。いやいや、生理用品は衛生用品です。日用品です。生理は性欲によって引き起こされているものではありません。

 また、スピリチュアル好きな女性を中心に「経血コントロール」なるものが流行った時期もありました。膣を締める訓練をし、トイレの際にダバッと経血を押し出すという方法です。これができるという人もいますが、ほとんどの人はできませんし、一般的に経血はコントロールできるものではありません。名前のとおり、生理現象なのですから。尿や大便はある程度我慢できますが、生理は例えるなら汗です。汗を我慢することってできませんよね? それと同じです。

 ホルモンのサイクルで生きづらい女性

 そして厄介なのが、エストロゲンやプロゲステロンといったホルモンのサイクルの影響で、一ヶ月のうちに快適な期間が10日間ほどしかないことです。生理前症候群(PMS)は、生理前に体や精神に不調が起こる症状です。イライラしたり、憂鬱な気分になったり、頭痛や腹痛、便秘、肌荒れ、食欲が増す、肩こり、胸が張る、などといった悩みが挙げられます。生理前はプロゲステロンという妊娠に適した体にするためのホルモンの分泌が増えるために、このような不調が起こってしまいます。私も生理前は肌があれ、胸が張って少し触れただけでも激痛が走ります。

 女性が快適に過ごせる期間が、生理後のほんのわずかな日数しかないのは、どう考えても女性の体の設計ミスとしか思えませんが、女性はこれらを受け入れて生きていかねばならないのです……。

 生理中や生理前で体調や気分が優れないのに仕事や人間関係のストレスを抱え込むと、さらに負担が重くなります。そして、ちょっと情緒不安定になったりすると「生理かよ、めんどくせぇ」と言い放つ男性すらいます。

 しかし、最近は実業家のハヤカワ五味さんがタブー視されてきた生理のイメージを変えようと、可愛らしい生理用品のパッケージの開発に取り組んでらっしゃいます。長年生理に悩んできた私としては、この取り組みを応援しています。

 個人的なことですが、先日あまりにも生理痛がひどいので婦人科で診てもらったところ、初期の子宮内膜症の診断が降りました。子宮内膜症とは本来なら子宮の内側だけにできるはずの子宮内膜が、卵巣や骨盤内など、子宮の内側以外にできてしまう病気です。子宮の内側以外にできてしまった内膜は排泄されないので、生理のたびに炎症を起こしてしまいます。

  子宮内膜症は現代の女性に増加傾向にあると主治医に言われました。というのも、昔の女性は出産経験が何度もある人が多く、妊娠中は生理がないため、生涯の生理の回数自体が少なかったのです。しかし、現代は栄養状態の関係で初潮を迎える年齢が昔より早まったことや、晩婚化や少子化、子どもを持たない選択をするカップルも増えたため、女性の生涯の生理回数が増えているというのです。

 そうなると、子宮内膜が厚くなりやすく、生理痛が増す原因になります。重度の子宮内膜症は手術が必要ですが、多くの場合ホルモン療法(低用量ピル)での治療が行われます。子宮内膜症でなくても、生理痛がひどいと訴えると「月経困難症」という診断がくだされます。その場合も低用量ピルを処方されることが多いです。ピルでホルモンを調整すると、子宮内膜が薄くなって経血の量も減り、生理痛やPMSなどの悩みが改善へ向かいます。ただし、喫煙する方は足に血栓ができるリスクがあるので禁煙をオススメします。喫煙していなくても、足に違和感を感じたらすぐに病院に連絡するよう、ピルを服用している人はクリニックで必ず伝達されますし、定期的に血液検査が行われます。

 子宮内膜症や月経困難症の治療目的のピルは保険適用です。本来7000円ほどしますが、私の場合保険が聞いて2000円ほどです。ピルにも種類があり、避妊目的のピルは保険適用外で2500円〜3000円ほどです。

 ピルに関しても、「ピルを飲んでいる女=中出しOKのヤリマン」と捉える男性がいます。ピルを飲んでいる間は排卵が止まるため、確かに避妊効果はあります。しかし重要な課題は、避妊効果はあっても性感染症予防にはならないことです。また、ピルの飲み忘れも避妊効果がなくなります。ですので、セーフティセックスはピル+コンドームだと考えるべきです。性感染症に関しては、コンドームを付けていても防げない病気もあります(特に梅毒)。

  先進国でありながら性感染症が増加傾向にある日本。先日は、援助交際で妊娠してしまった少女が新生児を遺棄し、バッシングされる悲しい事件も起こりました。聖母マリアでない限り、妊娠は男性がいないと成り立ちません。なぜ少女は援助交際をしなければならなかったのか、買った男性の責任はどこへいったのか……。

  もう少し、生理を始めとする性の問題に関して前向きに取り組んでいける社会になってほしいものです。「今日、生理でちょっとしんどいからこの仕事、手伝ってもらってもいい?」と男女関係なく言える日が訪れることを願います。

参考

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