私は女性です。可愛いものや美しいものが好きで、恋愛対象は男性。ちょこっとサブカル趣味はあるけれど、絵に描いたようなノーマルな女性です。
でもこれって、「女子なら●●が好き」という刷り込みで自分ができあがっている気もします。保育園や小学1年生の頃は『セーラームーン』のアニメを他の女の子たちと一緒に観ていたし、誰かからのプレゼントはサンリオの小物が多かった覚えがあります。
一方で男の子たちは『ドラゴンボール』を観ていて、教室では「戦いごっこ」と称した軽い取っ組み合いが行われていました。そして、ピンチになるとみんな「バリア」を使うんです。懐かしいですね。
男性は子どもの頃から競争社会を生きている
さて、今回のテーマは男性の発達障害ならではの生きづらさです。先ほどちらっと小さい頃の思い出を振り返りましたが、男性は子どもの頃から競争社会にいます。「戦いごっこ」なんてのがそれの始まりです。
そして、小学校ではスポーツが得意な男の子が人気で、中高生になると面白い男の子やイケメンがモテる。社会に出ると仕事ができる(=収入が多い)男性がモテます。いわゆる、闘いに勝ち抜いてきた男性が恋愛市場では優位な立場になるのです。ただ、これはあくまで傾向であって、収入面を気にしない女性だっていることを覚えておいてください。
発達障害傾向のある男性は、適材適所に配置されていないと仕事がうまくいきません。先日取材したADHDの当事者は、営業は向いているのに事務作業がどうしてもできず、部署異動があって事務担当になってしまった矢先、心が折れてしまっていました。
向いていない仕事に就くと社内での評価が落ち、昇給も難しいです。そうすると、恋愛市場では不利となり、「どうせ自分なんか仕事ができなくてモテない」と卑屈になってしまいがちです。そんな男性と一緒にいても女性はつまらないので、さらに非モテ道を歩んでしまうことになります。
「男は仕事ができないといけない」という刷り込みに苦しんでいる男性は、わりと多いのではないでしょうか。また、男性は人に弱みを見せることを恥じる傾向にあります。女性は女子会などで愚痴の言い合いをすることで発散している部分がありますが、男性は人に弱みを見せる=競争社会からの離脱となり、負けを認めたことになってしまうのです。
「できないことは仕方ない」と開き直れない理由
以前、発達障害に関するとある記事を出した際、「『できないことは仕方ないじゃん』で済ませてもいいのでは?」という方の意見を載せました。
その記事に対し、ADHDの既婚男性当事者はこう語っていました。
「僕は努力をして運良く結婚できたけれど、仕方ないで済まされると自分の努力を否定された気分になる。発達障害男性の中で結婚できる人はそう多くないから、そこを『できないことは仕方ない』で切り捨ててほしくない」と。
できないことがあって、それを血の滲むような努力で乗り越えた方もいます。しかし、誰しもが頑張れるわけではありません。行き過ぎた根性論は心を蝕みます。だから、「できないことはできないと割り切って、制度や人に頼り楽に生きたほうがいい」という意見を持っている人もいます。
事実、私自身も今はそうやって生きています。 しかし、多くの男性はプライドが高いです。先日、失敗したなと思ったのは、ある定型発達の男性と食事に行った時のことでした。誘ったのはこちらでしたし、相手は少し遠いところから来ていて交通費もかかっていたので、私が全額支払おうと財布からお札を出しました。ところがそこを慌てて彼が遮り、全額支払ったのです。私よりも相手が年上だったこともありますが、デート代は男性が持つべきという少し保守的な価値観を彼が持っていたのだと思います。 彼と同年代の男性にこの出来事を話すと「そこは男性を立てて払わせてあげないといけない。どうしても払いたい場合は店を出た後、こっそり千円札を渡すのがいい」と言われてしまいました。
ところが、同い年の男性やそれよりもっと若いカップルの間では割り勘が多い印象を受けます。割り勘カップルの女性に、なぜ割り勘にしているのかを聞くと「相手に借りを作りたくない」「奢ってもらえるほど相手を楽しませている自信がない」といった理由が挙げられました。
社会全体が右傾化している一方で、リベラルな考えを持つ若者、またはリベラルの皮を被っている若者が増えているのかもしれません。(パパ活の風潮を見ていると、自分の使える武器は使い、奢ってほしい若い女性もいるので)
著書に『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)、『万引依存症』(イースト・プレス)のある精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳先生は社会人になってすぐの頃、先輩から「お前はこのままのペースで働いていると潰れる。1日3回、人に助けを求める訓練をしなさい」と言われたそうです。最初の頃は、人に頼ることがとても難しかったと語っていました。私なんか、わからないことやできないことはすぐ人に聞いてしまいますが(もちろんその前に自分でも調べます)、男性はそれがなかなか厳しいようです。
このように、発達障害とジェンダーはつながっている部分があります。私は今まで、女性の生きづらさにはよく目を向けてきました。しかし、改めて男性ならではの生きづらさを考えると、彼らにもしんどい部分があるのだなと考えさせられているところです。
具体的に「清潔感のある男性」とは?
話が少しそれてしまいました。発達障害傾向のある男性が非モテで悩む理由は仕事以外にあと2つあります。1つは、不注意によって身だしなみに無頓着であるケースです。女性に好きなタイプを訊いた際「清潔感のある人」という答えは鉄板です。第一印象は重要です。でも、「清潔感」って具体的に何⁉ という疑問を持つ方もいるでしょう。以下、私の独断ですが、清潔感の定義です。
- 毎日お風呂に入っている
- 口臭や体臭、汗のニオイに気を使っている(自分のニオイは気づきづらいので、口臭チェッカーなどを使ってみるのもアリ)
- 服が臭くない(生乾きのニオイがしない)
- 服をきちんと着こなしている(Tシャツが裏表だったり、ヨレヨレだったりしない)
- 最低でも2ヶ月に1度は散髪に通っている
- 無精ヒゲを生やしていない(ヒゲが似合うダンディな方もいますが、ごく一部です)
- 鼻毛や耳毛が出ていない
- 姿勢が良く、おどおどしていない
どうでしょうか。一言で表すと「営業職の男性の風貌」が分かりやすいかもしれません。細かくて面倒だと思った方もいるかもしれませんが、最低限上記に気をつけていれば清潔感のある男性という印象を抱かれます。
「男性らしさ」へのこだわりを捨てよう
また、もう一点の非モテ要因、これは自覚がない方が多いと思うのですが、ASD特性が強くて自分の興味のある事柄に関してのみ一方的に話し過ぎてしまって女性が困惑したり、「今この女性を落とさないと!」という衝動性によって、気に入った女性にグイグイ距離感をつめてしまって女性がドン引きしてしまうケースです。
断れない性格の女性や押しに弱い女性はグイグイ系の男性に折れてしまうこともありますが、女性のほうも「本当は嫌なのにこの人と過ごさないといけない……」と思って疲弊したり、場合によってはセクハラにあたってトラブルに繋がることも考えられます。
発達障害の特性のある男性の恋愛、様々な問題点が浮き彫りになっていると実感しています。ただ、発達障害傾向のある男性も、そうではない男性も「男性らしくなければいけない」というプライドを捨てれば、自然と心を開いてくれる女性が現れるのではないでしょうか。