人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な医療的ケア児。
我が家もたくさんの医療機器に囲まれて、日々生活をしています。もちろん外出する際も医療機器と一緒です。
しかし、医療機器の中には3kgを超える重さのものがあったり、突然道端でアラームがなり医療処置が必要だったりと、中々気軽にお出かけできない現状があります。
今回は、外出用の医療機器の紹介と、外出・宿泊の際に気をつけている事や大変だと感じることについてです。
外出用の医療機器紹介「在宅酸素」
医療的ケア児はどんな機械を持って外出するのでしょうか。
医療機器の中には、自宅用とは別に外出用のタイプが用意されているものもあります。
その一つが「在宅酸素」です。
在宅酸素とは、家庭で行う酸素吸入療法。医療ドラマでも、よく口にマスクを当てて酸素を補給している様子が再現されています。心臓の病気があったり、呼吸が浅くなってしまう子供は自宅で機械を使いながら足りない酸素を補っています。
一番手前の青い機械が、自宅に常備している在宅酸素の機械です。電源コードとバッテリーで動くので、持ち時間も長く安心して使えます。
ただ、持ち運びはできないので、外出する時は「携帯用酸素ボンベ」で代用します。
これが携帯用のサイズボンベです。写真のものは一番小さいボンベですが、酸素の使用状況に応じて、サイズを選ぶことができます。一番小さいものでも47cmで2kgくらいのサイズと重さになるので持ち運びも工夫が必要です。我が家はリュックに入れて背負って移動することが多いです。
医療的ケア児のお出かけ
障がいがある娘は、バギーと呼ばれる障害児用の車椅子に乗ってお出かけします。
バギーは子供の体調に合わせて背もたれがリクライニングできたり、移動中本人の体に伝わる衝撃が少ないなどのメリットがあります。
医療機器は主にバギーの積み台に乗せています。
乗せているのは、「サチュレーションモニター」と呼ばれる娘の呼吸状態を24時間測って数値化してくれるものや、「吸引器」と呼ばれる喉につまった分泌物を吸い出してくれる機械です。荷台に乗せきらないものはリュックやマザーバックなどに入れて持ち運びます。
外出は荷物がとても多く重たい事に加えて、娘の医療行為のために頻回に立ち止まらなければなりません。
電車での移動もエレベーターがなかったり、乗り換えができないところもあるため、新しい場所に行く前は必ず下見を行い、大人の移動に+1時間くらいの余裕を持って出発します。
また、道端や電車内でアラームが鳴ったり医療行為が必要になることも多く、道ゆく人に不思議そうな視線を投げかけられることもあります。一人での外出は大変なので、どうしても徒歩圏内かタクシー移動が多くなりがちです。
ちょっと荷物を持ってもらうなどのお手伝いが頼めたり、公共の交通機関の整備が進んで医療機器を持ってのお出かけがもっとスムーズになればいいなと感じています。
医療的ケア児の宿泊
外出の苦労も多いですが、医療的ケアがあると、旅行に行くのも様々な準備が必要です。
我が家の場合旅行の1ヶ月くらい前から普通の旅行の準備に加えて、例えば以下のような手続きを行います。
- 滞在先・宿泊施設(帰省先、ホテル等)に医療機器を事前に設置してもらう
在宅酸素など持ち運べない機械は、業者の方にお願いして事前に宿泊施設に設置してもらいます。
宿泊先の方は医療機器の扱いに慣れていない事がほとんどなので、なんども電話や書面でやり取りをして、対応や機器の保管をお願いしています。 - 乗車する交通機関に事前に事情を説明して、多目的室などの予約をする
公共機関は医療機器の持ち込み一つとっても、細かい制限がたくさんあり、一つ一つにとても時間がかかってしまいます。
例えば酸素ボンベの場合、JR、その他電車、バス、タクシーなどすべて基本的には持ち込めるボンベは2本までと決まっており、サイズにも制限があります。飛行機の場合は、医療機器の種類やバッテリーなどの持ち込みもメーカ名などを申請して事前に許可が必要です。バギーに乗ったままの乗車になるので、ユニバーサルルームが空いているか、電源の確保なども一つ一つ確認していきます。
医療的ケアがある子供の宿泊は、手間がかかることや苦労することもたくさんあります。
でも、やっぱり家族での旅行はすごく貴重な思い出です。旅行先では移動が難しい娘に無理がないように、できるだけ部屋食・部屋風呂がついている旅館を選ぶようにしています。旅行に行ったからといって、観光したりレジャーを楽しむ時間がほとんどありません。
でも普段は、シャワーやベビーバスで入浴を済ませている娘が、大きなお風呂にリラックスして浸かっている様子を見ると、旅行に来てよかったなと心から嬉しい気持ちになります。
もっと気軽にお出かけができる社会に
普段、我が家をよく知る人たちに守れている環境から一歩外に出ることで、普段関わらないような人たちに、娘の状況を伝えて、協力してもらう事が必須になってきます。
タクシーに乗るときも、
「これは娘の栄養剤が入っています。車内にぶら下げてもいいですか?」
と説明したり、時には道ゆく人に声をかけて荷物を持ってもらう事もあります。
皆さん、最初は不思議そうな顔をしますが、すぐに笑顔になって手伝ってくれる方がほとんどです。(ありがたいです)
医療的ケアがもっと一般的になって、もっと当たり前に手を貸し合う社会になることで外出の一歩先の旅行ももっと気軽に行けるようになってほしいと願っています。