全国に18,000人いると言われている医療的ケア児。少しずつではありますがその存在が知られるようになってきました。
しかしどういった社会問題があるのかについてはあまり多くの方には知られていません。
そこで連載第二回目のテーマは、医療的ケア児を取り巻く社会課題をお伝えしていきます。
本記事が医療的ケア児の課題実態を知るための参考記事になればと思います。
病院から自宅(地域)での生活に移行する時の課題
医療的ケア児の8割は出産後NICUを体験し、長期の治療・入院を経て自宅に戻っていきます。生まれてから病院で数か月、長い場合は数年間過ごしてから自宅に戻る場合もあります。
長い病院生活のあとに自宅に戻る際、病院の医療関係者は、退院後に必要な福祉制度やサービス資源、子育てに関する情報を十分に伝えることができません。医療とは直接関係がないためです。
そのため、医療的ケア児を育てる家族は、情報不足と不安を抱えたまま自宅に戻り、必要な福祉用具とその使い方、使える公的な福祉サービス、療育、入浴のさせ方など、日常的なことすべてを一から模索していきます。
また、特に退院時は想定外のトラブルが起きやすい上、周囲に同じような境遇の家族がいない・外出が難しいことなどから、気持ち的に追い詰められてしまう家族が少なくありません。
このように、「情報不足」と「仲間不足」が今なお社会課題として残っています。
保育園や預け先を見つける事が困難
多くの場合、医療的ケア児は普通の保育園には通えません。医療的ケアは、看護師や訓練を受けたヘルパーが行う必要があり、保育施設では、医療ケアが可能な看護師の配置や、設備の充実が進んでいないためです。
また、障がい児が通う児童発達施設においても、医療的ケア児は断られるケースがほとんどです。
そのため、両親(特に母親)が仕事を辞め、子どもにつきっきりにならざるを得ないというケースが非常に多くなっています。
こういった就園に関する問題を、行政やNPOが議論し改善していこうとする動きも少しずつ増えてきましたが、まだまだ十分ではないのが現状です。
医療的ケアの介護負担が家族に重くのしかかる
医療的ケアは家族、および医療従事者や訓練を受けたヘルパーしか行う事ができず、日常のケアは家族(特に母親)が一身に背負っています。
介護をする家族は、医療的ケアは24時間体制行う必要があるため、慢性的な睡眠不足や疲労感に苛まれます。
栃木県の2018年の調査によると、医療的ケア児を介護する家族の34%が5時間未満の睡眠であることが判明しています。
また子供との外出が困難な場合、ケアしている母親も外出する事が困難であったり、子供と離れる時間が取れないなどの問題に直面します。
このように医療的ケア児を介護する両親や家族の負担は非常に大きく、その家族だけでは抱えきれない場合もあります。
児童の介護により、仕事を諦め、自分のやりたいことを諦め、睡眠不足に陥る両親や家族を、地域ぐるみで支援できる体制が必要です。
「その家族らしい人生を」
我が子に医療的ケアが必要になると、その家族の人生は大きく変化します。その変化に戸惑ってしまい、不安や苦しみを感じる事も多いでしょう。
しかし、医療的ケアが必要な児童たちも、健常な児童たちと何ら変わらず、お友達と遊んだり、お出かけしたりする事が大好きです。
医療的ケアがあるから外出がしにくい、介護で家族に負担が重くのしかかる。そんな現状を当事者とその家族だけでなく、地域ぐるみで支え合う。
そして、「医療ケアが必要であってもその家族らしい人生の選択ができる」社会に変わっていく必要があります。