初めまして!NPO法人アンリーシュ代表の金澤裕香と申します。本日から、知らない世界を知るメディアである「キクエスト」にて医療的ケア児について連載していきます。
いきなりですが、私は5歳の医療的ケア児を育てています(「医療的ケア児とはなにか?」は後述します)。娘は首もすわらず目も見えず、たくさんの医療機器に助けられながらベビーベッドの上で生活しています。
娘が生まれてから3年間の付き添い入院と2年間の在宅看護の経験から、医療的ケア児を育てるときのお役立ち情報をたくさんの人とシェアし、医療的ケア児を取り巻く課題を解決したいという想いから、2019年1月にアンリーシュ という活動をスタートしました。
アンリーシュは、医療的ケアをはじめ、障害や難病を抱える児童、家族、支援者を対象として「お役立ち情報」を発信をするWebメディアやYouTubeの運営を行っています。
まだその存在が多くの人に知られていない「医療的ケア児」。
一般的にイメージされる「障害児」とは少し違う子ども達であるゆえ、医療や保育そして教育の面で様々な社会課題が存在します。
問題を抱えながらも、毎日を力強く明るく生きる医療的ケア児達のことをこの連載を通して伝えていきます。
医療的ケア児ってなに?
そもそも「医療的ケア児」という言葉をご存知でしょうか。おそらく初耳の方が多くいらっしゃると思います。
この写真は、娘が3歳の頃の七五三の時の写真です。娘の鼻から青いチューブが出ています。
娘は口からご飯を食べる事ができないため、鼻のチューブを通して栄養を補給しています。
一昔前は、このような行為は「医療行為」とされ病院で看護師さんやお医者さんが行う事が普通でした。
でも今は「チューブから栄養を入れる」といった事を、自宅で家族や本人が、医療免許がなくても出来るようになってきました。
医療的ケアとは、病院で看護師さんが行うような処置を自宅で本人や家族が行う事を指します。
そして日常の生活の中で、この「医療的ケア」が必要な子供達は、総称して「医療的ケア児」と呼ばれています。
よく医療的ケア児という病名ですか?と聞かれますが、病名ではなく「医療的ケアが必要な子供」の総称です。病名は別にあり希少性の難病など多岐にわたります。
医療的ケア児が年々増え続ける背景
日本の医療は日々進化しています。
特に、生まれて1年未満の赤ちゃんの死亡率の低さは日本が世界一。それゆえ日本は「世界一赤ちゃんを救う国」とも呼ばれています。
2018年8月には、体重わずか268gで生まれた赤ちゃんが大きな話題になりました。(今も順調に成長しているようです。)
また、今までだったら流産や死産になっていた命も救う事が出来るようになりました。
こうして産まれた子供たちの多くは出産後、NICU(新生児集中治療室)に運ばれます。
そこで、ミルクを飲む力が弱い子供は、「経管栄養」という胃や腸に直接栄養を入れる方法で補ったり、呼吸が上手にできない子は「人工呼吸器」を使いながら成長していきます。
このように「経管栄養」や「人工呼吸器」など医療的ケアを必要とする児童=医療的ケア児は、過去10年間で約2倍に増え今日本に18,000人以上います。
そして今後も医療の発展とともに年間1,000人のペースで増加していくと言われています。
医療機器を使いながら、毎日を生きている子供達
医療的ケアが必要な子供の中には、重度の障がいがある寝たきりの子供から、身体も知的も全く問題のない子まで様々です。
また、病名や医療的ケアが必要になった背景も一人一人違います。
絶対数が少なく、病院にいる期間が長かったり、で外出が難しいという事も理由から、触れ合う機会は少ないかもしれません。
しかし、確実に皆さんの住んでいる都道府県にも医療的ケアが必要な子供達は生活しています。
下記は都道府県別の医療的ケア児者の数(推計値)です。
この連載を通して医療的ケア児の存在を皆さんが知って、「一緒に何ができるかな?」と考えるきっかけになれば嬉しいです。
次回は、医療的ケア児を取り巻く社会課題について触れていきます。