パラリンアートホームページはこちらをクリックください。

既存のパラリンアートHPはこちら

column

  • コラム
  • 姫野桂
  • 2019年5月30日

発達障害を疑って医療機関を受診するまで

取材・テキスト
姫野桂姫野桂

「私、発達障害かもしれません」

こんなメッセージが時おり寄せられることがあります。私は、医師やカウンセラーではないので、正直そのような相談をされても戸惑います。発達障害の特性は人それぞれですし、綿密な検査を受けないと確定診断にまで至りません。そこで、今回は発達障害を疑って医療機関を受診するまでの流れについて説明していこうかなと思います。

受診するかどうか

 私が取材してきた当事者の中では「おそらく発達障害だろうけど、一度も医療機関を受診したことがない」という方もいました。理由は「特性はあるけど困ってない」「金銭的な余裕がない」「確定診断が出てしまうと転職の際に不利になりそう」といったものでした。

 特性はあっても困っていない方は、「ちょっと変わり者で面白い子」というプラスの評価で幼少時代を過ごしたため自己肯定感が下がらず、問題行動(ここで言う問題行動とは、対人関係のトラブルや何らかの依存症など)に走らなかったのだと推測されます。また、その方は自分の特性をよく理解した上で、自分に合った職業を選んでいました。

 「金銭的な余裕がないため」と答えた方。医療機関にもよりますが、心理検査を受けると2万円近くかかります。経済的に余裕のない方は検査へのハードルが高い傾向あります。ただ、私の場合は当初、不眠の悩みで心療内科を受信して「ついでに発達障害の心理検査も受けたい」と言ったところ、保険がきいて数千円で済みました。

 そして「転職の際に不利になりそう」という方。こう感じている人がいる事自体、まだまだ偏見の目で見られている背景がありますね。また、診断が出てしまうと一部の生命保険に入れなくなる可能性もあります。ただこれは、発達障害の診断が出ていても入れる生命保険を選べば間違いないでしょう。

なぜ、受診したいのか

 このように、理由があって受診しない方もいます。まずは、「なぜ受診したいのか」を考えてみましょう。おそらく、「発達障害なのかただの努力不足なのかを確認したい」という方が大方でしょう。発達障害の二次障害としてうつ病や双極性障害などを発症している方はその原因がわかってスッキリするかもしれません。

 さらに頭を悩ませるのが、医療機関選びです。医師によって判断がまちまちなので、1軒目の病院で発達障害でないと言われても納得できず、病院を3軒渡り歩いて、ようやく発達障害だと診断されたという人もいました。

 心療内科・精神科は「精神科ガチャ」と言われるほど、自分に合う医師とそうでない医師が分かれる科です。私はネット上の口コミで評判の良い病院を探して受診したら、見事当たりでした。当事者会に行くと、良い医療機関とそうでない医療機関の情報を仕入れられるので、そのような場で相談してみるのもいいと思います。

診断をもらった場合、どうしたいのか

 さて、受診をして「あなたは発達障害です」「発達障害の傾向があります」という診断をもらったとします。その後、あなたは具体的にどうしたいのでしょうか。障害者手帳を取得して障害者雇用で働きたいのか、クローズ(発達障害であることを隠して一般枠で就労すること)で働きたいのか。プライベートで何か変えるべきことはあるのか。

 確定診断は、就労においてもプライベートにおいても、「自分は発達障害だからこんなことが苦手」という自分の説明書にはなります。でも、それ以上でもそれ以下でもないものだと個人的には思っています。大事なのは、自分にはこのような特性があるのだと冷静に受け入れ、困っていることへの対策をしていくことです。受け入れるまでに時間がかかる人もいます。でも、自分のできること、やりたいこと、できないことなどを紙に書き出すと可視化され、ずいぶんスッキリと客観視できるようになります。

 発達障害傾向のある方は睡眠リズムが乱れている場合も多いので、生活リズム表をつけることを主治医に勧められ、私は毎日つけています。そうすると、睡眠の質が悪い日、体調が悪い日、気分が落ち込んでいる日のサイクルが見えてくるので「今日はダメな日だから頑張りすぎないようにしよう」と、心と体をセーブできます。

 少々長くなってしまいましたが、発達障害を疑って受診に至るまで、また至った後まで葛藤があると思います。受診をしてもしなくても、選択肢が広いので「自分で考えて決めること」が重要になってきそうです。

姫野桂

この記事をいいねと思ったら!

    139+
    いいね!

Related Post

What's New

公式SNS