数年前よりも発達障害の認知が上がりました。しかし、認知が上がったが故「こういう人が発達障害でしょ?」といったステレオタイプな偏見が広まりつつあるのもまた事実です。
カミングアウトしたところで、当事者にとって、さらに偏見の目で見られるのではないかという不安もありそうです。そこで、この連載第二回目のテーマは、発達障害のカミングアウトについてです。
カミングアウトは必要なのか
カミングアウトするかしないかは自身の困り具合や環境によって異なります。そもそもカミングアウトは必要なのでしょうか?
私自身は心理検査の結果が出た数日後、仲の良い友達、次に当時の担当編集、その次に親、そして最後に公にカミングアウトしました。友人たちの反応は「やっぱり」でしたが、仕事関係の人からは「まさか!」の反応、親も最初は認めたくないようでした。というのも、私はこれまで対人関係で大きなトラブルを起こしたことがありません。
詳しい心理検査をする前は、主治医からも「対人関係でトラブルを起こしたことがないなら、発達障害ではなさそう」と言われたほどです。
ASDや多動性・衝動性優位のADHD(ジャイアン型)だと対人関係のトラブルを起こしやすい傾向にあるのですが、私の場合、LD(算数限定)が最も強くて金銭関係に支障をきたしており、次に不注意優勢ADHD(のび太型)の傾向が強かったため、通常の生活を送っている分には周りは気づきづらいのです。LDに関しては税理士さんをつけることで解決しました。
また、最近ではPayPayやLINE Payなどのキャッシュレスサービスを使うことで、お釣りの計算の心配をしないで済んでいます。不注意優勢ADHDは「こんなもの」と思って生きてきたので、転びやすいとかケアレスミスがあるくらい。ケアレスミスは、編集さんが指摘してくれるので、このあたりは人に頼っています。カミングアウトすることで、偽りの自分を演じたり、ミスをしているのではないかとドギマギすることが減ったので、カミングアウトして良かったと思っています。あまりにも日常生活や仕事に支障をきたしている場合は、カミングアウトをした方が周りになぜ自分は他の人と違うのか、を説明できます。
しかし、これも環境の問題。ガチガチに古い体質の会社だとかえって居場所がなくなってしまいます。また、発達障害は一説によるとグレーゾーンも含めれば10人に1人の割合でいるとも言われています。
そうすると、多くの従業員が所属している会社であればあるほど人に埋もれ、特性が目立たなくなります。このような環境であれば、場合によってはカミングアウトする必要はないかもしれません。逆にカミングアウトしたほうがいい場合は、明らかに仕事に支障が出ており、ストレスからうつ病などの二次障害を引き起こしそうなとき。または、多様性が認められている職場。
でも、多様性が認められている職場って、わざわざカミングアウトしなくても「この人はこんな人」という空気が自然とできていることが多いです。ということで、カミングアウトしたほうがいいのかどうかは、はっきり答えは出せません。その人の特性の度合いと環境によります。
しかし、「どうしてもカミングアウトしたい!」という方は、次のようなタイミングと言葉選びを参考にしてみてください。
トラブルに繋がりにくいカミングアウトの仕方
カミングアウトの仕方は「自分はこういう特性のある発達障害です」と、できないことを明確に示すことです。そして、その上でどうフォローしてほしいのかまでを話すと、受け手側も大きな戸惑いを抱えずにすみます。
例えば「ケアレスミスが多いので、書類作成の際はダブルチェクをお願いしたいです」という言い方だと、角が立ちません。
上記は私自身の体験や取材を通した上での考えです。何度も言うよう、発達障害の特性は人それぞれで、全く同じ人など1人もいません。自己理解を深め「自分はどうしたいのか」を考えた上で、カミングアウトするかしないか決断してみてください。