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  • 2019年4月16日

「山ちゃんを見捨てようと思ったことは、一度もありません」南海キャンディーズしずちゃんの半生について、本人に聞いてきた

最初は芸人じゃなくて、女優になりたかったんです

yuzuka 本日は、よろしくお願い致します。今回のインタビューでは、しずちゃんの半生について伺っていきます。何か答えづらい質問があったら、おっしゃってくださいね。

しずちゃん はい。よろしくお願いします。

 

yuzuka あ……しずちゃんってお呼びしても大丈夫ですか……?

しずちゃん はい、大丈夫です(笑顔)

yuzuka ありがとうございます!では、早速いろいろと伺っていきたいと思います。
まず、なんといってもしずちゃんの経歴について。
まずは皆さん周知の通り、芸人しずちゃんとして大ブレイク。その後は女優としても活躍し、第30回日本アカデミー賞新人俳優賞をそれぞれ受賞されました。
そこから始めたボクシングではオリンピックを目指すほどの実力を獲得。また、画家として、今では絵本*を出版するなど、芸術面でも幅広い活動をされています。
いろんなお仕事をされて、しかもその全てを評価されていると言っても過言ではない…!

しずちゃん いえいえ……。本当にそんなことないです(笑)

 

yuzuka だからこそ、調べていけばいくほどに、すごく気になってきました。

しずちゃんは、どんな基準でお仕事を選ばれて、どんな意気込みでそれらをこなしているのか……。そのあたりについて、お聞きしても良いですか?

しずちゃん 難しい質問ですね……。

 

yuzuka わー、そうですよね。すいません!

しずちゃん そうだな……仕事に関しては……選んでないんです。

 

yuzuka 選んでない!?

しずちゃん はい。そうですね。仕事というか、好きなもの、好きなこと。そういう興味を持つ対象を選ぶときの基準って、感覚でしかないんですよね。

だから、「これがこうだからこれを選ぼう」って気持ちでメチャクチャ慎重に選んでいるわけではなくて、興味があるからやってみよっかな。くらいの感覚ではじめています。

 

私運が良くって、どの仕事も「たまたま」お声がけいただいて。例えば映画とかも、「たまたま」フラガールのお話をいただいて、その時になんとなく、「やってみようかな」って思ったんです。

yuzuka 女優さんがやりたい!賞を目指そう!って気持ちを持っていたわけではなかったんですか?

しずちゃん そうですね……。まさかあんなに評価されて、賞までいただけるとは思っていなかったです。(笑)

お仕事は本当に選ばないので、お話をいただいて面白そうだったら、なんでも「やってみよう」って、やってみます。ボクシングも、誘われてボクシングのジムに行った時に、「プロ、目指して見れば?」って言われて、「やってみようかなあ」って、なんとなくはじめました。

 

yuzuka なるほど。全ては「面白そう」という感覚に従って選択されているのですね。因みにそのフラガールが、しずちゃんにとって一番最初となる、芸人さん以外のお仕事ですか?

しずちゃん そうですね。本格的にお仕事としていただいたのは、フラガールが初めてです。

 

yuzuka そのフラガールでは、なんとデビュー作で、主演女優賞を受賞されました。もともと、お芝居に興味はあったんでしょうか?

しずちゃん 実は物心ついたときから、おにゃんこクラブに憧れていてアイドルになりたくて……。

その後に憧れたのが、女優さんやったんです。その頃から、漠然とした芸能界への憧れがありました。そしてその憧れの中心に、「演じてみたい」という興味があったんです。

 

yuzuka なるほど……。そんな時期から、お芝居への興味があったんですね。

しずちゃん はい。とくに本格的にとか、誰に見せるとか、教えてもらいながらとかではなく、一人っきりで漫画の主人公になりきりながら、ブランコを漕いだりしていました。(笑)

演じるというよりは、物語に出て来る女の子にただなりきってたんですよね。

 

yuzuka では、しずちゃんにとっての最初の夢は、「芸人」ではなく、「女優」だったんですね。

しずちゃん はい。そうです。実はその頃には、劇団の養成所にも通っていました。

 

yuzuka どうしてそこから、「芸人」という道を目指そうと思ったのでしょう?

しずちゃん その養成所の授業で、自由演技というのをやらされるんですね。

なんかその時に……。関西人やからなのかなんなのか、激しい「笑いを産まなければいけない!」「なんとかしてオチつけな!」「なんとかして笑わさないと」という使命感に苛まれたんです(笑)

 

yuzuka おお……!養成所でのお芝居から、お笑いへの情熱が生まれたのですね。

しずちゃん そうですね。そしてその気持ちが大きくなるにつれて、「あ、自分って、誰かを笑わせたいんや」って気付いたんです。それが芸人を志そうと決めたきっかけでした。そこからその延長で、ネタを考えるようになりました。最初は本当につまらないコントを考えて、友達を誘って公園で練習してみたりして……。

 

yuzuka そういったことを続けていくうちに、「誰かに見せたい」という思いが生まれていったのでしょうか?

しずちゃん はい、そうですね。なのでそこから、吉本の養成所ではなく、誰でも受けられるオーディションライブがあるんですけど、そこに応募しました。

 

yuzuka そのオーディションですぐに、ご自身が書かれたネタで「審査員特別賞」を受賞された…。

しずちゃん はい。そうです。

 

yuzuka その当時のネタや構成は、全てしずちゃんが考えていたのでしょうか?

しずちゃん はい。ほとんど私が考えていました。

 

山ちゃんと組むのは、大きな賭けでした

yuzuka その当時から、ご自身で書かれたネタを評価されていたしずちゃん。そして上り調子に見えるその頃、現在の相方である山里さんに、「コンビを組もう」と誘われたとお聞きしました。

絶頂期にも思える頃の、一方的な引き抜きのお誘いような印象も受けますが、どうしてしずちゃんはその時、「山里さんと組もう!」と、決意したのでしょうか?

しずちゃん 山ちゃんにさそわれた頃、私は最初の頃のコンビの相方(女性)と解散して、他の男の子と、コンビを組んでちょうど6ヶ月目くらいやったんです。徐々にコンビとして成長しているなという実感はありましたが、なんとなく、突き抜けられてはいなかった。その時も私がネタを書いていたのですが、相方が女性から男性に変わって、もっと考えられるはずなのに、全然それを生かせるネタが書けていない感触があったんです。ずーっと、同じことの繰り返しだなあ。と、悩んでいました。そんな矢先、山ちゃんから誘ってもらって……。

 

その当時は私も山ちゃんもボケ。それに、二人とも特徴的な見た目をしていることから(笑)、似たような二人でネタをやることが、全然想像できなくて……。私はずっと、コンビはデコボコの方が良いと、勝手に思っていたんですよね(笑)でも、想像できないということは、確実に今までと違うことができる!って思いました。だから、本当になんのイメージもわかないけど、「よし組んでみるか!」って。

yuzuka おお……!もともとのコンビがすごく上手くいっていないわけではないのにその決断って、すごいことですよね。

しずちゃん はい。かなり大きな賭けでした。

 

yuzuka それに、しずちゃんって「表現者」だなって思うんです。山里さんとコンビを組むまでは、ずっとしずちゃんがネタを書いてらっしゃいましたよね。だけど山里さんと組むことによって、彼が表現した「しずちゃん」というキャラクターを演じる、どちらかというと「演者」になる。その部分について、葛藤や、不安などはありましたか?

しずちゃん うーん。多分今もやと思うんですけど、私は自分自身のことを、あんまり客観的に見られてないんですよ。だから今までは、自分はどんな風に見られてるからどういう風にしたほうが良いとか、そういう風なネタの考え方ではなくて、「自分がこのボケをしたいからこれを書く」ってやってきてたんです。それが自分に合っているかどうかもわからないまま続けてきた。

でも、山ちゃんはそんな私に対して、プロデューサー的な役割になってくれました。「この子をどうしたら生かせるやろう」ってところから、ネタやキャラクターを考えてくれるんです。

 

だから、そこに対しては素直にすごいなって思ってましたよね。ただ…

 

yuzuka ただ…?

しずちゃん 自分のやりたいことができない悔しさはありました。なんでコンビやのにそっちだけが主導権握ねん。みたいな(笑)そういう反発する気持ちとかはありましたね。

 

yuzuka そういう気持ちをどうやって乗り越えたのでしょう?

しずちゃん 結局、山ちゃんが全部正しかったんですよ。例えば2004年のM-1の決勝戦のネタ。山ちゃんが考えて来たネタは、私が司会者の女の子に喧嘩をうるという、所謂邪道と言われるようなネタでした。

私は決勝戦で優勝を狙いたかったから、正統派のネタで勝負したかった。でも、山ちゃんは「今の自分たちは優勝を目指すよりも、爪痕を残すことを目指すべき」と考えていました。その当時は私の方が正しいって思ってたけど、今考えればやっぱりあれも、山ちゃんが正解やった。

あの当時は「本間にうるさいなあ」としか思わへんかったけど(笑)そうやって後になってから「山ちゃんのプロデュースがあったからここに来られた」って思うことが多くなってきてだからなんだかんだと、一緒にやってきたんやと思います。

yuzuka その当時、しずちゃんに対して酷い言動をする山里さんに対して、しずちゃんも同じように反発されていたんですよね。

しずちゃん そうですね。とにかくあの時は、お互いがお互いを大嫌いやったんですよ(笑)

同等の立場でいたいのに、向こうがすごく上から目線で来るのが嫌やったんですよね。

 

山ちゃんの方からすると、彼はすごくストイックなので、私のマイペースに見える性格に苛立っていたと思います。「なんで売れてもないのにそんな悠長にしてられんねん」って。(笑)確かに研究してお笑いに没頭してたのは山ちゃんの方やったし。

 

でも私からすると、じゃあ私が研究して提案したら聞いてくれるんかよって思ってました。どうせいつも却下するやんって。(笑)そこが絶対に噛み合わなかったですね。だから、ずーっと冷戦が続いてました。

 

yuzuka なるほど……。想像すると、すごくしんどいことですよね。その頃しずちゃんは、お笑いだけではなく女優さんとしても評価されていましたし、コンビとしてもどうしてもキャラクターの強い「しずちゃん」の方が注目されていたような思い出があります。

コンビとは別に、自分自身が評価されていく中で、うまくいかない山里さんとの解散を考えられたり、そもそもお笑いを辞めてしまおうと思ったことはなかったんですか?

しずちゃん それはなかったんですよ。仲はめちゃくちゃ悪かったけど、でも、山ちゃんは自分にとって本当に必要な人やと思っていたから。その当時はそこまではっきりとそう思えていたわけではなかったけど、だけど一度も「絶対に離れよう」と思ったことはなかったです。不思議と。

 

yuzuka すごいです……。そこまでコンビ仲が悪くて、嫌がらせのような行為もあって……。私だったら、「もう辞めてやろう」って、投げ出してしまうかも。

しずちゃん ははは(笑)実はコンビを組んで3ヶ月目くらいの時、一度だけ「もう解散してやろうかな」って考えたことがありました。まだ南海キャンディーズが世に出る前でしたね。「もうこの人とはやっていけへん」って思ったんです。

 

yuzuka それはご本人にお伝えしたのでしょうか?

しずちゃん はい。伝えました。「もう無理」って(笑)

yuzuka 山里さんの反応は……?

しずちゃん 「あと三ヶ月待って」って。「あと三ヶ月で、絶対に結果出すから」って。

 

yuzuka おお……かっこいい…。山里さんにとってもしずちゃんは、どうしても必要な人だったわけですね。

しずちゃん はい。それまでは小さな劇場でネタをやっていて、あんまりウケてもなかったんです。でも、それくらいの時期からちょっとずつ外の大きな劇場でやるようになって……。少しずつ、ネタがウケるようになってきた。それで、最終的には踏みとどまりました。

 

yuzuka なるほど……。そこから山里さんの言葉通り、ブレイクを果たしたわけですね。有言実行ですね。

 

病んでる時は、無意識に真っ暗な絵を書いています。

yuzuka そこからしずちゃんは、芸人以外の活動にも、さらに進出していきます。その中のひとつに、アートがありますよね。

私、しずちゃんの作品って全て似た構図で書かれているなって思っていて……。

例えば今回持ってきていただいた二枚の絵。閉じ込められた通路に、女性が悲しそうに座っていて、周りには、ツタが張り巡らされています。

私はどうしても、いろんなことに挑戦しながら、様々な葛藤を抱いているしずちゃんの思いが反映されているような気がしていたのですが……どうでしょうか……。?

しずちゃん 実は……何もないんですよ(笑)多分、私はこの構図がバランス的に好きなだけで、すごく無意識に描いていました。

 

yuzuka なんと……!まさかの……!

しずちゃん そうなんです。でも、書いた時期を考えて見ると、確かにターニングポイントではあったので、無意識に思いをぶつけていたのかもしれません。

例えばこっちの絵(再出発)は、ボクシングをやってた時に、怪我をしてできなくなってしまった時……。「やりたいのにできない」ってモヤモヤを、どこにぶつけて良いか分からなくて書いた絵なんです。「もう一回、ボクシングでやるぞ」て気持ちで書いていた気がします。

yuzuka なるほど…それでタイトルも、「再出発」なんですね。

しずちゃん はい。そうです。

 

yuzuka しずちゃんが「絵を書きたい!」って思う場面って、どういう時が多いんでしょう?

しずちゃん うーん、人の絵を見た時、美術館に行った時。そういう時は、「書きたい」って思いますね。それから最近気づいたんですけど、私、自分のすごく好きな人を書いている時が、すっごい幸せなんですよ。その人達を書いてる時って、楽しくて満たされて仕方がないんです。一番好きな時間です。

 

yuzuka では、フラストレーションが溜まって、絵にマイナスをぶつけて書く!というよりも、「好き」や「幸せ」等、プラスの感情を描かれることが多いんですね。

しずちゃん そうですね。でも、すっごくマイナスな気分の時は、無意識に真っ暗な絵を書いたりしています(笑)その時は気付かないけど、絵を書き終わってから「あれ?自分今、病んでんのかな?」みたいな。

yuzuka 後から絵を見て気付くわけですね。

しずちゃん そうですね。そういう時は、絵もうまくいかないことが多くて。ずーっと書きながら完成が見えなくて、「ああ、私、これ、どこに向かってんのかなあ」って……。

どこかのタイミングで、「これだ!」ってヒントが見つかるとそこからはまた楽しく描けるんですけど……。でも、そうやって迷って書いた絵よりは、楽しくスパっと書き終えた絵の方が、仕上がりも納得がいくものだったりします。

 

yuzuka お話を伺っていてしみじみ感じたのですが、しずちゃんは本当に「芸術家」なんですよね。自分が目立ちたいからこういった意図でこういうものを表現しよう!というよりは、ご自身の中にうごめくものを、ただひたすらに表現している。芸人としても、画家としても、アーティスティックで素晴らしいです。

 

どんなに芸人以外の仕事が増えても、「南海キャンディーズのしずちゃん」であり続けるべきだと思っています

yuzuka さて、そんなしずちゃんは今年、女優としてまた、舞台に立たれます。すごくシリアスな役だとお聞きしました。今から本番が楽しみで仕方ありません……。

だけど実は、女優、画家……。それらの表現って、しずちゃんのルーツである「笑わせたい」とは、少しだけ、ベクトルが違いますよね。

しずちゃん はい。

 

yuzuka そんな中、2019年は、しずちゃんのベースとなっている南海キャンディーズとして、初の単独ライブを行うお話も出てきている。やっぱりしずちゃんの中で最終的に行き着く先は「芸人として笑わせたい」という思いなのでしょうか?

しずちゃん それが……自分の人生設計みたいなものは、全然してないし、できないんですよ(笑)

 

yuzuka なるほど!

しずちゃん そうなんです。今回舞台にお声がけいただく前、実はもうひとつ舞台に出ていたんですね。そうやって今は、立て続けに女優としてのお仕事が重なってるんですけど、これも選んだわけではなくて、偶然です。「こうやっていこう」みたいな設計は、全然してないんですよね……。

例えばひとつ前の舞台では古田新太さんに呼んでいただいたんですけど、それがものすごく素敵な現場やって。
そこに呼ばれるって、すごいことやなって思うんですよ。

 

yuzuka そうですよね。

しずちゃん なかなか、「入りたいな」って思って入れるものじゃないじゃないですか。それを呼んでいただけて、「うわあ、生きてたら良いことあるんやなあ」って思いました(笑)

 

yuzuka (笑)しずちゃんの実力があるからこそです。

しずちゃん だからこそ、「続けること」が大切やなあって思います。お仕事をいただいた時は全力でお芝居に挑戦してみる。最初はすごく難しいんですよ。演出家さんに求められることに「どうしたらいいんやろ……」って思ったり、演出家さんにオーダーされた枠の中で表現をするって、一見表現の幅を狭められた気になったりもして。

だけど、最終的には、そこを乗り越えることによって、もっと表現の幅が広がる。それってめちゃくちゃ良い経験です。

だから、いただいたお仕事をひたすら一生懸命に続ける。因みにその時にも、「どうやったら笑わせられるやろう」って、真剣に考えてます(笑)

 

yuzuka そこにもやっぱり「笑わせたい欲」があるんですね。因みに私は舞台のプロデュースも行っているんですが、舞台に関わってみて、ひとつのお芝居を完成させることの難しさについて、すごく深く考えました。

芸人として、画家としても活動される中で、女優に挑戦されることで、お芝居のお稽古も含めてすごく大変な期間が増えると思うのですが、それでもこの先、女優としてのお仕事も続けていきたいと感じられていますか?

しずちゃん 続けていきたいです。お仕事をいただけるのであれば挑戦したいです。大変というよりは、どんどん面白くなってきていますね、お芝居が。

yuzuka ここで気になってくるのですが、しずちゃんのお仕事って、今は芸人しずちゃんとしてよりも、女優のしずちゃんとしての割合が、大きくなってきていますよね。それでも芸人を辞めようと思わない理由って、なんなんでしょう?

しずちゃん 土台にあるのは、ずっと芸人、南海キャンディーズなんです。もしかしたら、これから女優の仕事の方が増えていくかもしれない。量としての比重は、そっちの方が重くなるかもしれない……。もちろん頂いたお仕事は全て真剣にこなしていくけど、でも、全ては「南海キャンディーズのしずちゃん」という私がいるからこそ繋がったお仕事なので、そこはずっと変わらずあるべきものだと、とくに最近、あらためて感じています。

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