ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之氏から性的暴行を受けたとして1,100万円の損害賠償を求めた民事裁判で、12月18日に東京地裁は山口氏に330万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。
2017年に世界中で加熱した#MeToo運動※1も相まって注目が集まっていたこの一連の出来事。実名での被害告白から丸2年以上経った今下された判決を、多数の国内外メディアが大々的に報じました。
※1 性的暴力被害や嫌がらせやの体験をSNSで告白、共有する際に使われた#ハッシュタグ。2017年以降、米国ハリウッドや日本国内でも拡がり、性的暴力の被害を伝える運動全体の総称に発展。
引用: BBCサイトより https://www.bbc.com/news/world-asia-50832524
TIME(米メディア)は、伊藤さんがハリウッドで#MeToo運動が加熱する少し前に性的暴力を実名公表したことを取り上げ、そのムーブメントに火種をつけたと報じました。
また、2017年に日本における強制性交等罪の決定法の下限が3年から5年に引き上げられたことも取り上げました。2017年に日本で約110年ぶりに大幅改正された性犯罪に関する刑法「強制性行等罪」では、女性のみが対象だった「強姦罪」から被害対象者の性別を問わない強制性行等罪に名称を変更し、決定法の下限を3年から5年に引き上げ、親など監護者による子との性的行為に関する規定である監護者性交等罪が創設されました。
※男女共同参画局 「刑法第百七十六条〜刑法第百七十八条」参照http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dfsa/law.html
NHKハートネット参照https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/128/
しかし未だ残る課題部分についても、BBC(英メディア)が取り上げています。
引用 : https://www.bbc.com/news/world-asia-50832524
BBCは、伊藤さんが警察とのやり取りの中で、等身大の人形を使って被害を受けた現場の再現を強いられたと報じています。日本の刑法での性的暴力告訴においては、暴力や脅迫があった事あるいは被害者が抵抗できない状況にあった事を法的に証明する必要があると伝え、記事を締めくくりました。
今後の動き
今回論点となった性行為の合意については、山口氏は「合意があった」、伊藤さんは「合意がなかった」とそれぞれ主張しています。
山口氏は今回の判決を踏まえた上で改めて「法に触れる行為は一切していない」とし、控訴する意向を示しました。一方で伊藤さんは、一連の出来事に関して様々なメディア等から受けたセカンドレイプへの措置に関して、「どんな結果になろうと次はセカンドレイプへの法的措置を考えています。そういった措置を行わなければどんどん続いていってしまう。一番心苦しいのは、私に対するコメントを見て(性的暴力からの)被害を告白しようとする他の方が、自分も話したら同じように攻撃されるんじゃないかと思ってしまい、結果的に色んな人を沈黙させてしまう理由になってしまうので。」と発言しています。
引用 : https://www.bbc.com/news/world-asia-50832524
実名で性的暴力の被害に対して声を上げる動きは全国に広がっており、2019年4月から毎月開催されている性的暴力の被害者による街頭スピーチ「フラワーデモ」は31都市を超える拠点で開催されています。※https://www.flowerdemo.org/
本裁判が真実に基づいた決着を迎えることを祈るばかりです。
性行為の同意
性行為における同意について、イギリスの警察署が公開したアニメーションが分かりやすく解説しています。
「Tea and Consent(紅茶と同意)」と題された同アニメーションでは、
- お茶の場には来たけど、今は紅茶を飲みたくない人
- 先週は飲んだけど、今は紅茶を飲みたくない人
- 意識がないから、紅茶を飲みたがるはずもない人
などと紅茶を飲む行為の同意を性行為の同意に例えて説明しており、これらは全て「同意がない状態」だと表しています。
キクエストでは、偶然アメリカの性教育事情の事例を準備し紹介しましたが(「日本の従来の性教育は古い?アメリカ合衆国の性教育現場。」https://paralymart.or.jp/kiquest/6136)、日本における性教育をさらに議論し、アップデートする時期であることは明白ではないでしょうか。