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  • 2020年6月15日

【SDGsな人々#8】目視検査をAIで行うことにより、人類の目を検査から解放する 株式会社Rist

「目視検査」というのは、人が目で見て、部品の表面に付いている細かい傷や汚れを検査する方法です。熟練の検査員は、一日中工場の中で検査のために目を酷使しています。

今日は、「人類の感覚器官に、自由を取り戻す」をミッションに、目視検査をAIで行う取り組みをしている株式会社Ristの皆さんにお話を伺いました。

検査のAI化により、SDGs「8,働きがいも経済成長も」と「9,産業と技術革新の基盤をつくろう」を目指す

———目視検査の現場には、どのような課題があるのでしょうか?

まずは、目視検査のために検査員が一日中目を使い続け、疲れ切ってしまう現状が課題だと感じます。

人の目というのは、小さな傷を見つけるために、工場でずっと製品を見続けるために存在しているのではありません。桜を見たり、芸術品を見たりといった、美しいものを自由に見て、感じる目的で使って欲しいと思っています。

最近は熟練検査員が高齢化して減少していく中、新しい検査員を確保できないという課題もあります。少子高齢化が進んで働き手が少なくなれば、肉体的にも厳しい仕事はこの先担い手がいなくなるでしょう。

私たちが開発しているのは、熟練検査員の目の動きをそのままAIに置き換えるような技術です。

目視検査のAI化が進めば、現在人が担っている目視検査を機械で代わりに行うことができるのです。これらをSDGsに置き換えると、「8,働きがいも経済成長も」や、「9,産業と技術革新の基盤をつくろう」などに該当します。

当社の規模的に、慈善活動としてSDGsを進めるのはまだまだ難しいのが現状ですが、事業そのものがSDGsの内容に関わるようになるべく取り組んでいきたいと思っています。

とある会社の開発依頼から生まれた目視検査のAI化

———現在の事業は何がきっかけで始められたのでしょうか?

目視検査をAIで行うという取り組みは、とある会社からの開発依頼がきっかけでした。以前からAIの技術を何か世の中の役に立つような形で生かせないかと思っていたところに、ある部品メーカーさんから目視検査の自動化について相談があったのです。

人間の目で行っている判断を、全てAIに任せるというのは技術的に非常に難しい課題でした。

今までも目視検査を自動化する動きはありましたが、画像診断の精度が低く、なかなか検査そのものをロボットやAIに置き換えるところまでは行っていませんでした。

———どのような形でその課題をクリアしたのでしょうか?

私たちが取ったのは、AIに100%の精度を求めずに、AIと人とで役割分担をするという方法です。

私たちのオリジナルの技術で、「自信度」という考え方があります。これはAIが自信があるところに関してはAIに任せ、AIが自信がないところに関しては人に任せるという分担をし、「今、どれぐらいの自信を持ってこの回答を出したのか?」という基準をAIに持たせるというものです。

まずは人間の負担を軽くするところから始めたのです。

人間とAIが共同で検査をするというのは他にないユニークなアプローチですし、今後世の中の技術レベルが上がっていけば、AIが検査できる幅が広がっていくでしょう。

———なるほど。人とAIがお互いに得意な分野を生かすということですね。

そうです。最近では工場排水の水質検査にも取り組んでいます。工場排水の水質検査も人間の目視に頼っている部分があり、基準が人の目であるがゆえに、検査の質を一定にするのが難しいという問題がありました。

これらにAIを導入することで、検査基準を安定させることに挑戦しています。

水質を綺麗にすることは、SDGs「6,安全な水とトイレを世界中に」にもあるように世界的にも重要な課題であり、AIを使った目視検査を導入して水質がどんどん綺麗になれば、広く世の中的にもプラスになるのではないでしょうか。

実際にこの事業はニュースリリースをした時にかなりの反響があり、世の中の関心の高さを感じました。

AIで「できる範囲」を明確にする

———実際にAIでの検査を導入する時、現場の人の反応はどうでしたか?

AIと聞くと世界の滅亡を招くんじゃないかとか、仕事を奪われるんじゃないかとか、そういった漠然とした不安を持たれている方もいらっしゃいます。映画などの影響も恐らくあるんでしょうね。

逆に、全てを解決できる魔法のツールなんでしょ?というような捉え方をされてしまうことも非常に多いのです。

これらの誤った認識を抱いてしまう問題を解決するためには、AIというものがどこまでできるかをきちんと伝えることがとても重要だと思っています。

実際に導入の現場では、かなりしっかりと話し合いをします。ここはAIと一緒に分担できそうだねとか、この部分に適用できそうだねとか、導入してからも何度も話し合いを重ねます。

そうすることでお互いに理解が深まり、初めはAIに全く触れたことがなかった現場の方からも、「ここはこうできないのか?」「こういうことはAIで可能か?」といった提案を頂けることがあります。

人とAIと、二人三脚で課題を解決していくことはお互いの強みを補完する形になり、次の取り組みに生かすこともできるのです。

———今後はどんな取り組みをして行こうと思っているのですか?

今は、特に「最終検査」と呼ばれる、目視検査の中で一番ハードルが高くて重要な部分を全てAIに置き換えるチャレンジをしています。それができれば、完全に人を目視検査の現場から解放することができます。

ご相談を頂く企業からは、高齢化により検査員が足りなくなる問題を解決したいと言われてきました。すでにAIを導入することで、実際に検査員の人数を減らすことができています。

最終検査をAIで出来るようにするためにはかなりの精度が必要になります。通常のAIでは見つけられないような小さな傷を見つける技術とか、一つの製品検査にかける時間をすごく短くする技術などが求められます。

目視検査は、日本だけではなく世界中で行われており、過酷な現場で多くの人が働いています。私たちは人々の目から自由を取り戻したいと考えています。

「人として正しい行動をとる」ことによりAIの不透明さをなくす

———仕事をされる上で一番大切にしていることは何ですか?

人のしている仕事をAIを使い機械に置き換えようという事業をしていますが、私たちは何でもかんでもAIで省人化を進めるというのではなく、人と人が手を取り合って協力していくことが非常に重要だと考えています。

私たちの会社だけで自動化という部分を全部取るのではなく、私たちのミッションを他の会社が達成してもいいと思っているのです。現在関西を中心に活動していますが、関西でAIの勉強会を開いたりもしています。

これは仕事とかリード獲得とかを抜きに、単純に関西全体でAIの知識を上げていこうという思いで始めたものです。

AIのベンチャー企業には、それぞれ得意不得意の分野があります。なので、完全に事業が競合するようなAIベンチャーの企業ともコミュニケーションを取り、案件の受け渡しなどもできたらいいよねと話し合っているんです。

具体的には、私たちが不得意な案件が来た時に他の企業にお願いしたりとか、逆に他のベンチャーからこのジャンルはRistさんが得意だよねというような話がもらえるといったような。

まだ実際に案件の受け渡しは行われていませんが、それができたらいいよねという話はもう進んでいます。このように、いろんなところが手を取り合って、最終的に日本全体として上がっていければいいなと強く思っています。

———素晴らしいですね。企業とは自分たちの利益を最優先にするのが普通だと思いますが、どんな思いがあって今のような活動ができているのでしょうか。

私たちが大切にしている考えに、「人として正しい行動を取る」というものがあります。

AIベンチャーの仕事って、そもそもAIというものがよくわからない上に、導入にも資金がかかります、でもやってみたらあんまり成果出ませんでしたみたいな感じで、結構大きなお金を払ったのに失敗していると思われる場合があるんです。

要は、仕事の中身がなんとなく不透明なんですよね。なので、いかに自分たちが正直に、正しい工数見積もりで誠実に仕事をするかがとても大切だと思っています。

もちろん企業活動をしていれば、他社と差別化をはかり、売上を上げて従業員を守らなければいけません。

ですが、そんな中でも「人として正しくある」というのが一番大切であり、もちろん100%それができているかは分かりませんが、常にそうありたいと思っています。

———今回は、株式会社Ristの(写真上より)勝 啓太朗(かつけいたろう)さん、柴 昂祐(しばこうすけ)さん、山田 克基(やまだかつき)さん、にお話を伺いました。ありがとうございました!

 

 

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