学校や病院向けの防犯アラーム装置の「スクールガード」と、センサー内蔵の緊急地震速報装置「EQガード」を扱う株式会社チャレンジの佐々木和男さん。
防犯アラームと地震速報は、どちらもいち早く危険を知らせることで、犯罪や災害から人の命を救う装置です。
その「数秒」があれば、助かる命が増えるんです、と佐々木さん。
犯罪や自然災害から人々の命を守り、SDGsのゴール「11.住み続けられるまちづくりを」目指す佐々木さんに、防犯や防災にかける思いを伺いました。
「数秒」あれば助かる命がある。センサー内蔵地震速報装置にかける思い
———犯罪や自然災害から人の命を守る商品とは、具体的にどんなものでしょうか?
最初に作ったのは「スクールガード」という防犯装置です。
2001年6月に大阪市で発生した附属池田小事件をきっかけに、学校の防犯システムの需要は一気に高まりました。
学校の防犯で大切なことは、すぐに侵入者を止めるということです。
ですが、最初は誰も侵入者が犯人だとはわからないんです。不審だと思いながらも話を聞こうとして、やられてしまう。
ですが、その時に危険を知らせるリモコンスイッチを持っていれば、それを押すことはできます。それで職員室にある受信機に危険表示が出れば、多くの人が現場に応援に駆けつけることができます。
今は、センサー内蔵地震速報装置である「EQガード」に力を入れています。
———センサー内蔵地震速報装置とはどんなものでしょうか?
緊急地震速報は、日本が世界で初めて導入しました。
日本には1000箇所ほど地震計が埋められていて、その地震計が初期微動を感知し、気象庁がそれを発表する仕組みです。
地震の防災で一番大切なのは、「いかに早く地震を知り、伏せるなどの身を守る行動ができるか」です。
その数秒が勝負なんです。立っていれば人間は揺れにより吹き飛ばされてしまいますが、しゃがんだり身を守る行動ができていれば、助かる確率が上がるんです。
私たちが取り扱うセンサー内蔵地震速報装置は、内蔵のセンサーが初期微動を感知してアラームが鳴るので、直下型地震の場合は気象庁の発表よりも早く危険を周りに知らせることができます。
さらに、今は海外でセンサー内蔵地震速報装置の需要がとても高まっています。
海外には、日本のように地震速報を出している国は数か国しかないので、内蔵センサーで地震を感知できる装置が必要なのです。
———海外でも地震対策をしている国はあるのでしょうか?
今現在世界で、地震が頻発する国は30カ国ぐらいあると言われています。私はそういった国をいくつか見てきましたが、みんなほとんど事後対策しかしていません。
起きてしまった災害に対して、救命をどうするか、食料の確保をどうするかなどの対策しかしていないのです。
被害を少なくするには、それ以前に日頃から「地震が起こった時にどういう行動をするべきか」というシミュレーションをし、訓練を行なうことがとても大切です。
地震は今この瞬間に起こるかもしれません。
その時に、数秒早くそれを知ることができれば、もっと多くの人の命を救うことができるのです。
避難訓練を通して人々の意識を変えていきたい
———人の命を守るビジネスをしたいと思ったきっかけはあるのでしょうか?
純粋に、人の役に立ちたいと思ったからです。
例えば緊急地震速報装置ですが、地震計を売っている欧米の会社もあるんです。
ですが彼らは、商品を売ってそこでおしまいなんですね。
それではダメです。「アラームが鳴った時にどういう行動をとるか」までをセットでやらないと、本当の防災にはなりません。
私は多くの国で避難訓練の指導もしています。
正直そこはお金になりません。ですが、何よりも大切な部分だと思ってやっています。
また、現地でデモンストレーションや指導をしていくうちに、気付かされることもあります。
パプア・ニューギニアで障害者が通う学校に行った時のことです。
ここには耳が不自由でアラーム聞こえない生徒もいるから、そういう子でもわかるように、ライトなどで危険を知らせるようにできないかと聞かれたのです。
これは、信号線を接続すればできるようになっています。実際に利用者の声を聞いたことで、助けられる命が増えたと思い感謝しています。
———お仕事をされている中でもっとも大切に思うことはなんですか?
「誰も取り残さない」ということを常に思っています。
誰も取り残さないというのは当たり前のことですが、それはとても大変なことです。
お年寄りも、体の不自由な方も、障害のある方も、地震が来た時に全員で助かるためにできることをやりたい。
そのためにはやっぱり避難訓練をするしかないんですよね。
実際にやってみて、その中で、体が不自由な方はこういう措置をしておかないといけないとか、お年寄りはアラームが鳴ったらまずはこういう動きをしようとか、あらかじめ訓練しておかないと絶対できないことなんです。
防災のモデルケースとなるようなまちづくりをEQガードでお手伝いしたい
———これからやってみたいことはありますか?
どこかの地域や都市で、防災都市のモデルケースとなるようなまちづくりをお手伝いできたらいいなと思っています。
きちんとトップが防災に取り組み、市民レベルにまでしっかり落とし込んでいく。
このモデルケースがうまく成り立つことで、他の都市でも何をすればいいのかが見えてくると思います。
EQガードと訓練をセットにし、どうするのかを経験してみて次の課題に取り組む。
それをオープンにすることで、次のステップが見えてくるでしょう。
地震は本当にいつ起こるかわかりません。みんな自分は大丈夫と思っているかもしれないけど、いかにその気持ちを変えていくかが大切です。
人々が日頃から避難訓練をし、防災の意識を持ち続けることが、1人でも多くの命を救うことに繋がるのです。