皆様、こんにちは。この記事企画では、キクエスト編集部が日本国内外の社会課題に向けた施策を事例とともに紹介していきたいと思います。
今回は、おもちゃ業界を取り巻くSDGs事例をご紹介します。思考が柔軟で物事の吸収が早いこどもをターゲットとするおもちゃ業界では、多様性への観点を養ってもらおう製品設計もいち早く取り入れられています。
本記事で焦点を当てるのは、多様性を反映した世界的に有名なバービー人形を手がけるおもちゃメーカー「Mattel(マテル)」と、プラスチックおもちゃのアップサイクルに取り組む日本マクドナルド、ベルギーの「ecoBirdy(エコバーディー)」。さらにプラスチック製品を代替素材に差し替えたレゴの取り組みをご紹介します!
目次
ジェンダー、車いす、肌の色‥多様なバックグランウンドのバービー人形
バービー人形を手がけるおもちゃメーカー「Mattel(マテル)」は、髪の毛のないバービー人形や、義肢のバービー人形、尋常性白斑のバービー人形、車椅子に乗ったバービーなど、多様なバックグラウンドを持つこどものニーズに応えるバービー人形を発売しています。
尋常性白斑とは、皮膚の色素が抜け白くなってしまう病気です。先天性、後天性や症状の出る箇所の差はありますが、日本の患者数は、100人に1人の割合だといわれています。2018年には、尋常性白斑の症状を持つモデルのウィニー・ハーロウが、世界的に有名な女性向けランジェリーブランド「Victoria’s Secret(ビクトリアズ・シークレット)」のショーを歩いたことで一躍話題になりました。また、2005年に内閣府が発表した統計によると、国内の肢体不自由者数は181万人。車椅子の使用有無は問いませんが、これは日本人の70人に1人の割合です。
この数字から見ても、さまざまなニーズに対応したバービー人形を作ることは、より広い層からの支持を獲得できると同時に、こどもたちが自然と多様性に親しむきっかけを提供していると言えます。他にも、同社は2019年に、ジェンダーレスのバービー人形がセットになったライン「Creatable World Deluxe Character Kit」を発売。
どの人形でも着回せる服やサングラス、スニーカーも同封されており、さまざまなセクシュアリティを持った多様なこどもが、それぞれ創造性や趣味嗜好を表現できる設計がなされています。
今ご紹介したバービー人形の種類だけでも、こどもたちにプレゼントする際に「世の中の様々な価値観や人」を自然に伝えることができます。
ハッピーセットのおもちゃがマクドナルド店内で提供されるトレーに再生!
近頃よく耳にする「海洋プラスチック問題」。プラスチックは、食品容器、洋服、自動車など、あらゆる物資に含まれています。WWFジャパンによると、それらは最終的に海へと流れ、その容量は合計で1億5,000万トン。さらにそこへ少なくとも年間800万トンものプラスチックゴミが、流入し続けていると推定されています。
こうした問題は一般的に海洋プラスチック問題と呼ばれ、欧米、アジア諸国を筆頭に各国が国となって対策に乗り出しています。実際、日本国内の個々人においても、プラスチックの代替製品を支持する人の割合は7割超えとなっています。
※JETRO「急速に広がるルール作り」各国のプラスチック製品への対応」https://www.jetro.go.jp/biznews/feature/plasticwaste2019.html
※内閣府「 環境問題に関する世論調査」2019年8月https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-kankyou/index.html
そんなプラスチック問題ですが、おもちゃもプラスチックゴミの一部となっています。プラモデル、プラカー、おままごとセット‥おもちゃとプラスチックは切っても切り離せない関係です。しかし、現代においてはこの流れは変化しつつあるのです。
こどもの頃、ハッピーセットのおもちゃ欲しさに頼んだという方も少なくないでしょう。年間1億個以上販売されるというハッピーセット。その販売数から見ても、1つ1つは小さいおもちゃながら、積もれば多大なプラスチック量です。
日本マクドナルドは、このプラスチックがただ捨てられるのを待つのではなく、遊ばなくなったハッピーセットのおもちゃを店頭で回収し、店内で提供する際のトレーに再生するプロジェクトを実施しています。この企画で集まったプラスチック製のおもちゃの数は、なんと約127万個にも上ります。
この回収でプラスチック問題解決に少しでも寄与していくことは大事ですが、この取り組みをこどもたちに伝えていくことも重要です。自分が遊ばなくなったおもちゃが別の形で生まれ変わり価値のあるものに再生された、という「不要になったから捨てるのではなく、価値があるものへ作り変えることができる」という気持ちを促進できるのではないでしょうか。
プラスチックのおもちゃを、お洒落にアップサイクルする「ecoBirdy(エコバーディー)」
プラスチックおもちゃといえば、不要になったプラスチックのおもちゃで子どもたちのインテリアを作る「ecoBirdy(エコバーディー)」は、環境保護の観点でもデザイン面でも優れています。
ストロベリー・オーシャン・スカイなど自然を感じることのできる名前のプロダクト。さまざまなプラスチックのおもちゃが調和し織りなす優しいパステル調のカラーリングです。同社は、「Journey to a new life」と題し、プラスチックのおもちゃが最終的に海や土に埋没され悪影響を及ぼしていく過程を描いたストーリー・ブックも発売しています。新しく子供を持つファミリー層の夫婦は、近年の環境保全意識の高まりと共に、サステイナブルな商品を支持する傾向が見込まれます。
さらに、子供にとっても日々使用するインテリアに触れ、環境意識を学ぶことのできる絵本も読むことで、日常的に社会課題への参加と解決の意識を持つことができます。
「LEGO(レゴ)」の新素材は、さとうきび製のポリエチレン
世界有数のおもちゃメーカー「LEGO(レゴ)」は、2030年までにプラスチック製のブロックの生産を停止する計画を発表しました。すべての部品を植物ベースの素材で作られた製品を生産する予定です。
現時点で採用されている素材は、さとうきびから作られたポリエチレンであり、2018年頃から実際にその素材を使用したおもちゃが発売されています。また、レゴは2020年までに100%再生可能エネルギーに切り替えることを宣言し、古いおもちゃをリサイクルする取り組みも開始しました。これらの誓約を実現すべく、1億クローナ(約11.4億円)と約100人の新しい人材を投資し、その実現性をより確かなものにしています。
世界的に販売拠点を設け、売上高は149億クローネ(約2700億円)、営業利益は44億クローネ(約780億円)と、玩具業界に多大な影響力を持つレゴ(2017年中間期決算参照)。この規模だからこそ、期限を明示した上で、商品素材へのプラスチック使用全面停止、100%再生可能エネルギー導入宣言は、業界を牽引する企業としての責任が伺えます。
環境意識を日々意識できる立場にいる私達がこどもに与えたいと思うプロダクトを
これまでは、安価で大量生産可能なおもちゃが多く流通していました。しかし、徐々にではありますがこどもが手にするプロダクトの形が変わりつつあります。
小さい頃から自然由来の素材で出来たおもちゃや製品に親しむことで、こども自身が環境意識を養うことができます。こどもがどういう存在になり世界がどう歩んでいくかの背中を押すのは、私達大人の役割です。
大人がこどもに与えたいと思う製品のニーズを汲み取り、実現することが数年先の成功を作れるのではないでしょうか。
<参考サイト>
WWFジャパン「海洋プラスチック問題について」
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html
プラなし生活「プラスチックの化学物質「BPA」って?避けるための6つの方法」
https://lessplasticlife.com/plastics/health_impact/how-to-avoid-bpa/
「日経ビジネス」LEGO会長、13年ぶりの減収減益を語る
https://business.nikkei.com/atcl/report/15/110879/100300742/
Toy News「Clementoni launches 100 per cent recycled toy range for babies」
https://www.toynews-online.biz/2020/01/14/clementoni-launches-100-per-cent-recycled-toy-range-for-babies/
Climate Action「Lego to ban plastic blocks by 2030」
http://www.climateaction.org/news/lego-to-ban-plastic-blocks-by-2030