オーストラリア南東部に位置するニューサウスウェールズ州で2019年9月に森林火災が発生しました。9月から続くこの森林火災は、メディアのみならずSNS上でも大きな話題になっており、州政府より今後も激化する恐れがあるとの非常事態宣言が出されるほど深刻な自体となっています。
ニューサウスウェールズ州最大で観光地としても有名なシドニー都市部でも、空の色が煙でオレンジ色がかり、煙のにおいがつくため洗濯物を外で干せないなどといった被害が報告されています。
日本のテレビメディアではあまり報道されているのは見かけませんが、この実態をご存知でしょうか。
現時点での被害状況は?
引用:https://www.bbc.com/news/uk-england-wiltshire-51065726
2020年1月11日時点で、
- 延焼面積は約103,000平方キロメートル(1,030万ヘクタール)
これは韓国の国土面積に相当し、日本の国土面積の約4分の1以上の大きさに匹敵。昨年起きた世界の大規模な火災と比べても、カリフォルニア山火事の256倍(2019年11月に約400キロ平方メートル(4万ヘクタール)消失)、アマゾン森林火災の1.5倍(2019年1月~11月間に約70,700平方キロメートル(707万ヘクタール)消失)と、その焼失規模の大きさが伺えます。
- 人的被害は24人以上が死亡、他多くの人々が避難対象に
人的被害については、消防士を含む少なくとも24人以上が死亡。約2,000軒以上の住宅が焼滅し、多くの人々が避難を余儀なくされています。
- 動物被害は10億匹以上
動物的被害はさらに深刻で、オーストラリアの代名詞ともいえるコアラやカンガルーを含めた10億匹以上の動物が犠牲になり、南オーストラリア州のカンガルー島では、生息するコアラの半数が今回の山火事で亡くなったとのこと。
動物への被害はそれだけに止まらず、コアラやカンガルーなど野生動物の救助活動が行われる中、ある理由から野生のラクダの殺処分が行われようとしています。山火事による干ばつの影響から、水分確保のため街へ下ってきた野生のラクダが、食料の奪取やインフラ設備の破壊、先住民のコミュニティーを脅かすようになったため、空中からスナイパーが殺処分する事態になってしまったということです。
- 政府が発表した緊急対策への資金は1,500億円以上
オーストラリアのモリソン首相は火災への緊急対策に1,500億円を投じると発表しました。これらは消防士など救護活動にあたる人への活動資金、住宅避難を余儀なくされた人への手当て金として活用されます。さらに、地元消防団及び動物愛護団体への基金や、コメディアンが立ち上げたファンドレイジングで20億円以上を集めるなど、世界中からの支援活動も盛り上がりを見せています。
森林火災の原因
Photo by Justin Chavanelle on Unsplash
オーストラリアでは秋から冬にかけてファイヤーシーズンと呼ばれる期間があり、毎年森林火災が起こっています。しかし、今年の森林火災は例年より特に被害状況が大きく、11月にはタバコやマッチの放置による人為的な火元拡大の原因を作ったとしてこれまでに24人程が検挙されています。
今回の森林火災の被害状況の拡大原因として、地球温暖化やコアラの生息地に植林されているユーカリの樹木から分泌されるユーカリオイルが可燃性であることなどが可能性としてあげられています。
一般的な森林火災の原因は、
- キャンプファイヤー時の焚き火やタバコなど火元の消し忘れ
- 雷や火山の噴火などによる自然発生
- 枯れ葉同士の擦れ
- 過剰な森林伐採(牧場や農家の土地拡大に伴い素早くフィールドを確保するために、野焼きで森林伐採を行う方法。)
など。
日本で山火事が発生する際は、大きな山火事になる前に鎮火する場合が多くあまり報道されていない印象ですが、2019年に林野庁が発表した直近5年間のデータによると、日本における山火事の総焼失面積は約8平方キロメートル(800ヘクタール(年平均))。佐賀県多久市にある炭のくずを集めた「ボタ山」は、炭同士の擦れから起こった2017年の火災以降、小規模ながらも未だ鎮火されていません。※朝日新聞デジタル参照 https://www.asahi.com/video/articles/ASM2G6KSPM2GTTHB00Y.html
先の数字に基づくと、今回のオーストラリアの森林火災は日本で1年間に起こる森林火災の約12,890倍もの面積をこの半年以内で消失しています。経済的損失は現時点で約1,200億円以上といわれていますが、2030年には約1.6兆円、さらに長期的に見るとこの何十、何百倍もの経済損失になる可能性があると報じられています。
これらの数字を見ても、森林火災による経済的、産業的、環境的ダメージは計り知れません。今回の火災を他国の他人事として済ませず、個人単位でできる支援や原因を作らない意識など普段からの心がけが重要です。
地球環境のために。消費活動を通じたオーストラリア森林火災への寄附
引用:https://hypebeast.com/2020/1/balenciaga-australia-bushfire-disaster-koala-hoodie-t-shirt-release
様々なサイトで募金活動を通じた支援の導線が紹介されているので、本記事では、消費活動に特化した企業のチャリティサービスを紹介します。
- “Pray for Australia”/日本
東京都近辺のコーヒースタンドを中心に、全国各都市の参加飲食店が1月19日から1月26日の間、店頭に今回の火災への募金箱を設置するチャリティーイベント“Pray for Australia”を開催。1月26日のオーストラリア・デー(建国記念日)に合わせて開催された本イベントでは、当日限定で、参加店舗にて通常価格で購入したドリンク一杯辺り30円から50円が山火事被害への寄付金にあてられます。イベントの詳細はこちら。https://www.instagram.com/p/B7A9olJhR3y/?utm_source=ig_web_copy_link
- #GoWithEmptyEskies/オーストラリア
Eskyとはクーラーボックスのオーストラリア特有の言い方で、直訳の通り「空っぽのクーラーボックスを持って行こう」、そして現地で、水や食料、ガソリンなど必要な支援物資を調達して地域経済に貢献しようというキャンペーンです。
- BALENCIAGA(バレンシアガ)/全世界(オンライン)
大手KERING(ケリング)傘下のバレンシアガは、収益の100%を寄付するコアラのチャリティーTシャツとフーディーを1月13日より発売。ユニセックスでオンライン限定発売。https://www.wwdjapan.com/articles/1002413
- ”Overwatch(オーバーウォッチ)”チャリティー用スキン/全世界(オンライン)
アメリカのゲーム会社Blizzard Entertainment, Inc.(ブリザード・エンターテイメント)は、近未来の地球を舞台にしたアクション・シューティングゲーム「オーバーウォッチ」内で、登場人物「Junkrat(ジャンクラット)」と「Roadhog(ロードホッグ)」のチャリティー用スキンを、課金式で販売しました。https://playoverwatch.com/en-us/about
<参考>
* ”How Many Animals Have Died in Australia’s Wildfires?”. The New York Times(2020年1月11日).
* ”Australia to cull thousands of camels”. BBC News (2020年1月8日).
* ”Australia’s hellish heat wave and wildfires, explained”. VOX(2020年1月6日).
* ””Australia is Burning: Blame the Greens and the Arsonists”.MISH TALK( 2020年1月9日).
* ”WWF expresses its serious concern about the spread of fires in the Amazon”. WWF(2019年8月22日).
* ”Australia’s wildfire crisis key numbers behind the disaster”. The Economic Times(2020年1月4日).
* ”多久のボタ山で地質調査 県と市が鎮火、崩落防止策検討へ”. 佐賀新聞LiVE(2019年10月9日).
* ”アマゾン火災が3割増 19年、温暖化に懸念”. 産経フォト(2020年1月10日).
* ”米大統領、カリフォルニア山火事への援助控えると警告 知事の批判受け”. AFPBB News (2019年11月14日).