粗大ゴミ置き場に家具が捨てられているのを見て、”まだ綺麗なのにもったいないな…”と思ったことはありませんか?
日々の生活に欠かすことのできない家具は、安価で買える量販店の躍進やインターネットサイトで手軽で購入出来るようになったのと同時に、最後まで使い切ることなく気軽に買い替える人が多くなってきました。
今回は、そんな家具業界に一石を投じ、この世に一つだけの「捨てられない家具」を生産する株式会社ユアニチャーの代表取締役 和田直希さんにインタビューさせていただきました。
確かな技術力と家具というマーケット市場が生み出したもの
———この事業を立ち上げたきっかけを教えてください。
僕は元々インドネシアで家具や建具など、木材を使った工業製品を作るOEM事業をしていました。 簡単に言うと、家具量販店の下請けの工場のような感じです。年間で2万tほど木材を購入して家具を生産していました。
家具を年間何十万個も作っていたのですが、それが2~3年後に粗大ごみで捨てられている光景をよく目にしていました。
心を込めて作った僕らの家具が簡単に捨てられていく…この現状を目の当たりにした時、本当に辛かったです。受託生産を100%辞めて「今の時代に合った家具メーカーを作ろう」と決意しました。
今やっている「オンラインでできるカスタマイズの家具ブランド」というコンセプトで事業を再スタートしたのは、技術的課題やニーズがあったというより「捨てられない家具を作りたいな」と思ったのがきっかけです。
———なぜ、インドネシアで家具を作る事業をはじめたのですか?
僕は18歳で自分の会社を作り経営していたのですが、元々インドネシアで事業をやっていた叔父が、肝臓の病気になってしまったことがきっかけです。後継者がいなかったので、継いでくれないかと頼まれました。そして、僕がやっていた事業を売って叔父の会社を買い、今に繋がっています。
———御社の強み/他社との違いはなんでしょうか?
僕ら会社の強みはシステム技術力だと思います。
お客様がサイズや色を選んで、クリックした時点で自動的に計算される=選んだ時点で図面が自動的に出来上がっているということです。お客様がカートに入れるという時点で、できた図面が自動的に工場に送られて、工場で自動的に出力され、家具が作られるというシステムです。
そして、通常店舗だと2色程しか選べないところを僕らのシステムでは13色近く選ぶことが出来ます。
家具をネットでカスタマイズして購入できる。このような技術を作ったことで、気に入った家具がなかなか見つからない等の消費者が持つ課題も解決できるというところもあり、お客様にも、僕らの会社にも、環境にも三方良しのサービスができたかなと思っています。
———事業を始めて、嬉しかったことや、やりがいを感じたことはなんですか?
大々的なPRをしているわけではないのですが、サービスの本質的なところがお客様にしっかり伝わって、共感を得て購入して頂いているのがすごく嬉しいです。
僕らはインドネシアで生産しているので、このコロナ禍で納品までにとても時間がかかっているのですが、今も信じられない数のオーダーを頂いています。単純に似たようなサイズの家具が欲しいのであれば、近くの家具屋にいけば買えると思うのですが、“ユアニチャーの概念が大好きなので、もちろん待ちます”って言ってくれる方がたくさんいて、そういう声を聴くと本当に嬉しいし、モチベーションになっています。
続けるために一番必要なのは、変わり続けること
———御社のSGDsの取り組みについて教えてください。
SDGsを意識した経営ということは行っていませんが、ユアニチャーを立ち上げた際のコンセプトの一つでもある「捨てられない家具を作る」はSDGsの目標でいう#12「つくる責任つかう責任」に繋がるものと考えています。
また工場がインドネシアにあることに加え、他にも僕自身が海外で展開している事業もあるため、日本人以外のメンバーと仕事をする機会が多くあります。特に海外ではジェンダーレスの考えは日本よりも広まっている地域もあり、SDGsの目標#5「ジェンダー平等を実現しよう」についても意識する部分が多くあると思います。
そして、僕らは大量の木を使う商売をしていますので、利用する木材はPEFC(森林認証)をとった違法伐採が行われていないものを選んだりする配慮ももちろん行っています。これは#15「陸の豊かさを守ろう」にしっかり貢献できているのではないかと思います。
———SDGsに関して、他注目していることはありますか?
SDGsの17の目標を眺めて#11「住み続けられる街づくりを」について思ったことがあります。
僕の地元の近くに、千里ニュータウンというところがあります。高度経済成長期に開発された街で、昔は若者がたくさんいて活気がある街だったのに、今はショッピングモールも潰れてどんどん元気がなくなっています。
その光景を見て、街を作って土地や建物を売り切ることが終わりではなく、新しい人を流入させるためにお金を投資したり、新しい施設を誘致したり、街も変化し続けなければ持続できないと思いました。
街だけではなく、ビジネスも、人間関係も、恋愛でも、持続していくためには、変わり続けることが大切だなと強く感じました。
ユアニチャーとは別事業になりますが、僕はインドネシアでインドネシア共和国第5代大統領のメガワティ氏と一緒に街づくりをしています。街を作ってその街の繁栄を持続するには、SDGsの要素が全部必要だと思っています。
———これから御社で取り組みたい、社会課題やテーマはおありですか?
地方のモノづくりを続けていけるような仕組みを作っていきたいなと思っています。一つの場所で生産して、それを配送するというのはコスト的に難しいことが多いと思いますが、僕らのもっている技術とノウハウを使って、地方創生とまでは行きませんが、地方の産業を発展させるような活動をしていきたいなと思っています。
まずは、身近な人を大切に
———昨今のコロナウイルスや地震や天災など予想できない猛威が社会を襲っていますが、こういった不安定な時代を生き抜くうえで大切なことはどんなことだとお考えでしょうか。
僕は「まずは、身近な人を大切にしたい!」と思っています。それは例えば、家族だったり、友人だったり、従業員だったり…。当たり前なことなのですが、身の周りの人を大切にして、お互いを助け合えるような関係を築くことが大切だと思っています。
何かに憑りつかれたように仕事をすることがあまり好きじゃなくて。自分自身が完璧な人間ではないので、質の高いコミュニティーにしっかり身を置いて、自分を助けてくれるような人が周りにいることが大切かなと思います。
僕はビジネスするときに「なくならないことしかしない」ようにしていますので、そのお陰かコロナ禍でも大きな影響がなかったように思います。