就職促進給付とは?受給条件や申請方法をわかりやすく解説!
雇用保険には、失業中の生活を心配しないで新しい仕事を探せるようにさまざまな手当が用意されており、就職促進給付もそのひとつです。
この記事では、就職促進給付とは何かを解説し、その受給条件や申請方法をわかりやすく紹介しています。
再就職をしたときの手当について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
就職促進給付とは何か
就職促進給付の種類
各手当の受給条件と申請方法
目次
就職促進給付とは
就職促進給付とは、雇用保険における失業等給付のひとつで、早期再就職の促進を目的とした給付金です。
基本手当(失業手当)の受給資格や受給実績があることが前提で、再就職の形態に応じて手当が支給されます。
つまり、受給の基本的な流れは「退職 → 基本手当を受給しながら転職活動 → 再就職できたら就業促進給付」となります。
就業促進給付がないと、「基本手当をできるだけもらった方が得では?」と考えてなかなか転職しない人も出てくるでしょう。そのようなことが起きないために、就業促進給付には再就職したあとに基本手当の未支給分を補填する意味合いもあります。
就職促進給付の種類
就職促進給付で主に支給されるのは就業促進手当と呼ばれるもので、就業促進手当は再就職の形態に応じて「再就職手当」「就業促進定着手当」「就業手当」「常用就職支度手当」の4種類に分かれます。
ここでは、それぞれの手当の違いを解説し、受給条件と申請方法についてご紹介していきます。
就職促進給付①:再就職手当
・もっとも一般的な就職促進給付
・平均支給額は約40万円
・早く再就職するほど多くもらえる
再就職手当は、雇用保険を受給した人が、再就職先を決めたり開業したりする場合にもらえる手当です。
令和3年度 雇用保険事業年報によると、再就職手当は約35.6万人に支給されており、支給総額は約1,433億円、つまり1人あたりに平均約40万円支給されていることになります。
また、再就職手当は「基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率」で支給額が計算され、早く再就職するほど多くもらえるのが特徴です。
再就職手当の受給条件
- 原則として、雇用保険の被保険者になっている
- 基本手当の支給残日数が1/3以上
- 離職前の事業主に再び雇用されたものではない
- 1年を超えて勤務することが確実
- 求職の申込より前に再就職先に内定していない
- 待機期間終了後の就職である
- (※3ヶ月の給付制限がある場合)待機期間満了後1ヶ月間は、ハローワークまたは職業紹介事業者(民間含む)の紹介での再就職である
- 再就職手当または常用就職支度手当を3年以内に受給していない
再就職手当を受給するためには、以上の8つの条件を全て満たした上で手続きを行う必要があります。
なお、ハローワークが再就職手当の支給の調査を行うときに、再就職先の事業所を退職していると再就職手当を受給できません。
再就職手当の申請方法
- ステップ1:再就職決定後、必要な書類をハローワークに提出(転職翌日から1カ月以内)
- ステップ2:再就職手当支給申請書をハローワークに提出
- ステップ3:ハローワークの審査後、問題がなければ支給
再就職手当を申請するには、転職日の翌日から1カ月以内に「採用証明書」「失業認定申告書」「雇用保険受給資格者証」をハローワークに提出する必要があります。
その後、ハローワークで審査が行われ、審査で問題がなければ約1カ月後に再就職手当が支給されます。
再就職手当について詳しく知りたい方は、『再就職手当はいつ、いくらもらえる?受給条件や申請方法を解説!』を参考にしてください。
就職促進給付②:就業促進定着手当
・再就職後に離職前の賃金を下回った場合に支給
・平均支給額は約18万円
・再就職から6ヶ月後に申請可能
就業促進定着手当とは、再就職後の賃金が、離職前の賃金より低い場合に支給される手当です。
令和3年度 雇用保険事業年報によると、就業促進定着手当は約10.4万人に支給されており、支給総額は約186億円、つまり1人あたりに平均約18万円支給されていることになります。
なお、就業促進定着手当の申請は、再就職から6ヶ月後に可能となります。
就業促進定着手当の受給条件
- 再就職手当を受給済み
- 再就職日から同じ事業主に6か月以上、雇用保険の被保険者として雇用され続けている
- 再就職後6か月間の賃金の1日分の額が、離職前の賃金日額を下回る
就業促進定着手当を受給するためには、以上の3つの条件を全て満たした上で手続きを行う必要があります。
再就職後の6か月間の賃金の1日分の額は「再就職後6ヶ月間の賃金の合計額 ÷ 180」で受給額が計算され、これが離職前の賃金日額を下回らないと受給できません。
なお、起業した場合にも就業促進定着手当は受けられないので注意しましょう。
就業促進定着手当の申請方法
再就職した日から6ヶ月経過した日の翌日から2ヶ月間のうちに、再就職手当の申請を行なったハローワークに以下の①〜④の書類を提出する(郵送可)
① 就業促進定着手当支給申請書
② 雇用保険受給資格者証
③ 就職日から6ヶ月間の出勤簿の写し
④ 就職日から6ヶ月間の給与明細または賃金台帳の写し
就業促進定着手当の申請は、特に申請期間に注意しましょう。
再就職した日から6ヶ月経過した日の翌日から2ヶ月間のうちに書類を提出する必要があり、注意していないと「気づいたら申請期間が終わっていた」ということにもなりかねません。
就職促進給付③:就業手当
・再就職手当の支給対象とならない場合に支給
・平均支給額は約61万円
就業手当とは、「再就職手当」の支給対象とならない常用雇用以外で就業した場合に支給される手当です。
常用雇用以外とは、アルバイトなど1年を超えない臨時で就職した場合、日々雇用される単発的な仕事に就いた場合、業務委託、業務請負で就労した場合などのことを指しています。
令和3年度 雇用保険事業年報によると、就業促進定着手当は798人に支給されており、支給総額は約4.9億円、つまり1人あたりに平均約61万円支給されていることになります。
支給額は「就業日×30%×基本手当日額」で計算され、1日当たりの上限を1,887円(60歳以上65歳未満は1,525円)として支給されます。
就業手当の受給条件
- 基本手当の受給資格がある
- 再就職手当の支給対象とならない形態での就業
就業手当の申請方法
失業の認定に合わせて4週間に1回、前回の認定日から今回の認定日の前日までの各日について「就業手当支給申請書」に記入し受給資格者証と再就職の事実を証明する資料を添付してハローワークに申請します。
就職促進給付④:常用就職支度手当
・就職困難者が1年以上の雇用を見込める仕事に再就職したときに支給
・平均支給額は約16万円
常用就職支度手当とは、就職困難な方が1年以上の雇用を見込める仕事に再就職したときに支給される手当です。
中高齢者や身体に障害のある人などは、就職が決まるまでには時間がかかり、再就職が決まっても基本手当の支給残日数が少ないため、再就職手当を受けられないことがあります。そのような方々の常用就職を促進するために、設けられている給付金です。
令和3年度 雇用保険事業年報によると、就業促進定着手当は3,480人に支給されており、支給総額は約5.6億円、つまり1人あたりに平均約16万円支給されていることになります。
支給額は「90(※)×40%×基本手当日額」で計算されます。
(※ 基本手当の支給残日数が90日未満の場合には、支給残日数に相当する数。その数が45以下の場合は一律45として計算します。)
常用就職支度手当の受給条件
- 基本手当の受給資格がある
- 高年齢受給資格者、特例受給資格者又は日雇受給資格者のうち、障害があるなど就職困難者である
- 1年を超えて勤務することが確実
- ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介での再就職である
- 再就職手当を受けられない
- 離職前の事業主に再び雇用されたものではない
- 待機期間や給付制限期間後の就職である
- 再就職手当または常用就職支度手当を3年以内に受給していない
常用就職支度手当の申請方法
就職した日の翌日から1ヶ月以内に「常用就職支度手当支給申請書」に必要事項を記載して、「雇用保険受給資格者証」などを添付してハローワークに申請します。
その他の就職促進給付
就職促進給付には、他にも「移転費」「広域求職活動費」「短期訓練受講費」「求職活動関係役務利用費」があります。
それぞれの支給内容について解説していきます。
移転費
移転費とは、受給資格者等がハローワークの紹介した職業につくため等のときに、その住所・居所を変更する場合であって、ハローワークが必要と認めたときに支給されるものです。
移転費には「鉄道費」「船賃」「車賃」「移転料」「着後手当」の5種類があり、新たな住所地までの区間の順路によって計算した額が支給されます。
移転費の受給条件
- 雇用保険の受給資格者等である
- 待機期間または給付制限期間が経過した後に就職し、または訓練等を受けた場合で、管轄の公共職業安定所長が住所または居所を変更する必要があると認めたとき
- 再就職先の事業主から移転に要する費用が支給されていないとき、または支給された額が移転費の額に満たないとき
- 再就職先の雇用期間が1年未満でない
移転費の申請方法
移転の日の翌日から起算して1か月以内に住居所管轄のハローワークへ、「移転費支給申請書」に「雇用保険受給資格者証」などを添付して提出しましょう。
広域求職活動費
広域求職活動費とは、受給資格者等がハローワークの紹介により遠隔地にある求人事業所を訪問して求人者と面接等をした場合支払われるもので、交通費及び宿泊料が支給されるものです。
広域求職活動費には「鉄道費」「船賃」「車賃」「宿泊料」の4種類があり、住居所管轄のハローワークから訪問先事業所を管轄するハローワークまでの順路によって、支給内容が決定されます。
広域求職活動費の受給条件
- 雇用保険の受給資格者等である
- 待期の期間がまたは給付制限の期間が経過した後に広域求職活動を開始
- ハローワークに紹介された求人が、その受給資格者の方に適当と認められる管轄区域外に所在する事業所のもので、その事業所の常用求人である
- 住居所管轄のハローワークから、訪問する求人事業所の所在地を管轄するハローワークの間の距離(往復)が、交通費計算の基礎となる鉄道等の距離で200キロメートル以上ある
- 広域求職活動に要する費用が訪問先の事業所より支給されないとき、または支給された額が広域求職活動費の額に満たないとき
広域求職活動費の申請方法
広域求職活動を終了した日の翌日から10日以内に、住居所管轄のハローワークへ、「求職活動支援費(広域求職活動費)支給申請書」に「雇用保険受給資格者証」「広域求職活動指示書及び広域求職活動面接等訪問証明書」を添付して提出しましょう。
短期訓練受講費
短期訓練受講費とは、ハローワークの職業指導により再就職のために必要な職業に関する教育訓練を受け、その訓練を修了した場合に、本人が訓練受講のために支払った教育訓練経費の2割が上限を10万円として支給される制度です。
短期訓練受講費の受給条件
- 教育訓練を受講する前に、その訓練を受けるためのハローワークの職業指導を受けた
- 職業指導を受ける日において、受給資格者等である
- 待期の期間終了後に教育訓練の受講を開始した
短期訓練受講費の申請方法
受講開始前
短期訓練の受講開始前に、以下①~③の手続きを行った上で教育訓練を受講
① 短期訓練受講費支給要件照会票の提出
② 短期訓練受講費支給要件回答書の受理
③ ハローワークによる受講指導
受講修了後
「求職活動支援費(短期訓練受講費)支給申請書」に必要書類を添付して、教育訓練修了日の翌日から1か月以内に住居所管轄のハローワークへ提出
求職活動関係役務利用費
求職活動関係役務利用費とは、受給資格者等が求人者との面接等をしたり教育訓練を受講したりするするために、子について保育等サービスを利用した場合に、保育等サービスの利用のために本人が負担した費用の一部が支給される制度です。
求職活動関係役務利用費の受給条件
- 保育等サービスを利用した日において受給資格者等である
- 待期期間終了後に保育等サービスを利用した
- 以下の対象となる面接等、教育訓練に該当する
(1)求人者との面接等
(2)教育訓練の受講 - 以下の対象となる子に該当する
(1)法律上の親子関係に基づく子
(2)特別養子縁組を成立させるために監護を受けている者
(3)養子縁組里親に委託されている者、養育里親に委託されている者
求職活動関係役務利用費の申請方法
「求職活動支援費(求職活動関係役務利用費)支給申請書」に、下記の中から必要な書類を添付して、失業の認定日に住居所管轄のハローワークへ提出
・受給資格者証等
・保育等サービス費用に係る領収書
・保育等サービス利用証明書(保育等サービス事業者が発行)
・返還金明細書(保育等サービス事業者が発行)
・面接等求職活動証明書等の求人者との面接等を行ったことを証明する書類
・訓練等受講証明書等の訓練を受講したことを証明する書類
・対象となる子の氏名、本人との続柄を確認できる住民票記載事項証明書等
・保育等サービス利用費を第三者から補助された場合は、その額を証明する書類
まとめ
この記事では、教育訓練給付とは何かを解説し、その受給条件や申請方法をわかりやすく紹介してきました。
- 就職促進給付とは、雇用保険における失業等給付のひとつで、早期再就職の促進を目的とした給付金
- 再就職の形態に応じて主に「再就職手当」「就業促進定着手当」「就業手当」「常用就職支度手当」の4種類に分かれる
- いずれも雇用保険の基本手当(失業手当)の受給資格や受給実績が前提
再就職を目指して活動されている方はぜひ参考にしてください。
雇用保険について詳しく知りたい方は、『雇用保険とは?加入条件や手続き・注意点をわかりやすく解説!』を参考にしてください。