再就職手当はいつ、いくらもらえる?受給条件や申請方法を解説!
再就職手当は「ハローワーク就職祝い金」とも呼ばれ、雇用保険の受給資格者を対象にした手当の一つです。
この記事では、再就職手当はいつ、いくらもらえるのか、その受給条件や申請方法を解説していきます。
自分が再就職手当の対象になるか知りたい方、いくらもらえるのか気になる方はぜひ参考にしてください。
目次
再就職手当とは
再就職手当とは、雇用保険の受給資格を満たしている人が、早期に再就職先を決めたり、開業したりする場合にもらえる手当のことです。
失業手当を受給していて一定の条件を満たして再就職した場合に支給されます。
失業手当と再就職手当の違い
雇用保険関連で受給できるお金として、一般的に知られている失業手当でしょう。
失業手当と再就職手当は、以下のように位置付けが異なります。
- 失業手当:雇用保険の失業等給付の求職者給付のうちの基本手当
- 再就職手当:雇用保険の失業等給付の就職促進給付のうちの就業促進手当
また、支給されるタイミングも異なっており、失業中の生活を支えるために失業手当が支給され、早期に再就職が実現した場合に再就職手当がさらに支給されます。
失業手当について詳しく知りたい方は、『失業手当はいくら、いつもらえる?受給条件や申請方法を解説!』を参考にしてください。
再就職手当のメリット
失業手当の受給が決まったとき「満額受け取らなければもったいない」と考える人もいるかもしれませんが、実はそうではありません。
再就職手当は、再就職の時期が早いほどもらえる金額も多くなる仕組みになっています。
つまり早期に再就職できれば、再就職先からの給料と再就職手当で、失業手当を満額受け取ってから転職するよりも多くの収入を得られる可能性があります。
ハローワークでは、早期再就職のために様々なサービスが提供されているので、これらも活用することで1日でも早い再就職を目指すと良いでしょう。
就業促進定着手当が支給される場合も
再就職手当の支給を受けた場合に、一定の条件を満たせば就業促進定着手当が支給されます。
【就業促進定着手当の受給条件】
- 条件1:再就職手当の支給を受けている
- 条件2:再就職の日から同じ会社に6ヶ月以上、雇用保険の被保険者として雇用されている
- 条件3:再就職後6ヶ月間の賃金日額が、離職前の賃金日額を下回る
就業促進定着手当は、再就職によって賃金が減少した人の減少分を一部補填する形となっており、1人あたりの平均支給額は約18万円(令和3年度)です。
申請期間は再就職した日から6ヶ月経過した日の翌日から2ヶ月間となってます。
該当する方は再就職手当の申請を行ったハローワークで忘れずに申請しましょう。
再就職手当の受給条件
再就職手当を受給するためには、以下の8つの条件を全て満たした上で手続きを行う必要があります。
1. 失業手当の受給手続き後、7日間の待機期間満了後の再就職である
失業手当の受給手続きをしてから7日間の待機期間中の再就職となった場合、再就職手当の支給が認められません。
(仕事などをして失業の状態でなかった日や、失業の認定を受けていない日は待機期間に含まない)
2. 失業手当の支給残日数が1/3以上残っている
失業手当の支給残日数が所定給付日数の1/3を下回っている場合、再就職手当の受給資格はありません。
(支給残日数の基準は就職日の前日まで)
3. 前職と密接な関わりがない会社に再就職している
前職とはまったく関係のない会社に転職した場合のみ、再就職手当は支給されます。
離職前の会社はもちろんのこと、資本・資金・人事・取引等で離職前の会社と密接な関係にある会社に転職した場合にも、再就職手当の支給は認められません。
4. ハローワークまたは人材紹介会社経由で決定した再就職先である
自己都合などで離職して失業手当の給付制限を受けた場合、待期満了後1か月間はハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職する必要があります。
5. 再就職先で1年を超えて勤務することが確実である
再就職しても1年以内に退職する可能性がある場合は、再就職手当の支給が認められません。例えば派遣社員の場合、1年以下の派遣契約は支給対象外ですが、契約更新の見込みがある場合は再就職手当の支給対象となります。
6. 雇用保険に加入している
原則として再就職先での雇用保険への加入が必要です。
7. 過去3年以内に、再就職手当または常用就職支度手当を受給していない
過去3年以内に、再就職手当を含む就職支度手当の支給を受けた場合は、再就職手当の支給が認められません。常用就職支度手当とは、さまざまな理由で就職が困難な人が就職した際に支払われる手当のことです。
8. 受給資格決定前に、再就職先での採用が内定していない
失業手当の申請より前に採用が内定している場合は、受給資格がありません。例えば、前職を退職した時点ですでに転職先が決まっている場合、受給対象外となります。
再就職手当を申し込む前に、自分がこれらの条件を満たしているか必ず確認しておきましょう。
特に「失業手当の支給残日数が1/3以上残っている」という条件を満たせずに、再就職手当受け取れないケースがあります。
退職理由により失業手当の給付日数が異なるため、自分がもらっている失業手当の日数や給付開始日をきちんと把握しておきましょう。
再就職手当はいくらもらえる?
再就職手当でもらえる金額は以下の式で計算することができます。
再就職手当の受給額 = 基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率
再就職手当では失業手当の支給が前提となっているので、失業手当で使用される『賃金日額』『給付日数』を使いつつ算出されます。
ここでは、必要なそれぞれの数値の計算方法を解説していきます。
厚生労働省によって公表されている令和3年度 雇用保険事業年報によると、再就職手当は約35.6万人に支給されており、支給総額は約1,433億円となっています。
つまり、1人あたりの平均支給額は約40万円となります。
ステップ1:基本手当日額を計算する
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(50〜80%)※
※給付率は以下の通り
賃金日額:2,657円〜5,029円 → 給付率:80%
賃金日額:5,030円〜12,379円*1 → 給付率:50〜80%*2
賃金日額:12,380円以上*1 → 給付率:50%*3
*1 離職時の年齢が60〜64歳の場合は11,120円
*2 離職時の年齢が60〜64歳の場合は80〜45%
*3 離職時の年齢が60〜64歳の場合は45%
離職時の年齢 | 上限 | 下限 |
---|---|---|
29歳以下 | 6,835円 | 2,125円 |
30〜44歳 | 7,595円 | |
45〜59歳 | 8,355円 | |
60〜64歳 | 7,177円 |
基本手当日額は、賃金日額に50〜80%の給付率を掛けて算出します。
ただし、上記の計算式で求めた金額が基本手当日額の上限を上回る場合には上限額が、下限を下回る場合には下限額が基本手当日額となります。
賃金日額の計算方法
賃金日額 = 離職前6ヶ月間に支払われた給与※の合計額 ÷ 180日
※給与には各種手当(通勤手当や役職手当など)は含まれるが、賞与(ボーナス)は含まれない
離職時の年齢 | 上限 | 下限 |
---|---|---|
29歳以下 | 13,670円 | 2,657円 |
30〜44歳 | 15,190円 | |
45〜59歳 | 16,710円 | |
60〜64歳 | 15,950円 |
賃金日額は、離職前半年分の給与の平均額から算出します。
ただし、基本手当日額にも上記のように上限と下限が存在します。
ステップ2:支給残日数を計算する
離職時の年齢 | 雇用保険の被保険者期間 | ||
---|---|---|---|
10年未満 | 10〜19年 | 20年以上 | |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
離職時の年齢 | 雇用保険の被保険者期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1〜4年 | 5〜9年 | 10年〜19年 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30〜34歳 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35〜44歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45〜59歳 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
失業手当の給付日数から失業手当を受け取った日数を引いたものが、支給残日数です。
就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数が支給残日数となり、支給残日数が多いほど手当の額が高くなります。
つまり、再就職手当のみを考えると早く再就職するほど得ということになります。
ステップ3:給付率を計算する
支給残日数が給付日数の 3分の2以上ある場合 | 給付率 70% |
支給残日数が給付日数の 3分の1以上ある場合 | 給付率 60 % |
給付率は、再就職した時点の基本手当の支給残日数によって、60%か70%のいずれかとなります。
例えば、失業手当の給付日数が120日の場合、支給残日数が80日〜120日の場合は70%、40日〜79日の場合60%です。
失業手当の支給残日数が所定給付日数の1/3を下回っている場合、再就職手当の受給資格がないので注意しましょう。
再就職手当はいつもらえる?
再就職手当はいつもらえるのでしょうか?
結論としては、「再就職が決まってハローワークに報告してから約1カ月後」です。
さらに詳しく言うと、ハローワークへの申請内容が問題なかった場合に届く再就職手当支給決定通知書を受け取ってから1週間以内で振り込まれます。
再就職日や報告、振込先の金融機関の営業日などによって受け取り時期が延びる可能性があるため、早く支給を受けたい方は早めに報告をしておきましょう。
再就職手当の申請方法
ステップ1:再就職が決まったら必要な書類をハローワークに提出
再就職手当の申請にあたり、まずは必要な以下の書類をハローワークに提出しましょう。
・採用証明書
採用証明書は、失業手当の申請時にハローワークから渡される『雇用保険受給資格者のしおり』に同封されています。
万が一紛失した場合は、ハローワークのホームページからダウンロードできます。
・失業認定申告書
失業認定申告書は、雇用保険説明会で雇用保険受給資格者証と一緒に渡される書類です。
・雇用保険受給資格者証
雇用保険受給資格者証は雇用保険説明会で渡される書類であり、失業手当を受け取る資格を証明するものです。
雇用保険受給資格者証が見当たらない場合は、ハローワークに再発行してもらいましょう。
提出は原則として就職または事業を開始する日の前日までに行う必要があります。
ステップ2:再就職手当支給申請書をハローワークに提出
ハローワークに書類を提出して再就職手当の支給要件を満たしていると認定された場合、「再就職手当支給申請書」を受け取ることができます。
就職後、転職先に申請書を記入してもらい、ハローワークに提出して申請を行えば手続きは完了です。
雇用保険施行規則では、再就職手当の支給申請期限を、転職日の翌日から1カ月以内と定めています。
ただし、期限に間に合わなかった場合でも時効が完成するまでの2年以内なら申請を受け付けてもらえるので、就職直後で仕事が忙しい人も慌てる必要はありません。
ステップ3:ハローワークの審査後、問題がなければ支給
申請書の内容に基づいてハローワークによって審査が行われます。
審査は再就職手当の受給条件に合致するかという視点で行われるので、前述の8つの条件を全て満たしていれば問題ありません。
審査で問題がなければ、ハローワークから再就職手当支給決定通知書が届くので、受け取ってから1週間以内には所定の口座に再就職手当が振り込まれるでしょう。
再就職手当を受け取るための注意点
派遣社員は再就職手当を受け取れない恐れがある
派遣社員やパート、アルバイトとして再就職が決まった場合、再就職手当を受け取れない恐れがあります。
理由は、受給条件である「再就職先で1年を超えて勤務することが確実である」を証明しにくいためです。
ただし、1年を超えて勤務できる可能性があることを証明できれば、受給を認められるケースもあります。
正社員以外の雇用形態で転職する場合は、契約書などで勤務期間を確かめましょう。
待機期間中に再就職すると再就職手当がもらえない
待機期間とは、退職してから最初にハローワークで手続きした日から7日間のことで、この待機期間に再就職すると再就職手当がもらえません。
理由は、再就職日(働き始める日)が待機期間を過ぎていることが再就職手当を受給する条件だからです。
ただし、内定日は待機期間の7日間であっても、再就職手当が支給されます。
再就職手当の申請を忘れた場合も諦めない
再就職手当の申請は、原則として再就職後1ヶ月以内に行う必要がありますが、申請期限を過ぎた場合でも就職日の翌日から2年間は申請することが可能です。
また、就業促進定着手当についても2年間は申請可能となっており、それぞれの時効の起算点と終点についは以下の通り定められています。
時効の起算点と終点 | |
---|---|
再就職手当 | 1年を超えて引き続き雇用されることが確実と認められる職業に就いた日の 翌日から起算して2年を経過する日 |
就業促進定着手当 | 再就職手当が支給される就職日の翌日から起算して6ヶ月を超えて雇用された日の 翌日から起算して2年を経過する日 |
従って、申請期限が終わったからといって諦めないようにしましょう。
なお、期間内に申請ができないことが確実な場合は、事前にハローワークへ連絡しておくと対応として丁寧です。
厚生労働省のページからハローワークの住所や電話番号を探すことができるので、ご自身の住所を管轄するハローワークを探して連絡しましょう。
いつ、いくらもらえるか把握して再就職手当を有効活用しよう
この記事では、再就職手当はいくら、いつもらえるのか、その受給条件や申請方法を解説してきました。
【再就職手当のまとめ】
- 再就職手当の平均支給額は約40万円
- 再就職の時期が早いほどもらえる金額は多くなる
- 支給タイミングは再就職が決まってハローワークに報告してから約1カ月後
再就職手当は、再就職時に一定の条件を満たすことで誰でも受け取ることができます。
条件を満たす人はもらわないと損なので、条件をしっかりと確認し確実に手当がもらえるように申請を行いましょう。
なお、再就職手当は就職促進給付の一種です。
就職促進給付の全体像について詳しく知りたい方は、『就職促進給付とは?受給条件や申請方法をわかりやすく解説!』を参考にしてください。