傷病手当はいくらもらえる?受給条件や申請方法を解説!
失業手当を支給されることが決まっても、そこで病気やケガを負ってしまうと職業につくことが難しくなります。
このような時に利用できる制度として、雇用保険の傷病手当があります。
この記事では、雇用保険の傷病手当はいくらもらえるのか、その受給条件や申請方法を解説していきます。
傷病手当の受給条件
いくら傷病手当がもらえるか
傷病手当の申請方法
目次
傷病手当とは
雇用保険の傷病手当とは、受給資格者が失業後、ハローワークで求職の申し込みを行った後に、15日以上引き続いて病気やケガのために職業につくことができない場合に支給される手当です。
病気やケガの続いた15日目以降に支給され、14日以内の場合は基本手当(いわゆる失業手当)が支給されます。
雇用保険の傷病手当と健康保険の傷病手当金の違い
「雇用保険の傷病手当」と似ているものに「健康保険の傷病手当金」があります。
「雇用保険の傷病手当」は、失業後ハローワークにて求職の申し込みをした後に、病気や怪我などで就業できない場合に受け取るお金です。
一方「健康保険の傷病手当金」は社会保険(健康保険)の被保険者が在職中に仕事外のの病気や怪我が理由で働けなくなった時に受け取れる手当金です。
したがって、現在失業している場合は「雇用保険の傷病手当」、雇用され社会保険に加入している場合は「健康保険の傷病手当金」を受け取ることになります。
なお、「雇用保険の傷病手当」と「健康保険の傷病手当金」を同時に受給することはできません。
「健康保険の傷病手当金」について詳しく知りたい方は、『傷病手当金はいくら、いつもらえる?受給条件や申請方法を解説!』を参考にしてください。
傷病手当の受給条件
傷病手当を受給するためには、以下の条件を全て満たした上で手続きを行う必要があります。
1. 基本手当の受給条件を満たしている
基本手当の受給条件は以下のとおりで、これらの条件をすべて満たす必要があります。
・離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上あること
・住んでいる地域のハローワークに求職の申し込みをしていること
・就職する意思と働ける能力があるにも関わらず失業状態にあること
2. 病気やケガが理由で15日以上、仕事に就くことができない
14日以内の場合は基本手当(いわゆる失業手当)の支給対象となります。
3. 病気やケガが求職の申し込み後に発生している
ハローワークへの求職の申し込み前に発生した病気やケガは、傷病手当の支給対象になりません。
基本手当の受給条件については、自己都合と会社都合の退職によって被保険者期間の条件が異なります。
詳しくは『失業手当はいくら、いつもらえる?受給条件や申請方法を解説!』を参考にしてください。
傷病手当はいくらもらえる?
傷病手当を受け取れる場合、いくらもらえるのでしょうか?
結論としては、基本手当の日額と同額でおおよそ離職前の給与の50〜80%をもらうことができ、離職前の給与水準が低い人ほど給付率が高くなります。
ここでは詳しい計算方法を解説していきます。
ステップ1:賃金日額を計算する
賃金日額 = 離職前6ヶ月間に支払われた給与※の合計額 ÷ 180日
※給与には各種手当(通勤手当や役職手当など)は含まれるが、賞与(ボーナス)は含まれない
離職時の年齢 | 上限 | 下限 |
---|---|---|
29歳以下 | 13,670円 | 2,657円 |
30〜44歳 | 15,190円 | |
45〜59歳 | 16,710円 | |
60〜64歳 | 15,950円 |
賃金日額は、離職前半年分の給与の平均額から算出します。
ただし、上記の計算式で求めた金額が賃金日額の上限を上回る場合には上限額が、下限を下回る場合には下限額が賃金日額となります。
ステップ2:基本手当日額を計算する
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(50〜80%)※
※給付率は以下の通り
賃金日額:2,657円〜5,029円 → 給付率:80%
賃金日額:5,030円〜12,379円*1 → 給付率:50〜80%*2
賃金日額:12,380円以上*1 → 給付率:50%*3
*1 離職時の年齢が60〜64歳の場合は11,120円
*2 離職時の年齢が60〜64歳の場合は80〜45%
*3 離職時の年齢が60〜64歳の場合は45%
離職時の年齢 | 上限 | 下限 |
---|---|---|
29歳以下 | 6,835円 | 2,125円 |
30〜44歳 | 7,595円 | |
45〜59歳 | 8,355円 | |
60〜64歳 | 7,177円 |
基本手当日額は、先ほど計算した賃金日額に50〜80%の給付率を掛けて算出します。
ただし、基本手当日額にも上記のように上限と下限が存在します。
ステップ3:傷病手当の総支給額を計算する
傷病手当の総支給額 = 基本手当日額 × 給付日数※
※給付日数は病気やケガで働けない期間
※給付日数の上限は「基本手当の給付日数」から「すでに基本手当が支給された日数」を差し引いた日数
離職時の年齢 | 雇用保険の被保険者期間 | ||
---|---|---|---|
10年未満 | 10〜19年 | 20年以上 | |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
離職時の年齢 | 雇用保険の被保険者期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1〜4年 | 5〜9年 | 10年〜19年 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30〜34歳 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35〜44歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45〜59歳 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
補足:傷病手当の受給期間について
傷病手当の受給期間は、「基本手当の給付日数」から「すでに基本手当が支給された日数」を差し引いた日数を上限として、「病気などのために働けない期間」となります。
その期間によって基本手当が支給されるのか、傷病手当が支給されるのかが変わるので、その内容を解説していきます。
※傷病手当を受け取るためには基本手当の受給資格が必要です。
以下の期間は基本手当の受給資格がなく傷病手当も支給されません。
・待期期間(7日)
・自己都合退職等の場合に設けられる給付制限期間
病気やケガで働けない期間が15日未満 = 基本手当
病気やケガで働けない期間が15日未満の場合、雇用保険の基本手当を受給することになります。
傷病手当を受け取れるのは、ハローワークで求職の申し込みを行った後に15日以上引き続いて病気やケガのために職業につくことができない場合です。
したがって、15日未満の場合はそのまま基本手当を受給することになります。
病気やケガで働けない期間が15日〜30日未満 = 傷病手当
病気やケガで働けない期間が15日以上30日未満の場合、雇用保険の傷病手当を受給することができます。
(14日まで基本手当を受け取っていた場合、申請をすれば15日目以降で傷病手当に切り替えることができます。)
病気やケガで働けない期間が30日以上 = 基本手当(受給期間を最大4年間まで延長)
病気・ケガで働けない期間が30日以上の場合、次のいずれかを選択することができます。
・傷病手当を受け取る
・傷病手当の受給はせずに基本手当の受給期間を延長する(最大4年間まで)
病気やケガで働けない期間が30日以上の場合、働けない期間分の基本手当を当初の基本手当の受給期間に加算して延長することができます。
延長は最大3年間まで可能で、離職日の翌日から最大で4年間の基本手当を受給することができます。
傷病手当の申請方法
雇用保険の傷病手当を受給する場合は、職業に就けない理由(病気、ケガなど)がなくなった後の最初の失業認定日までに、管轄のハローワークに「傷病手当支給申請書」を提出して認定を受ける必要があります。
記入する項目は下記の通りです。
1. 申請者
・氏名
・性別
・生年月日
2. 診療担当者の証明
・傷病の名称及びその程度
・初診年月日
・傷病の経過
・傷病のために職業に就くことができなかったと認められる期間
・診療機関の所在地及び名称、診療担当者氏名
3. 支給申請期間
・同一の傷病により受けることのできる給付
・給付を受けることのできる期間
・傷病手当の支給を受けようとする期間
・内職若しくは手伝いをした日、又は収入のあった日、その額等
診療担当者の証明については診療担当者と相談した上で、記入してもらいましょう。
なお、傷病手当支給申請書は本人以外の代理人による提出または郵送で提出しても問題ありません。
まとめ
この記事では、傷病手当はいくらもらえるのか、その受給条件や申請方法を解説してきました。
傷病手当は、基本手当の日額と同額でおおよそ離職前の給与の50〜80%が支払われます。
受給資格者が失業後、ハローワークで求職の申し込みを行った後に、15日以上引き続いて病気やケガのために職業につくことができない場合に支給されるので、該当する方は申請すると良いでしょう。
失業手当について詳しく知りたい方は、『失業手当はいくら、いつもらえる?受給条件や申請方法を解説!』を参考にしてください。