傷病手当金はいくら、いつもらえる?受給条件や申請方法を解説!
社会人として勤務を続けていると、病気やケガで会社を休むこともあるでしょう。
仕事外の理由で病気やケガを負った場合、休んでいる期間で給与が支払われない場合が多いです。
このような時に利用できる制度として、健康保険の傷病手当金があります。
この記事では、健康保険の傷病手当金はいくら、いつもらえるのか、その受給条件や申請方法を解説していきます。
傷病手当金の受給条件
いくら傷病手当金がもらえるか
いつから傷病手当金がもらえるか
目次
傷病手当金とは
傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
出典:傷病手当金 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
なお、任意継続被保険者の方は、傷病手当金は支給されません。
(健康保険法第104条による継続給付の要件を満たしている者は除く。)
傷病手当金とは、被保険者が病気やケガが原因で仕事を休み、その間に給与が受け取れないときに支給される給付金です。
仕事外の理由で病気やケガを負った場合、休んでいる期間で給与が支払われない場合が多いです。
そのようなときでも傷病手当金を受け取ることができれば、お金に対する不安を軽減しながら療養を行うことができます。
傷病手当金のメリット
仕事を休んでいる間は収入の不安が大きくなりますが、傷病手当金を利用すれば休職中の収入の不安を和らげることができます。
回復するために心身共にゆっくり療養に専念できるでしょう。
また、令和4年1月1日より、傷病手当金の支給期間が支給開始日から通算して1年6ヵ月に変わりました。
これまでは支給開始日から最長1年6ヵ月だったので、同じ病気が再発した場合でも受給期間が減る心配がなくなりました。
健康保険の傷病手当金と雇用保険の傷病手当の違い
「健康保険の傷病手当金」と似ているものに「雇用保険の傷病手当」があります。
「健康保険の傷病手当金」は社会保険(健康保険)の被保険者が在職中に仕事外のの病気や怪我が理由で働けなくなった時に受け取れる手当金です。
一方「雇用保険の傷病手当」は、失業後、ハローワークにて求職の申し込みをした後に、病気や怪我などで就業できない場合に受け取るお金です。
したがって、雇用され社会保険に加入している場合は「健康保険の傷病手当金」、現在失業している場合は「雇用保険の傷病手当」を受け取ることになります。
なお、「健康保険の傷病手当金」と「雇用保険の傷病手当」を同時に受給することはできません。
「雇用保険の傷病手当」について詳しく知りたい方は、『傷病手当はいくらもらえる?受給条件や申請方法を解説!』を参考にしてください。
傷病手当金の受給条件
傷病手当金を受給するためには、以下の4つの条件を全て満たした上で手続きを行う必要があります。
1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
健康保険給付として受ける療養に限らず、自費で診療を受けた場合でも、仕事に就くことができないことの証明があるときは支給対象となります。また、自宅療養期間についても支給対象となります。
ただし、業務上・通勤災害によるもの(労災保険の給付対象)や病気と見なされないもの(美容整形など)は支給対象外です。
2. 仕事に就くことができないこと
仕事に就くことができない状態の判定は、療養担当者の意見等をもとに、被保険者の仕事の内容を考慮して判断されます。
3. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。
また、就労時間中に業務外の事由で発生した病気やケガについて仕事に就くことができない状態となった場合には、その日を待期の初日として起算されます。
4. 休業した期間について給与の支払いがないこと
業務外の事由による病気やケガで休業している期間について生活保障を行う制度のため、給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません。
ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません。
傷病手当金を申し込む前に、自分がこれらの条件を満たしているか必ず確認しておきましょう。
傷病手当金はいくらもらえる?
傷病手当金の1日あたり支給額 = 直近1年間の標準報酬月額の平均額の30分の1 × 3分の2
※傷病手当金の支給日数は、支給が始まった日(支給開始日)から支給期間(実際に支給された期間)を通算して最長1年6ヵ月です
①傷病手当金の支給開始日
令和3年2月15日
②標準報酬月額
令和2年3月~8月まで16万円
令和2年9月~令和3年2月まで18万円
③ ②の平均額
(16万円 × 6 + 18万円 × 6) ÷ 12 = 17万円
④ ③の30分の1に相当する額
17万円 ÷ 30 ≒ 5,670円(10円未満 四捨五入)
⑤傷病手当金の1日あたり支給額
5,670円 × 3分の2 = 3,780円(1円未満 四捨五入)
傷病手当金の1日あたりの支給額は、「傷病手当金の支給開始日の属する月以前の直近の協会けんぽの被保険者期間(任意継続の期間を含む)で継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30 分の1に相当する額の3分の2に相当する額」です。
給与や手当が支払われている場合は支給額から差し引かれ、支給額以上の給与や手当が支払われているときはその間不支給となります。
傷病手当金の支給日数は、支給が始まった日から支給期間を通算して最長で1年6ヵ月です。
傷病手当金はいつもらえる?
再就職手当はいつもらえるのでしょうか?
結論としては、「傷病手当金支給申請書を健康保険に提出した後10営業日(約2週間)」で支給されます。
ただし、記入漏れなどの不備がある場合は申請書が返戻されるため、支給までに時間がかかることになります。
早く支給を受けたい場合は、申請書の不備がないようしっかりと確認しておきましょう。
なお、傷病手当金は労務不能であった日ごとにその翌日から2年以内に申請する必要があります。2年を過ぎると、時効により受給できなくなるので注意しましょう。
傷病手当金の申請方法
ステップ1:会社に休職することを伝える
まずは、病気やケガで仕事を休むことを会社に伝えます。
その際は以下のステップで対応を進めましょう。
1. 医療機関を受診して診断書をもらう
不調を感じたら早く医療機関を受診しましょう。休職の必要性については、病状や生活全般の状況を踏まえて医師が判断してくれます。
休職が必要という判断になったら、会社に提出するための診断書を受け取りましょう。診断書の発行は、そのときの症状によって即日行われる場合と一定期間かかる場合があります。
休職期間については、医師と相談して必要な期間を記載してもらいましょう。早く職場に復帰したい気持ちがあるかもしれませんが、一般に精神疾患は回復に時間がかかることが多く、回復しきらないまま仕事に復帰するとその分再発のリスクが高くなります。
2. 会社で休職の手続きを行う
会社に診断書を提出し、休職が必要な理由や治療方針なども含めて説明を行います。
話し合いは会社の上司や人事と行い、休職期間や期間中の給料の有無、会社との連絡方法、有給休暇の使い方などを決めておきましょう。
休職手続き自体は人事労務担当者が主体となって行いますが、事務処理の流れは会社により異なります。
ステップ2:傷病手当金支給申請書を提出して申請
会社に休職することを伝えたら、傷病手当金支給申請書を入手して健康保険に申請しましょう。
内容は以下の3種類に分かれており、申請者本人以外に事業主・担当医師が記入するページがあるので注意しましょう。
・申請者情報、申請内容(本人が記入)
・事業主証明(事業主が記入)
・療養担当者の意見書(担当医師が記入)
※健康保険傷病手当金支給申請書の入手はこちら
※障害年金を受給している場合や、外傷(けが)の場合など、状況によっては添付書類が必要になる場合があります
提出方法は、会社の担当者を通じて健康保険に提出する場合と、会社が加入している健康保険に直接郵送する場合があります。
傷病手当金でよくある質問
退職後でも引き続き傷病手当金を受給できるか?
退職などで資格喪失した場合でも、条件を満たせば引き続き傷病手当金の支給を受けることができます。
傷病手当金の給付を引き続き受ける場合、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 資格を喪失した日の前日(退職日等)までに、1年以上の継続した健康保険の被保険者期間(任意継続の期間を除く)があること(協会けんぽや健康保険組合の加入期間を含み、国民健康保険等は含みません)
- 資格を喪失した日の前々日(退職日の前日)までに連続して3日以上休業し、資格を喪失した日の前日(退職日等)も休業していること
- 失業給付を受けていないこと(併給不可。失業給付は働くことができる方に対する給付です)
- 同一の傷病により、資格喪失後も引き続き療養のために労務不能であること
- 労務不能期間が継続していること(断続しての受給はできません)
傷病手当金が支給停止(支給調整)される場合は?
以下の条件に当てはまる場合、傷病手当金が支給停止または支給調整されます。
傷病手当金と出産手当金が受けられるとき
平成28年4月から、傷病手当金の額が出産手当金の額よりも多ければ、その差額を支給することになりました。
資格喪失後に老齢(退職)年金が受けられるとき
資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が老齢(退職)年金を受けているときは、傷病手当金は支給されません。
ただし、老齢(退職)年金の額の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。
障害厚生年金または障害手当金が受けられるとき
傷病手当金を受ける期間が残っていた場合でも、同じ病気やケガで障害厚生年金を受けることになったときは、傷病手当金は支給されません。
ただし、障害厚生年金の額(同時に障害基礎年金を受けられるときはその合計額)の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。
また、厚生年金保険法による障害手当金が受けられる場合は、傷病手当金の額の合計額が、障害手当金の額に達する日まで傷病手当金は支給されません。
労災保険から休業補償給付を受けていた(受けている)場合
過去に労災保険から休業補償給付を受けていて、休業補償給付と同一の病気やけがのために労務不能となった場合には、傷病手当金は支給されません。
また、業務外の理由による病気やケガのために労務不能となった場合でも、別の原因で労災保険から休業補償給付を受けている期間中は、傷病手当金は支給されません。
ただし、休業補償給付の日額が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。
傷病手当金の受給期間が終わったあと、同じ病気で再度受給できるか?
再発の可能性がある病気を患った場合、通算1年6カ月の受給期間を過ぎて同じ病気で再度傷病手当を受給することができるのでしょうか。
結論としては、一定期間以上診療や投薬を受けておらず復職して働くことができている場合には、「社会的治癒後の新しい罹患」と捉えられ、傷病手当金を新たに申請・受給することができる可能性があります。
「1年程度の職場復帰」が目安として考えられますが、病気の種類によっても異なるので、加入している健康保険へ確認するようにしましょう。
また、傷病によっては、別の部位を患っても同一の原因とみなされる場合、同一の病として扱われる可能性もあります。たとえば「癌を患って復帰したあと転移が見られた」というケースでは、同一の病と判断され支給に制限がかかる可能性があります。
こうした場合も、加入している健康保険や医師への相談しましょう。
傷病手当金と有給休暇はどちらを選べば良いか?
有給休暇は休んだ期間も給与が100%支払われ、傷病手当金は「支給開始日以前の継続した12カ月の各月の標準報酬月額を平均した金額÷30日×2/3」の金額が支払われます。
つまり、基本的に有給休暇のほうが大きな金額が支払われることになります。傷病手当金の申請の手間を考えると、短期の療養の場合には、有給休暇を取得したほうが良いでしょう。
また有給休暇は、原則年度をまたいで最大20日繰り越し40日まで保有でき、消滅期限が存在します。消滅期限を考えながら有給休暇を取得し、療養に役立てましょう。
傷病手当金を受給すると、生命保険に加入できない場合がある?
「傷病手当金を受給することで生命保険に加入できなくなるのでは」といった疑問もあるかもしれませんが、「傷病手当金を受給したか否か」は生命保険の加入には関係しません。
生命保険会社は「傷病手当金を受給したか否か」ではなく、「かかった病気」に注目して、生命保険に加入できるかどうかを判断しています。
傷病手当金を受給すると、転職が不利になるのか?
「傷病手当金を受給することで転職が不利になるのでは」といった疑問もあるかもしれませんが、傷病手当金を受給していたことで転職に不利になることはありません。
まとめ
この記事では、傷病手当金はいくら、いつもらえるのか、その受給条件や申請方法を解説してきました。
傷病手当金は「支給開始日以前の継続した12カ月の各月の標準報酬月額を平均した金額÷30日×2/3」の金額が支払われます。
また、傷病手当金がもらえる期間は、支給開始日から通算して1年6ヵ月です。
基本的に有給休暇のほうが大きな金額が支払われることになるので、療養期間を考えて効率よく取得していきましょう。