【うつ病で仕事辞めたい】辞める前の確認事項と退職手順を徹底解説
うつ病は「心の風邪」とも呼ばれ、今や日本人の約15人に1人が一生のうちにかかるという非常に身近な病気です。
「憂うつな気分が続いている」「意欲が下がっている」など、うつ病になると仕事を続けることが難しくなってくることもあるでしょう。
この記事では、うつ病で仕事を辞めたいと思ったときに考えるべきことと、辞めるときの手順について解説していきます。
目次
うつ病で仕事を辞めて良い?
結論としては、うつ病を理由に仕事を辞めても何も問題はありません。
理由は以下の通りです。
- 日本国憲法で職業選択の自由が定められている
- 仕事を辞める理由について法的な定めが特にない
- うつ病が一般的になってきた現代ではむしろ自然な理由になりつつある
まず、日本国憲法第22条第1項で、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」という職業選択の自由についての規定がされています。
また、仕事を辞める理由について、法的な定めは特にありません。つまり、退職理由は辞めるために聞かれているのではなく、本質的には退職を申し入れられた人(上司や人事部の担当者)が社内に説明するために聞かれているものでしかありません。
うつ病が一般的になってきたこともあり、退職理由としてうつ病を説明しても理解される環境ができつつあります。「うつ病の治療に専念したい」「うつ病で体力や気力が続かない」といった理由で仕事を辞めることは、むしろ自然なこととも言えるでしょう。
無理して頑張るのは危険
仕事に対する責任感から無理して頑張りすぎると、長期に渡って自分の心身に影響が出ることもあります。
会社員時代、ストレスMAXで何年も我慢してたらうつ病とパニック障害になった。
それから療養期間に入り、丸7年以上経つが寛解しない。
会社を辞め、自由になれたのは病気になったおかげ。
でも、出来ればこうなる前に辞めるべきだったとそこだけは後悔してる
モヒカン (@pumpkinyade) 2022年5月15日
このようなことにならないよう、自分の限界がくる前に早めに判断して、仕事を辞めることをおすすめします。
もちろん、退職後は収入がなくなるため生活の懸念があるので、各種支援制度やその手続き方法についても確認しておきましょう。
気持ちが弱っていて、仕事を辞めることがどうしても言い出せないという方は、退職代行を使うのも良いでしょう。
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うつ病で仕事を辞める前の3つ確認事項
うつ病でツラいからといって、仕事をすぐに辞めてしまうと後悔することがあります。
ここでは、仕事を辞める前の確認事項について説明していきます。
自分ひとりの視点で考えるのではなく、広い視野で考えていくことが大切です。
相談:第三者に相談したか?
自分の判断だけでうつ病だと考えていないでしょうか?
また、心の悩みを自分だけで抱えていないでしょうか?
うつ病は自分ひとりで抱え込むのではなく、信頼できる第三者に相談することが大切です。
医師に相談する
うつ病の疑いがある場合は、心療内科や精神科を受診して専門の医師に相談しましょう。
特に、次のうち5つ以上(1か2を含む)が2週間以上続いていたら、うつ病の疑いがあります。
- 悲しく憂うつな気分が一日中続く
- これまで好きだったことに興味がわかない、何をしても楽しくない
- 食欲が減る、あるいは増す
- 眠れない、あるいは寝すぎる
- イライラする、怒りっぽくなる
- 疲れやすく、何もやる気になれない
- 自分に価値がないように思える
- 集中力がなくなる、物事が決断できない
- 死にたい、消えてしまいたい、いなければよかったと思う
退職後にハローワークや就労支援機関などから支援を受ける際、医師が発行する診断書や診断に基づき交付される障害者手帳が必要となる場合もあるため、うつ病の疑いがあるときはひとりで悩まず医師の診察を受けることが大切です。
信頼できる相手に相談する
家族や周囲の人など、誰か信頼できる相手に相談したでしょうか?
相談することによって自分の悩みを整理することができます。
【相談の効果】
- 自分の悩みが整理でき的確に対処できるようになる
- 自分にはない視点でアドバイスをもらえる
- 気持ちを打ち明けることで気分が楽になる
また、自分ひとりで考えると、視野が狭くなって考えが偏っているかもしれません。
他者の視点で話してもらうことで、今まで考えていなかった視点で悩みを見つめることができます。
検討:休職や異動ではだめか?
仕事を辞めるのではなく、休職や異動では解決しないでしょうか?
休職は3か月から長くて3年が一般的で、休養には十分な時間がとれるかもしれません。
また、異動することで自分のストレスの元がなくなるのであれば、うつ病が改善するかもしれません。
休職や異動で解決することであれば、その会社に留まるのも選択肢のうちです。
ただし、会社という存在があることによって、かえって気持ちが休まらない人もいます。
うつ病で仕事を休んでた時に思ったこと
・どんな顔して復帰すればいいかわからない
・悪化して、また休職したらどうしよう
・なんでこんな事になったんだろう
・迷惑かけてる自分が情けない
・変な目で見られるのが怖い
・会社からの連絡が怖い
・仕事辞めたい
・治るのかな?結果、全く休めてない
はな (@harumaru_hana) 2023年6月7日
自分の体調とよく相談しながら、休職や異動も検討してみましょう。
調査:支援制度を調べたか?
うつ病は病気であり、活用できる支援制度があります。
以下の支援制度を活用することで、治療中の生活資金を補填することができるので、自分はどの制度を活用するべきか事前に調べておきましょう。
支援制度 | 内容 |
---|---|
傷病手当金 | 対象:健康保険(社会保険)の被保険者 申請時の雇用:就業中 支給期間:最大1年6カ月 申請先:健康保険組合や協会けんぽ |
失業手当 | 対象:雇用保険の被保険者 申請時の雇用:失業中 支給期間:90〜360日 申請先:ハローワーク |
労災 | 対象:すべての労働者 申請時の雇用:問わない 支給期間:給付の種類により異なる 申請先:労働基準監督署 |
特に、傷病手当金と失業手当は活用しやすいため、活用するために情報を集めておきましょう。
うつ病で退職する手順
ここからは、うつ病で会社を退職するときの手順を4つのステップに分けて解説していきます。
- 退職の意思を伝える
- 会社を辞める
- 各種手続きを行う
- しっかり休養をとる
早く治したいという気持ちはあるかもしれませんが、焦らず回復に向けて一歩ずつ進んでいきましょう。
退職の意思を伝える
まずは会社に退職の意思を伝えましょう。
退職の意思はを伝えるときは、まず直属の上司に口頭で申し出るのが基本です。
「相談がある」と言って、2人で話せる時間を作ってもらいましょう。
上司が出張などで忙しい場合、メールであらかじめ退職の意思を伝えておき、あとから2人で話すというのも有効です。
退職を伝える際に話しておくべきこと
退職を伝える際は、以下のことを相談した上司や人事部の担当者に伝えておきましょう。
- 退職する理由
- 退職する意思の固さ
- 希望する退職日
- 自分が関わっている業務の状況
退職する理由は、下手に嘘をつくと引き止めにあったり、退職時期の引き伸ばしにあったりするので、うつ病ということは正直に伝えて良いでしょう。
退職時期について
正社員の場合、民法上は退職を申し入れてから2週間すれば、使用者の許諾なく退職することができます。
しかし、労働規約や就業規則上で民法と異なる定めをした場合は、その定めが優先されることになるので、会社の就業規則を一度見直しておきましょう。
うつ病が理由であれば、会社側も退職時期の希望を聞いてくれやすいですが、円滑に退職できるよう希望の退職時期とその根拠をあらかじめ考えておくことが大切です。
会社を辞める
会社側と取り決めた退職日を過ぎれば、雇用契約は終わって会社を正式に辞めたことになります。
最終出社日には、挨拶回りや片付けなどを行うのがマナーではあるので、自分の心に余裕がある場合は行うと良いでしょう。
また、最終出社日に会社から以下の書類を受け取ることになります。
【会社から受け取るもの】
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票
- 離職票(転職先が決まってない場合)
これらはその後の各種手続きで必要になるので、大切に保管しておきましょう。
各種手続きを行う
退職後は、社会保険と雇用保険の手続きを行いましょう。
主な手続きは以下の通りです。
健康保険の手続き
在職中に加入していた健康保険を、以下のいずれかに変更する必要があります。
- 国民健康保険に加入
- 現在の社会保険を任意継続
- 家族の健康保険に加入し被扶養者となる
事前にどう変更するか決めておき、職場に相談して手続きを進めましょう。
現在の社会保険を任意継続したい場合、退職から20日以内の申請が必要なため、できるだけ早く職場へ申し出ましょう。
失業手当の手続き
退職した後、転職活動をしている期間中は、失業手当を申請することで給付を受けられます。
うつ病を理由に退職した場合、正当な理由のある自己都合により離職した者(特定理由離職者)として申請できる可能性があります。
申請が認められると給付についての優遇を受けられるため、最寄りのハローワークに相談すると良いでしょう。
なお、雇用保険の失業手当を申請するときは、職場で発行される離職票が必要なので、事前に発行をお願いしておきましょう。
厚生年金から国民年金への切り替え
会社員や公務員として働いていた場合は、退職後に厚生年金から国民年金への切り替えが必要です。
切り替えの手続きは市区町村の役所で行いましょう。
納付猶予を申請することもできるので、自分の金銭事情を考えて必要であれば申請しましょう。
しっかり休養をとる
うつ病は脳の使いすぎてしまった脳をしっかり休ませることが治療の基本となるので、退職後はしっかりと休養をとりましょう。
治療法について
うつ病の治療には、落ち込んだ気分を和らげ、睡眠リズムを改善する効果をもつ抗うつ薬を中心に、必要に応じて不安感を和らげる抗不安薬なども使われます。ストレスを和らげたり、自分を責める考え方を変化させたりするカウンセリングも行われます。
引用:厚生労働省 | うつ病 | こころの病気について知る
「自分はいないほうがよい」「消えてしまいたい」といった気持ちになることがありますが、そんな気持ちになるのも病気が原因。しっかり治療することで症状は改善します。
うつ病の治療は、抗うつ薬や抗不安薬などの薬やカウンセリングなどを通して行われます。
また、うつ病の回復には、おおよそ以下の期間が必要と言われています。
【うつ病の回復期間】
- 未治療の場合:6〜12ヶ月続いた後に自然に軽快
- 治療を受けた場合:多くが3〜6ヶ月で回復
医師に相談しながら適切な治療を受けることで、治療を行わない場合よりも早期の回復を期待できます。
うつ病は、一度症状が回復したとしても再発することがあります。
うつ病経験者の約60%は再発し、その多くが回復後2年以内に起こると言われています。
また、再発率は繰り返すごとに高まっていき、2回うつ病になった人は約70%、3回うつ病になった人は90%が再発すると言われています。
一度治ってその後不調を感じたら、早めに医師に相談することが大切です。
うつ病の方が利用できる支援サービス
ハローワーク
ハローワークとは、厚生労働省が全国500か所以上で運営する公共職業安定所のことです。
求人情報の閲覧や申し込み、職業相談、応募書類の添削、面接指導など、仕事探しに関係する充実したサポートが特徴です。
うつ病であることを前提に申し込みを行えば、その状況に適した求人情報の提供してもらえるなど、専門的な支援を受けることができます。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、厚生労働省が全国に設置する障害者の職業生活における自立を図るための機関です。
雇用、保健、福祉、教育等の関係機関と連携し、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行っています。
仕事だけではなく、生活面の支援も受けたい方に適している機関です。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、病気療養中の方や障害のある方に対して、就労に向けた支援を行う事業所です。
民間企業やNPO法人、社会福祉法人などが運営しており、就職活動のサポートはもちろん、就職した後の職場定着の支援も行ってくれます。
さいごに:活用できる支援制度・相談先一覧
さいごに、うつ病の治療で活用できる可能性がある支援制度・相談先を一覧でご紹介します。
ご自身の状況に応じて、ぜひ活用してみてください。
相談関連
施設や制度 | 内容 | URL |
---|---|---|
保健所 | ・こころの健康、保健、医療、福祉に関する相談 ・未治療、医療中断の方の受診相談 ・思春期問題、ひきこもり相談、アルコール・薬物依存症の家族相談など | 保健所管轄区域案内 |
地域産業保健センター | ・長時間労働者への医師による面接指導の相談 ・健康相談窓口など (労働者数50人未満の小規模事業者やそこで働く方が対象) | 独立行政法人労働者健康安全機構 地域窓口(地域産業保健センター) |
精神保健福祉センター | 精神保健福祉全般の相談が可能。 電話や面接(事前に予約が必要)で相談できます。 | 全国の精神保健福祉センター一覧 |
夜間・休日の 精神科医療機関 | 夜間や休日にかかりつけの医療機関が利用できない場合などに、 都道府県が設置している精神科救急情報センターなどに相談できます。 | 夜間休日精神科救急医療機関案内窓口 |
無料電話相談 働く人の悩みホットライン | 働くうえでのさまざまな悩みを電話で相談できます。 | 働く人の悩みホットライン |
働く人の 「こころの耳電話相談」 | ・働く人のこころの悩み ・ストレスチェック制度などの会社内におけるメンタルヘルス対策など | こころの耳-働く人のメンタルヘルス ポータルサイト |
保障関連
施設や制度 | 内容 | URL |
---|---|---|
傷病手当金 | 業務外での病気や怪我のために仕事を休むことになり、 給与が支給されなくなった際の補償制度。 最長で1年6ヵ月にわたり給与の一部の金額が支給されます。 | 傷病手当金(全国健康保険協会) |
労災補償 | 通勤を含む業務上の理由で怪我や病気をして休業した場合の休業補償。 身体障害が残った場合の補償や業務上死亡した場合の遺族に対する支給もあります。 | |
自立支援医療 | 健康保険を使用して精神疾患の治療を受ける際、 外来による通院、投薬、訪問看護などについて、 自己負担分の一部を公的に支援する制度です。 | 自立支援医療(厚生労働省) |
高額療養費制度 | 医療費が高額になった場合に、自己負担分を軽減する制度です。 | 高額な医療費を支払ったとき 全国健康保険協会サイト内 |
医療費控除 | 支払った医療費が年間を通して一定額を超える場合に受けられる控除です。 | 医療費を支払ったとき(医療費控除)(国税庁) |
特別児童扶養手当 | 精神または身体に一定程度の障害があり、 在宅で生活する児童を養育する方を対象に支給される手当です。 | 特別児童扶養手当について(厚生労働省) |
障害者控除 特別障害者控除 | 心身に障害がある患者さんご自身や、 障害がある患者さんを扶養している方を対象に、 所得税や住民税を軽減する制度です。 | 障害者控除(国税庁) |
精神障害者保健福祉手帳 | 精神障害の状態にあることを、重症度に応じて認定するものです。 手帳を持っている方々には、さまざまな支援策が講じられています。 | こころの情報サイト |
復職支援関連
施設や制度 | 内容 | URL |
---|---|---|
復職支援プログラム | うつ病を含む精神疾患により休職中の患者さんの復職や、 再発による再休職を防ぐための支援制度として、 復職支援(リワーク)プログラムがあります。 | 職場復帰支援(高齢・障害者雇用支援機構)(パンフレット) 日本うつ病リワーク協会 |
ハローワーク | 精神疾患に限らず患者さんに障害がある場合、 障害者専門の相談窓口でその障害に応じた相談をすることができ、 就職の準備段階から職場定着まで一貫した支援を受けられます。 | 全国ハローワークの所在案内(厚生労働省) |
まとめ:うつ病は身近な病気。無理せずしっかり治療しよう。
この記事では、うつ病で仕事を辞めたいと思ったときに考えるべきことと、辞めるときの手順について解説してきました。
うつ病は「心の風邪」とも呼ばれるほど身近な病気です。
うつ病とは
うつ病は、脳内の神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減ってしまう病気だと考えられています。これらの神経伝達物質は精神を安定させたり、やる気を起こさせたりするものなので、減少すると無気力で憂うつな状態になってしまいます。
引用:厚生労働省 | うつ病 | こころの病気について知る
ですから、うつ病は決して怠けているわけでも、気の持ちようで何とかなるものでもありません。しかも、うつ病は日本人の約15人に1人が一生のうちにかかるという非常にありふれた病気です。早めに適切な治療を受けることが必要です。
うつ病になった場合、それを理由に仕事を辞めても何も問題はありません。
自分の限界がくる前に早めに判断して、退職時期を決めることをおすすめします。
支援制度や相談先を活用しながら、自分の心の健康を取り戻しましょう。
仕事を辞めたいのは甘えかについて知りたい方は、『【もう限界】仕事辞めたいのは甘え?辞める前に考えるべきことを解説』を参考にしてください。