【仕事を辞めさせてくれない】対処法や違法性について徹底解説
「仕事を辞めたいけど、仕事を辞めさせてくれない」という悩みを抱えていませんか?
退職は労働者に認められた権利ではありますが、上司との関係性をはじめさまざまな兼ね合いで「辞めさせてくれない」という状況に追い込まれることもあるでしょう。
この記事では、仕事をスムーズかつ円満に辞めるための対処方法や辞めさせてくれないことの違法性について解説していきます。
退職できず困っている方は、ぜひ参考にしてください。
仕事を辞めさせてくれない理由
辞めさせてくれなことの違法性
仕事を辞めさせてくれないときの対処方法
目次
仕事を辞めさせてくれない3つの理由
「退職届が受理されない・・・」
「辞めるなら〇〇すると脅される・・・」
「指定された退職日までが長い・・・」
など、退職の引き伸ばしや引き止めによって、仕事を辞めさせてくれないことがあります。
仕事を辞める意志を伝えても辞めさせてくれない場合、主に以下の原因が考えられます。
仕事への懸念
誰かが仕事を辞めると、その穴を誰かが埋めることになります。
会社側としても仕事のリソースは有限なので、穴を埋めるようなことは避けたいものです。
こういった状況から、仕事をを辞めさせてくれないという状況が発生します。
労働力不足
会社が仕事を辞めさせてくれない理由として、まず挙げられるのは労働力不足です。
2019年4月から働き方改革関連法が施行されていったこともあり、社員一人あたりの労働時間に関する制限がより厳しくなりました。
【働き方改革関連法のポイント】
- 時間外労働の上限規制:原則として残業時間の上限は月45時間・年360時間
- 年次有給休暇の取得義務化:年5日は使用者が時季を指定して取得させることが必要
- 公正な待遇の確保:正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の禁止
従って、労働力不足によって仕事が遅れたとしても、「誰かが頑張って巻き返す」ということが難しい場合があります。
会社もクライアントありきなので、納品が遅れるのはできる限り避けたいのが心情です。
このような時は、「繁忙期が終わるまで」と言って退職時期の引き伸ばしをお願いしてくるでしょう。
引き継ぎの懸念
どのような仕事であっても、引き継ぎには相応の時間がかかるものです。
新しい仕事に慣れるには、新卒なら3か月〜1年、中途でも3か月〜半年の期間は必要で、それまでは引き継ぎ前より仕事の品質が落ちる懸念があるでしょう。
また、会社を辞める場合の引き継ぎは、部署異動による引き継ぎとは違って「辞めるまでに引き継ぎを終える」という具体的な期限が決まっています。
部署異動による引き継ぎでは、困ったことがあっても前任者に聞くことができます。しかし、会社を辞める場合の引き継ぎは、前任者が辞めたあとに分からないことは自分でなんとかしないといけません。
このような引き継ぎの懸念から、退職の引き止めを行ってくるケースがあります。
離職率の上昇抑制
近年はワークライフバランスという言葉が一般的になり、SNSによって情報が拡散するスピードが早くなっていることも重なって、会社に関するネガティブな情報は世間に広がりやすくなっています。
離職率の数値が高いと、「離職率が高い = ブラック企業」というイメージが形成されやすく、会社側はできるだけ離職率を上げたくありません。
離職率の計算方法
離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100(%)
リクルートのOB達のように「リクルートマフィア」と呼ばれて独立後に各業界で成功を収めることがあれば、離職に対して世間からポジティブな印象を持たれるでしょう。
ただ、ほとんどの会社はそうではなく、「離職率が高い = ブラック企業」というイメージと戦っているのが現状です。
上司の保身
誰かの部下が離職すると、「あの人はよく部下を辞めさせる」「あの人はパワハラ気質らしい」というようなウワサが流れ、社内評価が悪くなる場合があります。
その評価が昇進や異動に影響する可能性があることから、上司自身の保身のために仕事を辞めさせてくれない可能性があります。
あなたの会社でも、社内評価が悪くなった上司が窓際に追いやられたり、影響力の少ない部門に飛ばされたりしたことはないでしょうか?
日本の会社は雇用慣行や独自の解雇規制によって、誰かを辞めさせることが難しいです。だからこそ、社内評価が悪い人にはこのような対応でリスク管理を行うことがあります。
一般的に、レガシーな業界の会社や長く続いている会社ほど、このような社内政治的側面は強く働きます。
辞めさせてくれなことの違法性
労働者には辞める権利がある
民法 第627条には、以下のように労働者の退職や契約解除についての条件が記載されています。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第627条当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引用:e-Gov法令検索 民法
2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
従って、前提として労働者には会社を辞める権利があると言えるでしょう。
ただし、一般的には民法の規定は任意法規とされているため、労働規約や就業規則上で民法と異なる定めをした場合は、その定めが優先されることになります。
※ なお、第627条を強行法規とする判例もあるので、解釈はそれぞれの状況によると考えられます。(昭51.10.29、東京地裁、高野メリヤス事件)
それでも前提として労働者には辞める権利があることには変わりなく、辞めさせてくれない状況はおかしいということが分かります。
引き止めだけでは違法と言い切れない
例えば、「繁忙期が終わるまで働けないか?」「代わりの人がくるまで頑張ってくれないか?」と退職を引き止められる場合もあるでしょう。
このようにお願いされている段階では、労働者の退職の自由を脅かしているわけではないので、違法とは言い切れません。(もちろん引き止め自体に法的拘束力はないので、従う義務はありません。)
ただし、次項でご紹介するような脅しや嫌がらせに当たる行為があれば、引き止められること自体が違法だと判断されることがあります。
脅しや嫌がらせがあれば違法
会社側が脅しや嫌がらせに当たる引き止め方をしている場合、それは違法行為となります。
実際に違法となる会社側の対応を以下に具体例として記載します。
・会社の機会損失を根拠に「今辞めるなら損害賠償請求をする」と脅された
違約金や損害賠償を予定する契約をすることは、労働基準法 第16条により禁止されています。
・過去のミスを根拠に「辞めるのならば懲戒解雇にする」と脅された
正当な理由もなく会社が労働者を懲戒解雇することは、労働契約法 第15条により禁止されています。
・「辞めるなら今月の給料(退職金)は支払わない」と言われた
労働者に給与を払うことは、労働基準法 第24条にある通り会社の義務です。
・貯まっている有給の消化を認めてもらえなかった
労働者に有給休暇を与えることは、労働基準法 第39条にある通り会社の義務です。
会社側がこのような悪質な引き止め方をしてくる場合、労働環境サポーターにご相談ください。
経験豊富な弁護士が退職代行をはじめ、未払い残業代の請求対応するため、もしもトラブルが起きた時も安心です。
法律における退職の条件
法律における退職の条件は、雇用形態によって異なります。
ここではそれぞれの雇用形態における退職の条件を解説していきます。
雇用期間に定めがない労働者
正社員など雇用期間に定めがない労働者の場合、2週間前までに申し出れば退職可能です(民法627条1項)。
退職を申し出てから2週間後に雇用終了となるため、もし会社側が退職を認めない場合であっても勤務を続ける必要はありません。
ただし、会社の労働規約や就業規則に「退職の申告は1ヶ月前までに行うこととする」など退職の申し出に関わる定めがある場合は、その定めが優先されることになるので注意しましょう。
なお、年俸制など「6カ月以上の期間で報酬が定められている場合」には、3ヶ月前までに退職を申し出なければなりません(民法627条3項)。
雇用期間に定めがある労働者
契約社員、嘱託社員、パートタイム・アルバイトなど雇用期間に定めがある労働者の場合、原則として契約期間満了までは退職することができません。
しかし、病気・ケガで勤務できなくなるなど、やむを得ない事情がある場合には直ちに契約を解除できます(民法第628条)。ただし、この事情が会社側・労働者どちらかの一方的な過失であれば、損害賠償が発生する可能性があるので注意が必要です。
また、契約期間が1年を超える場合には、契約から1年を経過した時点でいつでも退職可能です(労働基準法第137条)。
仕事を辞めさせてくれないときの対処方法
仕事を辞めさせてくれないときは以下の3つで対処しましょう。
- 退職代行を利用する
- 退職願で意思表示する
- 労働基準監督署に相談する
労働者には辞める権利があるので、これらを実行しても退職できないということは起きません。
それぞれ解説していきます。
退職代行を利用する
退職代行サービスとは、会社に対して本人に代わって退職手続きを進めてくれるサービスのことです。
会社側と直接やり取りする必要がなくなるため、特に辞めさせてくれないときの対処法として退職代行サービスは有効です。
辞めさせてくれないような強硬な姿勢の会社に対しては、法律を根拠にして対応すべきです。
退職代行サービスを利用する場合も、弁護士対応を行っている業者に依頼することをおすすめします。
退職願で意思表示する
退職願は、文字通り退職(労働契約の解除)を会社に願い出るための書類です。
書面の退職願を会社側に提出することで、退職の意思が固いことを示すと同時に退職の申し入れをした根拠にすることが可能です。
ただし、辞めさせてくれないような強硬な姿勢の会社では、退職願を受け取ってくれないことがあります。
その場合は、内容証明郵便で退職願を提出しましょう。
内容証明
一般書留郵便物の内容文書について証明するサービスです。
いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度です。
出典:日本郵政グループ
内容証明郵便で送ることで、いつ誰がどのような文書を送ったかということを、客観的事実として残すことができます。
他の手段を利用するときにも、辞めさせてくれないという証拠として活用できます。
退職届とは、退職することが確定した後に、退職を会社に対して届け出るための書類のことです。
退職願は「退職確定前」、退職届は「退職確定後」に提出する書類なので、位置付けが異なります。
退職届を提出する場合は、会社ごとに書類の内容や提出先が異なるので、詳細は直属の上司に確認しましょう。
労働基準監督署に相談する
労働基準監督署は、事業者に対する監督を主な業務とする厚生労働省の出先機関であり、会社の労働基準法違反を通報すると、労働基準監督署が是正指導や立ち入り調査などで改善ってくれます。
仕事を辞めることについては、契約の初日から1年が経過した日以降であればいつでも可能と労働基準法に定められています。
第137条
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
引用:e-Gov法令検索 労働基準法
したがって、仕事を辞めさせてくれない場合は、労働基準監督署に相談することで対処することが可能です。
なお、労働基準監督署への相談は、電話やメールで相談することで匿名でも行えるため、会社に知られることが心配な方はまず匿名から相談してみると良いでしょう。
仕事を辞めさせてくれないときのQ&A
自分で辞める勇気がありません
自分で辞める勇気がない方は、退職代行サービスの利用を検討しましょう。
退職代行サービスを使えば、自分で会社側とやり取りする必要がなくなるため、ストレスなく退職を進めることができます。
労働環境サポーターでは、退職代行と未払い残業代請求を一緒に行うことで、退職代行を実質無料で依頼できます。
もしものトラブルにも経験豊富な弁護士が対応するため、仕事を辞めれず困っている方はぜひ無料相談でご連絡ください。
辞めることをメールで伝えても大丈夫?
退職の意思を伝える方法に決まりはないので、上司や人事部などにメールで伝えても特に問題はないでしょう。
「上司が聞く耳を持たない」「辞めさせないと言って怒られる」などの場合でも、メールであれば率直に自分の思いを伝えることができます。退職の意思を認めてくれなかったり、特に連絡や指示をもらえなかったりする場合は、連絡した相手のさらに上司に連絡すると良いでしょう。
退職の意思をメールで伝えてからは、会社側からの指示に従いましょう。基本的に退職がメールのみで完結することはなく、面談や退職用の書類を提出するなどのやりとりが必要です。
ただし、入院や体調不良でやむを得ない場合は、メールや書類の郵送などで完結することもあります。
会社を無理やり辞めても(バックレても)良い?
結論としては、無理やり辞めること(バックレること)はおすすめしません。
無理やり辞めようとして無断欠勤を続けた場合、懲戒解雇につながる可能性があります。
また、引継ぎをせずに退職するなど会社に損失を与えた場合、損害賠償請求の対象となる可能性もあります。
会社の就業規則や労働契約に沿って、退職の手続きを行なうべきです。
会社が指定した退職日までが長いです
労働者には退職の自由があり、退職を申し入れてから2週間すれば、使用者の許諾がなくとも会社を辞めることができます。
しかし、退職の自由に言及されている民法は任意法規とされているため、労働規約や就業規則上で民法と異なる定めをした場合は、基本的にはその定めが優先されることになります。
したがって、労働契約や就業規則に退職日についての記述がない限りは、退職を申し入れてから2週間で退職しても問題はありません。
会社を辞めるときに有給の消化が認められません
労働者に有給休暇を与えることは、労働基準法 第39条にある通り会社の義務です。
(年次有給休暇)
第39条使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
引用:e-Gov法令検索 労働基準法
退職が決まったあとに有給休暇を取得できないという法律はないので、有給日数が残っていれば取得することができます。
なお、有給休暇を取得するのに明確な理由を会社側に説明する必要はありません。
残りの給与が支払われません
労働者に給与を払うことは、労働基準法 第24条にある通り会社の義務です。
(賃金の支払)
第24条賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
引用:e-Gov法令検索 労働基準法
退職を理由にして、支払うべき残りの給与を支払わないのは違法です。
もし給与が正しく支払われなかった場合は、退職後でも請求することができます。
辞めると損害賠償を請求すると脅されます
違約金や損害賠償を予定する契約をすることは、労働基準法 第16条により禁止されています。
(賠償予定の禁止)
第16条使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
引用:e-Gov法令検索 労働基準法
したがって、「辞めるなら違約金を払え」「辞めたら損害賠償する」と脅された場合は違法です。
また、損害賠償を給与や退職金から差し引くよう求められる場合もありますが、それも違法です。
辞めると懲戒解雇扱いにすると言われます
懲戒解雇とは、会社での規律違反や犯罪行為などを行った場合にされる解雇処分です。
原則として、犯罪行為、経歴詐称、2週間以上の無断欠勤などの問題を起こさなければ労働者が懲戒解雇されることはありません。
このような正当な理由もなく会社が労働者を懲戒解雇することは、労働契約法 第15条により禁止されています。
(懲戒)
第15条使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
引用:e-Gov法令検索 労働契約法
もし退職の意思を伝えたことで会社から懲戒解雇を受けた場合、その解雇は無効にできるほか、会社に対して損害賠償請求をできることがあります。
もしも懲戒解雇されてしまうと、退職金を受け取れないことが多く、離職票にも懲戒解雇を受けたことが記載されてしまいます。
金銭的にも社会的にも不利になるので、会社側の主張が正しいかどうか慎重に見極めましょう。
まとめ
この記事では、仕事を辞めさせてくれないときの対処方法や違法性についてまとめてきました。
労働者には退職の自由があり、会社側が脅しや嫌がらせに当たる引き止め方をしている場合、それは違法行為となります。
仕事を辞めさせてくれない場合は、
- 退職代行を利用する
- 退職願で意思表示する
- 労働基準監督署に相談する
これらによって対処が可能です。
仕事を辞めることは勇気や体力が必要ですが、この記事があなたの問題の解決に少しでも貢献できれば幸いです。
仕事を辞めたいのは甘えかについて知りたい方は、『【もう限界】仕事辞めたいのは甘え?辞める前に考えるべきことを解説』を参考にしてください。