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労働問題

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【サービス残業は違法!?】違法性を弁護士が徹底解説

【サービス残業は違法!?】違法性を弁護士が徹底解説

サービス残業は賃金不払残業とも呼ばれ、会社が労働者に対して、本来支払うべき残業代を支払わずに働かせることを指します。

働き方改革によって仕事の環境は改善されてきている一方、業界や会社によってはサービス残業が日常化しているのが現状です。

この記事では、サービス残業の違法性について労働基準法をもとに弁護士が解説していきます。

日々サービス残業に悩んでいる方は参考にしてください。

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サービス残業は違法なのか?

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サービス残業が違法である理由

結論としては、サービス残業は違法です。

そもそも、労働者の賃金請求権の発生については、「その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求」できず(民法624条1項)、「期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に請求」することができる(同2項)と定められています。

従って、労働契約の範疇で業務を行なった場合、その後には賃金の請求権が発生しているというわけです。

そして、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」(労基法24条1項)と定められており、残業をサービス残業として賃金未払いにするのは違法となります。

賃金が払われる権利について

日々サービス残業で精神をすり減らしていると、賃金の支払いなく残業することに違和感がなくなっていくでしょう。

ただ、言うまでもなく賃金が支払われるのは、労働者の正当な権利です。

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」(労基法24条1項)と定められているのはもちろんのこと、日本の法律のスタンスは「賃金は労働者と使用者の間で自主的に決めよう」「それに基づいて労働者が受け取るべき賃金は保障しよう」というものです。

賃金は労働者にとって生活維持のために不可欠のものであり、法律により賃金についての保護をなすべき必要性はきわめて高い。

現行法では賃金に関して、賃金額の決定については、その最低額を最低賃金法によって設定するとともに、原則として、労働契約あるいは労働協約による労使間の自主的な決定に委ね、それに基づいて労働者が受け取るべき賃金がより確実に支給されることを保障しようとするものである。

引用:安枝英訷・西村健一郎(2014年).第4章 賃金・退職金 労働法[第12版] 有斐閣 pp110.

従って、労働の対価として賃金が支給されることは、正当な権利であると言うことができます。

サービス残業によって企業が受ける罰則

労働者がサービス残業を行なった場合、それが自主的かどうかにかかわらず企業に罰則が適用されます。

ここでは、サービス残業によって企業が受ける罰則について説明していきます。

労働基準法に則った罰則

サービス残業は労働基準法第37条に違反するため、違反した会社には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という刑事罰が科せられることがあります。

ただし、サービス残業が発覚しても、すぐに刑事罰が科せられるわけではなく、労働者からの申告に基づいて労働基準監督署による立ち入り調査などが行われます。

その後、調査結果に基づいて是正勧告が出され、業務状況の改善が求められます。

是正勧告後にも改善が見られず、特に悪質なサービス残業が続いている場合は、刑事罰が科せられることがあります。

未払い残業代等の支払い

残業代の未払いとは、労働者に時間外労働をさせたにもかかわらず、その労働時間の一部または全部に対して決められた賃金や割増賃金を支払わないことを指します。

未払い残業代の請求権は、法改正によって消滅時効期間が賃金支払期日から5年に延長されました。

しかし、当分の間は3年とされているため、現在は3年分の残業代をさかのぼることができるという状況です。

裁判となって未払い残業代を請求された場合、企業側は未払い残業代に加えて遅延損害金や付加金も上乗せして支払わなければならない可能性があります。

その場合の支払い額は、未払い額の倍以上になることもあります。

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サービス残業となる働き方

サービス残業となる労働とは?

サービス残業になる働きは、どのようなものなのでしょうか。

具体的には、以下の働き方がサービス残業となります。

・勤務時間を正確に報告していない
・申告外の業務を行う
・制度や役職が事実と異なる

それぞれ詳細を解説していきます。

勤務時間を正確に報告していない

勤務時間を偽って報告している

タイムカードを押したあとに労働したり、紙の勤怠管理表に虚偽の記載をしたり、勤務時間を偽って報告していないでしょうか?

そのような働き方は、もちろんサービス残業です。

例えば「月45時間の残業時間を超えると上司から注意を受けるので、44時間と偽って報告する」ということは、プレッシャーが大きい場合はやってしまうのではないでしょうか?

勤務時間を偽ることは、組織の雰囲気や慣習などが原因となるため、抜本的な解決が難しい問題です。

残業時間を1分単位で報告していない

賃金はその全額を支払わなければならないことが定められています。(労基法24条1項)

労働時間は原則として1分単位で計算しなければならず、15分単位や30分単位などで切り捨てることは違法となります。(労働者側との協定がある場合を除く)

ただし、残業時間の端数を切り上げて、割増賃金を支払うことについては問題ありません。

申告外の仕事をする

家に持ち帰っての仕事

「納期に追われている」「急な課題が生じた」などの理由で家に持ち帰って仕事をした場合、その業務が残業に該当することがあります。

持ち帰りの仕事が残業であるにも関わらず残業代が支払われていなければ、それはサービス残業となります。

持ち帰りの業務が残業になるかどうかは、業務の性質や作業の内容・方法、指示の有無など、様々な要因を考慮して判断されます。

例えば、保育士の持ち帰り仕事はよく耳にすると思いますが、保育園側からの指示なく持ち帰って自分の判断で作業を進めた場合は、残業とならない可能性もあります。

朝残業を行う

始業時刻の前に仕事を始めると、他の人に邪魔されることもなく仕事が捗るでしょう。

ただし、始業時刻前の労働も残業になるため、残業代が払われていない場合はサービス残業です。

終業後のサービス残業に対する社会的な批判が強まっていることもあり、近年は始業前のサービス残業が増加している傾向があります。

着替え時間・待機時間などについて

出勤後に会社の制服に着替える時間、昼休みに電話番をしている時間、終業後の終礼の時間などは、労働時間として認められることがあります。

これらは残業代の支払い対象となる可能性があっても、意外と見落としやすいものです。

ただし、本当に軽い作業の場合は労働時間と認められにくいので、指示や責任の有無などをもとに考えないといけません。

制度や役職が事実と異なる

みなし残業が適切に処理されていない

固定残業代(みなし残業代)という形で残業代を支払っているケースでは、適切に処理されているかどうかに注意が必要です。

実際の残業時間がみなし時間を超えた場合、超えた分の残業代は追加で支払われる必要があります。

みなし時間を超えた残業時間について残業代が支払われていない場合、それはサービス残業となります。

なお、みなし残業は会社の給与計算上の便宜などのために行われますが、残業代を一定額に限定してコストを削減するために行われている場合は違法となります。

「名ばかり管理職」として残業代が支払われていない

「名ばかり管理職」とは文字通り名目上だけの管理職のことで、管理職という役職に相応する権限や報酬が与えられないのに、管理職だからといって残業代を支給されない従業員のことを指します。

例えば、社内の独自基準で「店長」や「マネージャー」を管理職として扱われ、残業代なしに労働を強いられているような状態は、まさに「名ばかり管理職」の状態です。

これは、労働基準法上の管理監督者には残業代を支払わなくてよいとされていることを利用していますが、実際は労働基準法上の「管理監督者」と企業が独自に「管理職」として扱うことは必ずしも同義ではありません。

労働基準法上の「管理監督者」には以下のような要件があり、「管理監督者」と「管理職」が一致していない場合も多いです。

  • 企業の部門等を統括する立場にある
  • 企業経営への関与が認められている
  • 自身の業務量や業務時間を裁量的にコントロールできる
  • 賃金面で十分に優遇されている

労働基準法上の「管理監督者」と一致していないにもかかわらず「管理職」として残業代が支払われていない場合、それはサービス残業となります。

「名ばかり管理職」の問題は改善が進みつつありますが、中小規模の企業などでは、未だに課長以上を一律に管理職として残業代を支払わない場合があります。

サービス残業が日常化している業界

サービス残業が常態化している業界

業界によっては、業務の特性や労働環境などが原因となって、サービス残業が当たり前になっている場合があります。

以下に、代表的な業界とサービス残業が日常化している理由をご紹介します。

飲食業

飲食業では、以下のような理由から時間通りの業務が難しい場合があり、サービス残業が日常化しています。

  • 客入りが読みにくく予期せぬ混雑が発生する場合がある
  • 混雑している場合は休憩を取りにくい

医療業界

医療業界では、以下のような理由からサービス残業が日常化しています。

  • 人手不足による負担が多い
  • 提供するサービス量が多く、時間外労働が多い
  • 紙による出退勤管理や手作業での集計がいまだに行われており、虚偽報告がしやすい

製造業

製造業では、以下のような理由から長時間労働が日常化しており、その結果サービス残業が発生しています。

  • 人手不足により一人ひとりの業務量が増え、長時間労働が日常化している
  • 製造現場は製造目標を基準に動くため長時間労働が日常化している

建設業

建設業では、以下のような理由から労働時間が変動しやすいため、サービス残業が必要となる場合があります。

  • 悪天候により作業が滞る
  • 設計変更によって作業が滞る
  • 工事の時間帯や期間に制限がある
  • 資材の調達や他の作業が遅れているため、次の作業に進めない

保育士

保育士は、以下のような理由からサービス残業が必要となる場合があります。

  • 行事の準備や製作物などの持ち帰り業務がある
  • 保育外の事務作業が多い

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サービス残業をしている場合の対応策

サービス残業をしている場合の対応策

サービス残業を既にしてしまっている場合、以下の対応策によって是正や賃金の支払いを受けられる可能性があります。

・労働組合に相談する
・労働基準監督署に報告する
・未払い残業代を請求する

それぞれ詳しく説明していきます。

労働組合に相談する

厚生労働省の公式ページによると、労働組合とは「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を目的として組織する団体」、すなわち、労働者が団結して、賃金や労働時間などの労働条件の改善を図るためにつくる団体のことです。

日本国憲法第28条では、
①労働者が労働組合を結成する権利(団結権)
②労働者が使用者(会社)と団体交渉する権利(団体交渉権)
③労働者が要求実現のために団体で行動する権利(団体行動権(争議権))
の労働三権を保障しています。

労働組合は憲法に保障されている団体交渉の権利を行使することができるため、労働者が一人で交渉するよりも強い交渉力を持っています。

労働組合には、企業単位で組織された企業別組合以外にも、職業別組合、産業別組合、一般労働組合などの種類があります。

サービス残業をして悩んでいる場合は、まずは自社の企業別組合への相談を検討しましょう。

所属する企業に労働組合がない場合や労働組合が機能していない場合には、一般労働組合などの別の労働組合に相談することもできます。

ただし、別の労働組合に相談する場合は協力費として一定の費用がかかる場合もあるので注意しましょう。

労働基準監督署に報告する

サービス残業で困っている方は、労働基準監督署に報告することで是正や賃金の支払いを受けられる可能性があります。

労働基準監督署とは、事業者に対する監督を主な業務とする厚生労働省の出先機関です。

例えば、労働基準監督署の監督指導の結果、令和3年度に1企業あたり合計100万円以上の割増賃金を支払った事案は以下の通りです。

100万円以上の割増賃金の遡及支払状況(令和3年度分)

出典:厚生労働省|100万円以上の割増賃金の遡及支払状況(令和3年度分)

このように、労働基準監督署はさまざまな企業への監督指導を行い、労働実績に合わせた賃金の支払いを命じています。

また、労働基準監督署からの指導によってサービス残業が是正された事例は、賃金不払残業の解消のための取組事例にまとめられているようにかなり具体的な是正が行われています。

サービス残業は自分ひとりで解決するのは難しいですが、労働基準監督署という公的機関の力を借りることで解決できる場合があります。

労働基準監督署は全国各地に設置されているので、厚生労働省公式ページの所在地一覧から最寄りの労働基準監督署を調べて相談してみましょう。

なお、労働基準監督署で勤務する労働基準監督官には労働基準法第105条で守秘義務が定められているため、誰が通報したのかを企業に知らせることはありません。

ただし、相談内容に特定の個人しか知らない情報が含まれている場合には、誰が通報したのか間接的にバレてしまう場合があるので注意が必要です。

未払い残業代を請求する

残業代は労働基準法に準じて正しく支払わなければならず、未払い残業代については請求することができます。

会社に在籍中もしくは退職後3年以内であり、サービス残業の証拠情報が十分にある場合は、未払い残業代の請求を検討してみましょう。

特にサービス残業が日常化している場合、未払いのままになっている残業代はかなりの金額となります。

未払い残業代の請求方法は、主に以下の方法に分けられます。

  • 在職中会社側と直接話し合う:直接交渉によって解決を行う
  • 退職後に内容証明郵便で請求する:書面で請求して解決を行う
  • 法的手続きを行う:労働審判や通常訴訟によって法的な解決を行う

請求方法の詳細は以下の記事を参考にしてください。

まとめ

この記事では、サービス残業の違法性について労働基準をもとに弁護士が解説してきました。

・サービス残業は違法なのか?
・サービス残業となる労働とは?
・サービス残業が日常化している業界
・サービス残業をしている場合の対応策

サービス残業を是正してもらうには自分で一歩踏み出す勇気が必要でしょう。

この記事がその一歩を踏み出すキッカケになれば筆者として大変嬉しく思います。

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