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  • 2019年7月12日

編集長中井のコラム「芸人の闇営業について、よしもとマネージャーとよしもと芸人に聞いてみた」vol2

取材・テキスト
中井亮

 

皆様おはようございますこんにちはこんばんわ。

前回闇営業について触りだけ書きました。今回は、その実情に踏み込みたい!!!と思って書いていたのですが、その前提となる「お笑い芸人という生き物」について書いていきます。
というか書いていたらすごく長くなりました。

でも、今回の騒ぎにつながるのでとても重要なのでお付き合いいただければ。

お笑い芸人になるには

そもそもお笑い芸人ってどうすればなれるかご存知でしょうか。

主観的側面での答えは、「私はお笑い芸人です」と言えば、お笑い芸人です。
客観的側面での答えは、「お笑い芸人」としてお仕事発注もらえば「お笑い芸人」です。
「芸人」の定義というのはとても曖昧です。

そうなんです。資格や社会的に定められた制度があるわけではないので、上記の通りです(オードリーさんもラジオで言っている(参考))
歌手、画家、芸術家、役者も同じですね。社会人、というのも同じですね。本人がそうですと言えば、そうです。
それを世間で認知されるかは、そうですと言った立場のお仕事が発生すれば、そうなります。

芸人の場合、昔は弟子制度が基本でした。見習いみたいなやつですね。わかりやすいですよね。テレビや舞台で活躍しているOO師匠の弟子になって、関係者にネタを見てもらい、お仕事を少しずつ増やしていく。

吉本でお笑い芸人になるには

今はどうでしょう。下記はあくまで吉本の場合で書いていきますが、吉本芸人の多くは養成所に入るところからスタートします。

NSCという養成所です。http://www.yoshimoto.co.jp/nsc/
仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡にあります(気づいたらめっちゃ拡大してはります)。この養成所に入り、卒業公演に出たら、晴れて吉本預かりとして芸人生活スタートです。

ちなみにNSCは、New Star Creationの略らしいです!! だ、、ださい。。知らなかった。。。

NSC

私が24歳のとき(たぶん2007年)の情報ですが、東京校で入学者約750名でした(東京13期生)。
集団面接を一度だけ実施、入学金は40万円で1年間で卒業します(2007年時点で750×40=3億!!すごい〜)。
面接で落ちることはほぼなく(面接官に失礼すぎたり、会話通じないを除く)、ほぼ合格しているはずです。

変なやつばっかりです。本当に変で素敵なやつばっかりでした。
腐葉土ずっと担いでなで肩なってたり、会話がほぼ通じなかったり、人前NGだったり、元ジュノンボーイだったり、東大卒だったり、オンバト出演いたり、ボケ続けないと呼吸止まるくらい喋ったり、至って真面目にしてるのにバイト5日でクビになったり、年齢は高卒から60歳くらいまでいたり、そういう人たちがたくさんいました。
入学時点で同期で、全員タメ口同じ目線なので、いい意味で価値観全部崩れました。そしてほとんどの生徒が、絶対に売れる、成功すると思って入ってきます。

今も仕事でいろんな方とご縁いただきますが、あまり動揺しないのは、この時のおかげです。

そんな750名が、1001クラスくらいにわけられ、漫才、集団コント、表現、ダンス等の授業が毎日行われます。やることはダンス等の授業を除き、ほぼネタ見せ。
授業前に外に並び扉が開き次第、優先順にネタ見せ希望用紙に名前を書いていきます。授業一コマの時間が許す限り生徒全員と講師の前でネタを披露し、ダメ出しを受けます。

講師は放送作家さんや、元芸人さん、俳優さん等です。事務方側はだいたいが派遣や契約社員さん。授業の講師以外のスタッフさんは、一期上のNSC卒業生です(私のときはジャンポケ齋藤さんや太田さん等がいらっしゃいました)。

ここからは多分に感覚で、750名のうち3分の14分の1くらいが途中で辞めていきます。
理由は色々ありますが、基本的にイメージする学校のように教えてくれることはなく、自分から前に出ていくことをしなければ行く意味が見いだせないからです。集団になじまない人や、そういうのめんどくさい人は離脱しがちです(部活とかでもありますね)。

あと、業界のルールというか、業界マナーをとても体育会系よろしくに指導されるからもあると思います。
(神保町駅降りた時点で先輩や業界っぽい人いれば挨拶しにいく(間違えてても恥かくだけだからオケ!)、遅刻3回したら即退学(坊主にして一ヶ月非常階段掃除したら復学という謎ルール)、鉄拳制裁OK(当時)、授業中に講師から「お前らはゆとりで失敗作の世代でクズ」からスタート等)。

加えて、授業でのダメ出しを直せば面白くなるというものでもない、というのも理由です。面白さは人それぞれなので、正解がない。
コーチングというのはその人にあったやり方が重要なのはご承知の通りですが、生徒の人数多すぎるので、講師の価値観とやり方に一任されます。

というわけであくまで私がいたころであることと、個人的感覚が大半ですが、体育会系よろしくがなじまない人にはちょっとしんどい時が多いです(私はぬるま湯っ子なのできつかった)。
圧倒的に空気読まずに自分を保てる胆力を持っているか(動的にも静的にも)、体育会系得意っすチョリッス、の方は向いていると思います。

なお余談ですが、各授業で講師が認めた生徒は、選抜クラスに入れます。私もいくつか入っていました。13期に関しては選抜クラスに入っていた同期の多くがすでに芸人以外の職業についています。
同期で皆様ご存知な芸人は、ピスタチオや相席スタートです。彼らは選抜クラスではなかったはずです。

ということからも、養成所で受ける授業の重要性というのは非常に答えを出しにくいところがあります。

吉本の芸人として生きていく

1年間の養成所通いも後半になると卒業公演出演権をかけたふるい落としが発生します。この卒業公演に出演した芸人のみが、吉本所属になれるのです。
条件は選抜クラスに入っているか(選抜クラスは卒業公演出演確定)、ネタ見せで卒業公演出演OKを講師からもらえるか、だっと思います(後者の記憶あいまい)。

13期では約100組(コンビやピン他)が卒業公演出演しました。つまり卒業時点で約200名が晴れて吉本預かりです。
残りの卒業生はどうなるかと言うと、「1年間おつかれさまでした~~。」、以上です。芸人したかったらフリーでどうぞ~ですね。ただ、そうなった芸人さんが本当にフリーになったかは知る由もないです。

吉本所属?

ここから闇営業につながる一つ目のポイントが出てきます。

吉本所属って何でしょうか。所属芸人とは何でしょうか。

答えは、「あなたは吉本芸人です」「私は吉本を通して芸人として生きていきます」を口約束で交わしている状態です。そう、吉本と芸人の間に契約書の締結は発生しないです。

今日からあなたは吉本の芸人ですよ、ギャラ条件はこうですよ、こういうところ気をつけてね、秘密保持してね等を書面で交わすことは一切ありません。所属となる同期全員が集まった場所で「今日からあなた達は吉本預かりです。以上!」です。もちろん仕事でのギャラ配分も一切わかりません。

それなのに、なぜかコンプライアンス研修は受けます。暴力団だめよ、薬とか喧嘩だめよ、悪いことしちゃだめよ、というコンプライアンス研修を。私達芸人側はそこに疑問があるかと言うと、特にありませんでした。

そんな契約書とか細かいことしたかったら、そもそも芸人の世界に足踏み込まへんし(売れなかったやつが言っています)!
そんな堅苦しい真面目な世界なんて興味ないし(売れなかったやつが通ります)!!
そんなんなくてもすぐ売れるし!!(売れなかったやつが通ります)!!!

全員個人事業主

この契約書が存在しない状態というのは、つまりは吉本芸人ひとりひとりが個人事業主と同義です。個人採算性です。
ですので舞台500円のギャラ振り込まれるときも、源泉徴収税額引かれます。450円弱です。社会保険とか厚生年金とかありません。

吉本預かりになった1年目は、事務所マネージャーから振ってもらえるオーディションへの参加や、若手のお笑いライブ出演をしていきます。もちろんオーディションは受からなければギャラなし(現場までの交通費や待ち時間は当然ある)、ライブはチケットノルマ制でノルマ以上売ってもバックなしです。

マネージャーは、卒業した200組に1人のマネージャーさん(当時は契約社員))がつくので、めっちゃ雑。というかマネージャーさんのこと考えると地獄。。
アルバイトはほぼ全員していますが、オーディションが前日に連絡来るとかは当たり前なので、バイトはなかなか柔軟性高いとこだけしか出来ません。

契約書の有無

吉本所属となった時点で契約書はあったほうがいいかと言うと、今となっては個人的には簡易でもあったほうがいいと思います。

あると問題が起きない、ではなく、問題が起きたときに互いに記録として残した書面があって、それに沿って互いに決着まで進行できるからです。

でも、そもそも契約書や請求書等がなければお金のやり取りをしてはいけない、なんていう法律はありません。なくても商取引を行うことはいいのです。

これらの書面を作る意味は、互いの権利や義務を明らかにし、互いに記録として残しておくためのものです。この観点で言うと、吉本所属の芸人とは本当に簡易のものでも契約書を交わしたほうがわかりやすくなると思います。

ただ、上記にある通り契約書を作ることは権利であって義務ではないので、判断は会社側に委ねられます。交わすことのメリットもあれば、デメリットも考えられます。何千組もいる芸人を契約書締結して管理すると考えると気が遠くなります。芸人という世界の歴史やカオスさを見ても契約書を作ってきていないことに一定の理解は出来ると思います。

芸人という生き物

芸人になる!!と思う人のうちほとんどは、自分が売れる一発成功したいと思って芸人になります。

価値観や考え方も独自の目線があり、
養成所で教わることはお笑いや表現についてのことだけで、
座学や倫理は学ばず、
生徒も1年目芸人もお金なく、
アルバイトをする時間もなかなかなく、
事務所と契約書をかわしません。

今回の闇営業騒動、安易だという言葉や、浅はかというような言葉もあります。結果だけ見ればもちろんそうですが、そこに至る背景を少し見えたのではないでしょうか。

次回でこのテーマ最後になりますが、NSCを卒業した芸人がどのような活動を日々行っているのか、マネージャーはどのように今回のことを考えているか、を聞いたので書いていきます。出番が増えているときが最も忙しくお金もなく、誘われる仕事を選ぶ難しさや葛藤を書いていきます。

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